ニッケイ・ドメスティック

金融危機ではじまり金融危機で終わりそうな1年だが、とりあえずこれで1年半を超したので、だんだんに次はどうやって儲けていくのかとかいう話がそろそろ聞こえてきてもいいんだろうなとは思うものの、とりあえず選挙で忙しいアメリカさんと、それに振り回されるその他世界みたいな感じになるんだろうか、あと2週間ぐらい。


社説1 異常な株安・円高に迅速果敢な対応を(10/28)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20081027AS1K2700427102008.html


いきなりすごい円高になったなぁとは、しかし私はあまり思わなかった。
3月はすごいと思ったけど、今回は、その基調は一緒だったが、単純にドルの必要性と、ドル資産の本国戻しによって、妙なドル高時代が対円にも及んでいたために多少戻っていた、ぐらいに思っていたから、結局この半年、だいたい同じ水準だとか言ってみてもいいんじゃまいか?なんて思ってみたりする。


だから、対策が遅いっていうのなら今回が遅いんじゃなくて、もっと前から考えないと、とか一応机上ではそういいたくはなるものの、実際、この社説でも指摘している通り、状態がいいのが日本しかない状態では、何やっても無駄って感じじゃないですかね、今のところ。

バリュエーションで買ってない、売ってない、ってみんなが叫んでいる中では、嵐が少し止むまで待つしかないのでは? つい2週間ぐらい前はそれどころか、イールドなんか問題じゃないんです、資産保全ですで米国債に資金を突っ込むような事態だったんだし。

 市場安定化策の骨子には空売り規制の強化、金融機能強化法に基づく公的資金の注入枠の拡大などを盛り込んだ。銀行が保有株を投げ売りしないよう、02年に設立した銀行等保有株式取得機構が一時的に株を買い取る仕組みも復活させる方針だ。これ以外の政策も含め、市場の混乱阻止のために十分な手段を尽くしてほしい。予算措置や法改正が必要な項目もある。迅速に実現させるのが与野党共通の責務だ。

いずれにしても、どれも特効薬じゃないし、嵐のスケールからすれば、屋根にトタンぐらい打っておいてもよかったよなぁという感じじゃなかろうか。
銀行等保有株式取得機構は、役に立ちそう?つか、もっと早く? 個々の銀行によるんだろうけど、ちょっと全体株価が下がったら金融機関の資産も劣化する、という考えを強くサポートしていなかったような気はする・・・。


でもって、変な言い方だけど、円高だから輸出企業の業績悪化から株安になる、という流れなわけだけど、円の価値が上がったんだから、その株の量が減っても良くないか?なんて思ってみたりもする。
そう思うのは多分私が、私のお金とはすなわち円だ、死ぬまでそうだ、とは思うものの現在外貨暮らしで、その上その外貨というのが、あんまり強い(安定という意味で)通貨ではないので、結果において、米ドル基準で、両脇に円とカナダドルを配するという構成で日々を暮らしているために、円が高くなるとはすなわち円資産が上がることだから、円資産の量は若干減らしてもいいんじゃないか、みたいに、思考実験的にそんなことを言い出したくなるんだろうなとか思う。

対して、もし1つの通貨だけで暮らしていたら、円高も円安も直接的な影響は見えないから(どこかに出かけるとか何か外貨建てで買うとかしない限り)、株安というのがとても目立つんだろうと思う。


現在の世界で、シングルカレンシーでどっぷり生きている人たちといえばまずアメリカ人には違いないけど、日本人もそれに続くものがあると思う。ユーロの人は円の人よりも、ポンド、ドルを意識するし、カナダドルの人は、ほとんど常に両方のドルをとっかえひっかえ使うことに抵抗がなく、どこでどうやって買ったら得か(つまり、国境を越えて買出しに行く)を真剣に考えるのかが日常にビルトインされてる人が一杯いる。

つい春先まで、カナダドルが米ドルよりも高いという30年ぶりの異常事態が約半年続いていたけど、この度「正位置」に戻ったかのように、0.8ぐらいになって、先週末からはついに0.77近辺になってきた。

ま、いずれまた資源の目が来るんじゃないのか(来ない方が世界経済的にはより恐ろしい見通しではないのか?)などとも思えるし、経済全体を考えるとこれぐらいか、もう少し高いぐらいの0.9前後でいいんじゃないのか、でもってそれは無理でもないのではないのか、とか私は思ってみたりもするのだが、なにせ、つい10年ちょっと前にカナダドルが安すぎて通貨介入を行った経験があるくらいなので、人によってはカナダドルに対して相当悲観的見通しの人もいる。

で、そうであればこそ、あれだけカナダドルが強そうに見えたこの半年でも、米ドル預金を崩さない人もいたわけだ。ま、ヘッジとして金を買ってる人とかいそうな風土もあるけど。


そんなこんなを考えると円というのはかなりのところ基軸的なところもあるよなとか思う。大昔と違って、いや、昔からの為替の差損に懲りて、できる限り円建て取引でっていう戦略を取ってる企業も多いし、マーケットとしての良さのためだろうが、日本で商売をする際には円建てでやろうとする外資系企業もなくはないと思うし。


ま、なんにしても、円の国に生まれた人って幸せだよなぁとしみじみ思うっすよ。
だって、とりあえず仕事さえあれば、そこで真面目に暮らせば多分つましくちゃんと暮らせるもんな、って思えるし、そうなる確率はそうならない確率よりも遥かに大きいと思うもの。

世の中には自分が相応の努力をしたところで、その、まぁいいか的安定が得られない国やら地域やらがある。でもって、そういう時代というのもある。

 ニッケイ・ドメスティック


上の社説を読みながら思ったのだが、で、確かに、

 円高は日本からの輸出を不利にする。企業の業績悪化懸念が台頭し、日本株が下げ止まらない。先週末には円相場が半日余りの間に14円もの幅で円高・ユーロ安に振れた。日経平均は27日まで4営業日で2140円も下げ、2003年4月のバブル後最安値を割り込んだ。

円高→株安という流れは顕著に存在するのだが、でもそれって、全部じゃないだろうし、さらに、インデックス、すなわち日経平均の組み方にもよるんじゃないの?

