金と政変と国破れて山河あり

なんだろう、あの金貨のコマーシャルとおととい書いたけど、今日もまたそのCMを見てしまったので、そうだ、と思ってインターネットで検索してみた。でも、該当の業者は私には探せず、代わりに、やっぱり疑問に思っている人たちを発見。

そのサイトによれば、よーく聞いてみそ、CMのおっさんは1オンス金貨を売ってるとは言ってないだろう、多分1/10オンスの金貨なんだろう、ただ画像で大きいのか小さいのかわからいから、まぁそのそう思う人はいるかもなてな解釈をしていた。

私もその線は考えていたので、やっぱそういうことかなと思った。
実際問題、1オンスが950ドルになった、1000ドルになった、800ドル台まで下がった云々と日々伝えられている中、114ドルのコインがその1オンスのわけはないと誰でも気づくから、まぁいいか、詐欺ではないというCMなんだろう。

しかし、でも、1/10オンスとも言ってないし、それって実際問題流通性のあるコインなんだろうか?? なんか、とっても、限りなく詐欺的というか、わけのわからない大衆を釣り込む気満々のCMと言っていいだろうと思う。ま、流通性があるのならそれでもいいのか・・・。多分。
いや、その前に、今このドル値がふらふらな時に、金へゴーと、CNBCというマーケット専門番組の合間合間で絶賛CM中ってのが、なんつーか、強い国だ。


そんなことを言っていたら、知り合いの人が、やっぱり金かしらねえと半分冗談??でも、そんなことを言っていた。
でも、へんなところで買ったら偽物とかありそうだし、つかまされてもわからないよね、うまくできていたら。
だったらやっぱりカナダミントで買うのが一番かしらね、などとなった。

カナダミントというのは、Royal Canadian Mint、つまりカナダ造幣局のこと。
ここは、元々商売が上手いというか、やる気満々というか、全国津々浦々にある郵便局とタイアップをしておりまして、そこに毎月、コレクションのアイテムがきれいに書かれたパンフレットが置いてある。コレクションアイテムは、切手とコイン。郵便局通しか通信販売で買えるようになっている。


http://www.mint.ca/store/template/home.jsp


見てこの、めちゃめちゃやる気のあるサイト。
最近は、バンクーバーオリンピックに合わせて、記念コイン発売に余念がない。
でもって、さすがに1オンスの本物コイン、資産コインだと手が出ない人が多すぎることを知っているからなのか、Gold Coinという、90%以上、99%もの、みたいなコインだけでなく、金50%シルバー50%みたいなのを、Gold Coloured 金色のコインとして販売している様子。

そもそも、カナダは、というよりイギリスは、あるいはその影響によってコモンウェルス一円は、金とか銀とかが好きなだけでなく、金貨だの切手、絵画、宝石、アンティーク家具等々コレクションしてそれを資産とする、という考えが普通に手堅い。この人たち、植民地はともかく本体は革命をしていない国なのに、なんでこんなに持ち運びできる資産に熱心なんだろうかとは私の長年の疑問でさえある。やっぱり植民地の動乱とかヨーロッパの政変とかが染み込んでいるんだろうか?


政変と言えば、そういえば、そうそう、カナダのリベラル(自由党)の現在の暫定党首でもあり、著作者としても有名なマイケル・イグナティエフは、ロシアの伯爵の孫。つまり、ロマノフ時代の、ニコライ2世の教育相だかをやっていた非常に有名な一族、というのかお金持ちつーのか、の伯爵がおじいさんで、おじいさんは革命の時殆ど当然に処刑リストに上っていたのだが、カナダに逃げたらしい。いわゆる白系ロシア人ってやつでしょうか。

お父さんは生まれたのはロシアだが、教育はすべてカナダに移ってからという年齢だったのでカナダ人といえばカナダ人で後に外交官となる。まさしく動乱の時代を生きてきた一族らしいんだけど、それと同時に、どう考えても、いわゆるハイ・ソサエティのインターナショナルな人々というやつだろうと思う。

