カナダの卵

卵の話。チャイナのフレッシュ情報でおなじみの福島香織さんのところで読ませていただいた古い卵のお話。


たまには、軽いエントリー?卵の話
http://fukushimak.iza.ne.jp/blog/entry/629714/#cmt

■私「どうして、中国の卵って何ヶ月ももつんですか?日本の卵は賞味期限がせいぜい1カ月くらいでしょう?」
卵屋さん「卵、本当は半年くらい平気で持つんですよ。持たないのは日本の卵くらいです」
私「ええ??日本の卵は腐りやすい?」
卵屋さん「日本の卵は、洗浄してから市場に出すことが定められているんです。でも中国や欧州は、鶏のおしりからでてきたそのままの卵を市場にだします。卵の表面は実は薄い膜でおおわれていて、洗浄しないと、その膜はついたまま。ですから中に空気も雑菌もはいりません。冷蔵庫にいれておくと、一年くらいはもつでしょう」


保たないのは洗うからというのは聞いたことがあったが、そんなに保つ・・・いや、保つというのは腐敗していないとか、原型をとどめているという意味なのか、それとも食べてもいいという意味なのかはちょっと、どうなんでしょう?


で、この卵屋さん、保たないのは日本の卵ぐらい、その理由として洗浄するからとおっしゃる。へぇそうなの、と思いたいところだが、ふと、カナダの卵も洗っているように思うのだが・・・。

Canadian Egg Marketing Agencyという、卵を食べましょう推進協会みたいな団体さんの記事によれば、


卵は計量してサイズ別に等級がついて出荷されていて、そのランク(A)の卵の賞味期限(best before date)は、卵のカートンにスタンプが押されて出荷されてから通常35日。

また、卵は普通生まれて4〜7日以内に小売店に出回っているとあるから、最長42日の寿命と考えているようだ。

洗浄については、等級選別場で、卵を高速洗浄機でやさしく洗って(しかしscrubだから相応に)、殺菌するとあるので、やっぱり洗っていると思うし、キャンドリングまたはスキャニングという方法で検査する、と。キャンドリングとかって透かして中身を検査する方法ではないかと思う。
http://www.eggs.ca/eggfacts/egggrading.asp


そういうわけで、「持たないのは日本の卵くらいです」というのは、中国と日本だけを見たらそれはそうだが、そうでない国もあるかもよ、など思う。


いや、福島さんに苦情を言いたいわけじゃなくて、なんというか、せっかく衛生的に仕組みができていて、それで問題がないのに、わざわざサルモネラ菌の恐怖に近づくような方に、それでもいいのかな、なんてもっていかれるのは嫌だ、という卵ファンからの嘆きです。


尚、トロントで見る卵が全部洗ってあるわけではなくて、多分、個人商店とかで、かな〜り特定のお客さんを対象にしているお店などでは、洗っていない卵が売られている。これはこうしたお店が悪いという意味では全然なくて、特定のというのも怪しいということじゃない。単純に、ここは、民族コミュニティごとにかなり購買層が固まっている店があって、そこの品物等はその他スタンダード(つまりカナダの国家的スタンダードだが)と必ず合致しているかどうかは怪しい場合もあるのではないのか、と思えるという状況。で、それで大丈夫なのは、要するに売る人、買う人の間で、これはこう食うもの、これで正しい、みたいな暗黙の了解がちゃんとあるからなのだろうと思う。

しかし、そのコミュニケーション外の人は別のお作法でやってしまう場合もあり、その場合には食中毒等のリスクが高まる、したがって、ナショナルなルールは厳しく、徹底するべく広報活動が求められ、次第になんでも厳しくなる、みたいな構図がカナダにあるかなとも思う。