円高になるとおいしい、輸入が基本の内需が基本の企業を多く取り込んだインデックスを作ったら、円高でも、今よりは影響がないのでは?
でもって、インデックスの下落が鈍いなら、投売りの発生確率も下がるんでしょ?


でも、まぁ、世界市場連動型のインデックスもあっていいだろうから、そこにはいわゆる世界を代表する日本銘柄、つまり、日本から見た時の輸出銘柄を盛り込んで、それを
ニッケイ・インターナショナル、とか言って、

もう一つ、なんせ1億人以上の良好な市場を持った国なんだから、そこにフォーカスをおいた、いわゆるディフェンシブ銘柄を多く盛り込んだ、
ニッケイ・ドメスティックとかいうのを作ったらどうだろう。

で、自分がどっちに投資するかはその人、その機関次第でいいわけだし。


日本が自分でイニシアティブを取って、国内市場を活性化しつつ守るためには、外人主導型を排除するんじゃなくて、共存できるようにしていったらいいんじゃまいかなど思った。今回だって、確実に円高で潤うセクターはあるんだし。

 心情的にニュートラルな日本


与謝野経財相「日銀利下げなら国際協調の証しに」
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20081028AT3S2800H28102008.html

 与謝野馨経済財政担当相は28日の閣議後の記者会見で、日銀の金融政策について「0.5%の政策金利を0.25%に下げても経済に対する効果は全くない」と述べ景気の下支え効果は限られるとの見方を示した。


私もそう思っているわけだが、それはそれとして、


新興国
ユーロ、
コモンウェルス(ポンド、カナダ、AZ,NZ)
が値を下げて、
みんなドルが欲しくて、ドルが高い。実効のドルはもうすっかり高くなって、全然ドル安じゃない。
その中で円だけが高い。


この状況で、円独歩高をなんとかしたい。
とは具体的にどういう状況を想定しているんだろう?
ドル円だけ、1=100ぐらいになるといいな、みたいな?


でも、円売りドル買い介入をするということは、誰かがドルを売るから売買成立するんだから、その分どこかでドルが足らない、ドル買い発生で、結果、日本以外のどこかでドルが高くなる=どこかの通貨が安くなる、多分それは新興国、みたいなことにならないのか?

いや、みんなのために日本は引けとかいうのじゃなくて、実際に、ちょっと協調介入とかできそうになくないの、これ?とか思う。


むしろ、円売りユーロ買いとかして、ユーロの価値を支えてあげる→その他通貨は大なり小なりユーロ連動なので、その他通貨はドルを買いやすくなる、みたいなのはどうでしょう? そんなのあり? 


安定を目標にするならありそうだけど、アメがイヤって言うか。なんで助けるんだよ、潰そうとしてんのに、みたいな(笑)。


[追記]


おお。ひょうたんから駒か。

今、極東さんを読んだら、

フィナンシャルタイムズ曰く、かくなる上はリフレしろ、日本
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2008/10/post-c8db.html


だそうだった。
で、finalventさんのまとめは、

ということはですね、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダの六人衆が雁首揃えて、うりゃ日銀、札刷ってドル買えや、ってことですな。あー、ユーロ買え?

とおっしゃる。
でもって、原文中の、主張の強いセンテンスでは、
Japan could print yen and use them to buy foreign currencies, putting a floor under the yen and preventing deflation.

とありますから、foreign currenciesと複数。別にドル買え、じゃないかもしれないですよね。でもユーロとドルっつのもへんな気もするけど、ま、なんせ、がんがって円売れ、な、と言われている私らニッポン。ほんとにそんなこと言われるのかぁ、と少しびっくり。



あと、余計なことですが、

While this would slow a correction of global imbalances, highly disruptive jumps in currencies due to speculative flows are the greater of two evils.
(それによってグローバル経済の不均衡是正が減速するとしても、騰貴による急激な円通貨高騰は、前出の二つの悪事よりはひどいのだ。)


これは、グローバル経済の不均衡是正は減速するかもしんないけど、それと、投機による急激な円高とどっちが悪いかっていえば後者の方が悪いの、だから前者は気にすんな、ってことじゃないですかね。

 円本位で見た世界


これ面白い。


円本位で見た世界
カオス理論が物語る新興国市場のリスク
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/132?page=1


2008年10月25/26日付 英フィナンシャル・タイムズの記事の日本語訳だそうです。

 しかし、世界が円本位であることに気づいてみると、歴史は全く違って見えてくる。円建てに換算すると、FTSE100種総合株価指数は13年ぶりの安値、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)500株価指数は12年ぶりの安値にある。


 円建てで見ると、FTSE100は最高値から57%下落、S&P500に至っては実に3分の1に落ち込んだ計算だ。


 円建てで世界を見ていれば、株式市場が持続不能なバブルだったことが明白に分かったはずだ。