詳細はこのへん。
http://en.wikipedia.org/wiki/Michael_Ignatieff

イグナティエフが現在のカナダにおいて非常に重んじられている反面、どうやっても国民的人気みたいなのが出てこないのはやっぱりこのへんに原因があるのかなぁ・・・。わからんけど。
カナダって、そりゃハイ・ソサエティの出身者も含まれているけど、一般にイギリス、アイルランドスコットランドで非常に困窮して移ってきた人とかが大量にいるわけで、その人たちの反イギリス、反植民地主義みたいなのがかなりのところ頑強に国のトーンを作ってるというのもある(あるいは、そのトーンを壊さないようにしながら支配者層がうまく統治しているという言い方も妥当なような気もするけど)。で、そこでツァー時代の伯爵の孫とか言われてもなぁだし、イグナティエフ自身も、いわゆるいいとこの息子たちが通う学校に行っていて、それからトロント大学、オックスフォード、ハーバードで、人生の半分以上をカナダ以外で過ごしている。官僚、政治家、ビッグビジネスの昔っからのオーナーみたいな人々がある種特別な学校に通っていてみんな同級生みたいなのは、まぁどこでもあることだろうが、ここでもそうらしくはある。


で、しばしば、彼はカナダを知らない、という評が出てくるのだが、私は最初これを文字通りに学校時代から学者時代と国外で過ごした時代が長いからと取っていたし、実際どこまでいってもそういう意味です、かもしれない。でも、来歴を考えるとそれだけではないのかもしれないとも思ってみたりもする。あまりにも、コスモポリタン、それもハイソな、だから。どう考えても、一族の親族とか知り合いとか、普通の人が知らない世界を知ってる人だろうし、普通の人が知らない歴史的秘密とかへのアクセスも普通の人との比較で容易だろうなぁとかいろいろ妄想してしまう。


さらに、庶民的な、お下品な、あるいはミーハーな興味として、一族に伝わる財宝とかあるの?とか聞いてみたい。やっぱり手軽に持ち出せた金貨、宝石とか持ってきたんですか、それどうしたんですか、とか、債券類は当然ちゃらだったんですよね、とか。あはは。


ついでに見てみた日本の造幣局が・・・・。

http://www.mint.go.jp/index.html

あ、あまりにも、子どもじみている。笑えないぐらいに・・・。
これってやっぱり、ドラスチックな政変へのおびえがない→金貨類への本質的拘りがない国民の造幣局っていうことなんじゃないかと思ってみたりもする。逃げることを想定していない国だという意味でもあるだろうし・・・。そう考えれば悪いことではない、いや良いか悪いかじゃなくてそういう人々が多いまま現在に至るということなんだろうなとも思う。何があってもまた春は来る。この自然がある限り私たちは私たちだ、みたいな。

実際問題、1千年この方、国内の騒乱、浮き沈み、革命的変化は幾多もあったわけで、その結果としてのその覚悟であれば別にお馬鹿な結果としてそうなっているわけではないとも言えるでしょう。私にしたって、政変への覚悟とか言われても、金を買うというより、地面という地面に種をまいて、芋とかかぼちゃを確保しようとかいう発想が先に立つ・・・。私は実のところ芋もカボチャも好きではなくて、子どもの頃祖母に、お前は戦争になったら生きてはいけない、どうしたものかと始終怒られていたのを思い出す。おばーさん、ごめんなさい。でも今は食べられます。


島(島々だが)でよかったよなぁ、ほんと。


[補足]
とはいえ、日本じゃ金を買う状況にはなさそうだ。だって金上昇=円上昇なので相殺されてしまって金価格が円建てで動かないようだもの。金と同じほどに強い円になってる。異論はあるだろうがマーケット的にはそう考えるしかないんだろうなぁと思う。


http://www.mmc.co.jp/gold/market/g_data/2009.html

赤線が円建て金価格。