現実的には、夏になるとサルモネラ菌による食中毒とか発生するから気を使っているのだろうと思う。そして、気を使いたくなるのもわかるし、もっと厳しくしないと駄目なんじゃないの、と思うこともままある。例えば非常に乾燥したところとか、非常に寒いところから来た人とかは腐敗、細菌に対してゲロゲロに防備がない。が、トロントは夏は暑いので、その人たちの理解では危険なので、駄目だよそんなの、と細菌に敏感な私などが言っても、大丈夫、俺たちはこうやって食うと言ってしまうみたいなシーンがままある。さらに、ちょっと具合が悪くなるのをなんとも思わない人と、そういうのは嫌だと考える人の差異もわりと大きい。公衆衛生からすればやっぱり後者を選択するしかない。こういうコントロールは形成されるまでが本当に難しい。


というわけで、私は卵はbest before date 35日を採用する。
というか、もっと早く食べてしまうし、白身が緩んでたら使わない場合もある程、古い卵に対して嫌悪感がある、私。


したがって、これは軽い話ではなくて、色の安全とルール設定とその執行という深刻な話と私は認識しちゃう。北京には、もっと別の卵屋さんを送ってほしい。

 卵の補足


カナダ食品監視局のお達し]も、卵は洗ってあって殻の割れてないものを買え、冷蔵してあるものを買い物の最後に買って、帰ったらすぐ冷蔵しろ、等々うるさい。
http://www.inspection.gc.ca/english/fssa/concen/specif/eggtipse.shtml
基本線は、私が東京で見たことのある卵の安全となんちゃらという文書と同様に見える。

しかし、そう書き、かつ、賞味期限が書いていない場合(3〜4週間以内に食べろ)という項目があるところを見ると、卵という卵を同じプロセスでハンドリングするという規制はないということなのだろう。

実際問題、有名なメノナイトの方たちの卵を買う、というケースもあるわけだし、契約農家からということもあるだろうわけで、それは無理、こういう場合は、常識でやれよ、なのだが特定の常識内にいない人たちの移入があるからまた大変、と。

メノナイトの卵はわざわざ何十キロも車を出しても買いに行く人がいる。実際、おいしかった。


生食については、やめろとは書いてないが、老人、子供、妊婦等に食べさせるのはやめろ、とある。カナダの卵でサルモネラ菌が検出されることは稀だという文言とあわせて考えるに、ひょっとして上記プロセスに問題のない卵で、鮮度にも問題がない場合(自分で割ってみて確かめる)、生食OKなのではなかろうか・・・。

いや、これはいけると思った場合には既に何度か(も?)、生で食べてるんですが、いつも多少はびくついていたけど、そうでもなかったかも。


ちなみに、日本人以外の人がみんながみんな、絶対生の卵を食べないというわけじゃないです。タルタルステーキに生卵を入れて食べている人を知っている。ドイツ系、ポーランド系のおさーんが、肉、卵ともに彼らが非常に重要視しているお店から買ってきて、秘密の集会みたいにマジになって食べていた。怖かったw。

 日本で食べてるカナダの卵


寝る前に、やっぱり気になったので検索。卵、卵といえばカナダからは加工卵を日本に輸出していると貿易統計か何かで見て、ほぉと思った覚えがあったが手元にそんなものはない。

で、ネットで発見。鶏卵新聞さん。そんな新聞があるんですねと感動。

 凍結卵黄はアメリカ、ブラジル、カナダの3か国で97.9%、全卵粉はアメリカ、インド、カナダ、中国の4か国で93.3%、卵黄粉はアメリカ、インド、中国、カナダの4か国で96.6%、卵白粉はオランダ、イタリア、インド、ドイツの4か国で68.1%を占めた。
 殻付卵はアメリカが51.2%、ブラジルが47.7%を占めた。

http://www.keimei.ne.jp/article/20080215n3.html


リキッドの卵黄なんでしょうね、これは。このデータは直近ですが何年か前でも確かこんな位置だったような気がします。多分、マニトバか?(完全に不確か)
その他の粉ものでは、そうかカナダと中国はライバルなんですね。


1年ものの卵よりも、食の安全を気遣うカナダの卵をどうぞよろしく!
(福島さん、ごめんなさい。このエントリーこんなことになるつもりじゃなかったです。)