表と裏とカフカスとメソポタミア

とても面白かった。
米露会談の意味について、NHKの解説を含めてfinalventさんがまとめてくださったエントリー。

米露外相会談なのだが大手紙社説のポイントはちょっと違うかなのメモ
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2009/03/post-e5a2.html


日本の大手社説が1975年に生きているので、もうそれはいいとして、おお、そんな解説をしてくれる人がいるのかぁとウキウキした。日本っていいわ。石川委員、ポッドキャストしてほしいわ。


イランの核問題について、ロシアを協力のテーブルにつかせて、あるいはついていただいて、イランの核を制御するという方向でいくのがオバマ政権の方針だろうというfinalventさんのまとめも理解できる。そして、それが結局イスラエルの「暴走」つか既定反応つか、ニージャック反応つかを止めることになるだろうというFTのレポートも理解可能。
とりあえず、トルコに持ちかけないことにはいずれにしても何も動かないとは思うけど。


で、しかし、私が思ったのは、何このきれいなピクチャーは、ってことかなぁ、と。
何が取引材料になるんざましょ、ってことか。ロシアに関しては核廃棄物とか原油とかなんとか、いろいろ別方向での取引材料には事欠かないでしょうが・・・。


もたもた言っているけど、なんか、こう、思うに、ロシア、トルコ、イランの間がギクシャクせず、むしろ仲が良いってな状況にあっては、FTが心配するような、

ウラン濃縮プロセスが来年である2010年まで続けば、ナタンズにあるイランの該当施設をイスラエル空爆するだろうし、その事態に至れば世界中の災厄となる。

finalventさんの日本語をお借りしました)


ってな事態って起こらない、できないと思うの。いや、やるならやれるだろうけど、でもやったらそれこそイスラエルの負けって気もするの。
イランを攻撃した場合、アゼルバイジャンが騒ぎ出し、シーアじゃないけどイスラムつながりのトルコが黙っていられるわけもなく、そこら中の国民、市民、テロリストこぞって大騒ぎになるだろう。ロシアは、イスラムの盟主じゃないけど、アゼルバイジャンが騒ぎ出したらイスラム系住民の中に取り残されてるアルメニアの保護をしないとなんないし、自国内、影響範囲内にもイスラムいっぱいだから軍事オプション当然用意ありで臨むだろうけど、対ムスリムなんてな無謀じゃなくてひたすら押さえとバランス取りになるでしょう。

ナゴルノ・カラバフの時の状況を思い出す。そう、カフカスは、メソポタミア方面よりももっと軍事オプションに躊躇がなく、かつ、誤解を恐れずにいえば住民こぞって準備OKみたいなところがある。混乱のたびに独立問題がついてまわるから、従って住民にとってそれはすなわち我が事になるからだと思う。


そこでイランに攻撃をしかけた場合、トルコとイスラエルの国交が台無しになって、するとイスラエルは自ら窮地じゃないんだろうか・・・。

グルジアウクライナのラインって対露というよりイスラエル有事対策なのかなと思ってみたりもする。つまり、ここだけなら弱すぎてロシアが域内の混乱収集のために全精力傾けますとかなったら無効化されてしまうが、NATOのプレゼンスになれば話は別。というより、アメリカが正面から、俺も関係者として参入できる。
西欧がぐずぐずになりながらも乗ってことないのは、混ざりたくないからなのかなと想像してみる。)


そんなことを考えてくると、アメリカがわざわざロシアに迫っているかのような、ある種みっともないことをしながらも見せてくれたこの絵、この動きというのは、イスラエルに考え直せ、詰んでるぞ、周囲との妥当な協調路線しかもうないからね、というのをわからせるための、アメリカからイスラエルへの働きかけなんじゃなかろうかなど私は想像する。
イスラエル新政権の出方の規制という感じ。


ま、アングロ^・アメリカン二重帝国としては、本当はイランをコントロールしたいけど現状難しいので、ロシアを通してコントロールしたいという意図というのもあるだろうけど、そんな都合のいい話があるのか?という気がしてしまう。


それよりも、ロシア、トルコ、イランが、あるいは、ツァーリロシア、オットマンペルシャが、やっぱり俺らってほら、共同の利益あるよねとか言って、ユーロアジア共同防衛構想を宣言します、なんてことがあったらおもしろいだろうなぁとか思う。
ロシアからイランへのS-300のっていうのは、こういう下地の一つの具現化として読んでみてもいいように思う。


3月にオバマ氏がトルコに行って、4月にはNATOの総会があってというあたりで今後の路線が見えてくるんでしょうが、いずれにしても、非常に多くの問題にイスラエルがひっかかっているのに、それを見なかったことにして話を一般化していくこれまでの米英主導のスタイルが限界に来ているのは、かつてないほどそうだと思う。


メソポタミアあたりからサウジ方面を見ながら、つまりいわゆる中東方面でイスラエルを見れば、エジプト、サウジを抑えればOKだっただろうし、その意味でイラクまではやりやすかっただろう。でもイランは基本的にはそっちじゃなくてカフカス方面の関係者であり、かつ、そっち方面における米の力関係は、ロシアがいる限り限定的であり、そのロシアだってここら住民の頑固さに振り回されている。イランを叩くってそう簡単ではないと思うの。地理には勝てないと再度思う。