Niall Ferguson

好きかどうか、意見に賛同するかどうかは関係なく、ここ数ヶ月のアメリカのメディアで非常に当番回数の多かった人なので、この人、ナイアル・ファーガソン氏は抑えておくべき人じゃまいかとか思うんだけど、日本語で見るものの中に全然出てこないのでちょっとメモがてら整理してみる。


現在売れている、ってか、過去3ヶ月メディア総動員型で出しまくった感のある本が、

The Ascent of Money: A Financial History of the World

The Ascent of Money: A Financial History of the World


この本を元に作成されたテレビ番組も同名で、1月にPBSで放送された。DVDも売ってる。
http://www.pbs.org/wnet/ascentofmoney/


Youtubeにもいっぱい落ちてる。フィルムとしてかなり良くできてると思った。楽しいし、きれいなフィルム。


本とビデオを見た私としては、これはつまりフィルム作成と同時進行でかかれた本だったんだと思う。本の口調が妙に簡単で、妙にわかりやすかったのはそういうことだったのかと後で思った次第。

直訳すれば、マネーの上昇、世界の金融史、ってなことだろうが、要するにマネーの使用量が拡大し、その過程で私たちの生活というのものも変化していったわけですという流れの説明。戦費調達のために債券を発行し出し逆にはそのために戦争を始めてみたり、ミシシッピバブルの様子とか、現在起こっているバブルを驚いているみなさん、私らこんなことしてきてますねん、というのを説き起こしているとも言えるかな。


金融史というより社会学的に興味深いのは、アメリカ(あるいはアングロ・アメリカン)のデモクラシーを、みんなに住宅を取得させて、それで人々をこの社会のステークホルダーにしてきて、もって革命的な動きを防いできたデモクラシーだ(home-owning democracyとか言っている)という指摘か。

1945年以前、世界中のどこでも、特に欧州にあって、大多数の人は自分の住宅なんてありませんでした。大部分の人は借家していたわけです。住宅所有者はお父さんから息子に、政治的特権等の各種特権とともに土地や家屋を譲り渡す、それが普通でした。それが、大恐慌におけるそれらお金持ち階級の没落と共に、低利で長期間のローンを組ませることで、庶民に住宅を取得させるようにしていったわけです。それと同時に、彼らはこの社会のステークホルダーになるわけです。

(欧州でのやり方はアメリカとは違って、国家が住宅を供給するような方法が目立ったが、後になってそれをやめた、と彼は捉えている様子だった。サッチャーアメリカのやり方を取り込んで、イギリス人に住宅取得を推奨したのだ、と言っていた。)

しかし、そこで抜けていた人たちがいます。それが黒人です。居住区のこちら側の白人地域ならローンは可能、こちらは駄目という具合にしてこの流れから黒人は占め出せれていたわけです・・・といった感じ。


で、それが後のサブプライムに繋がっている、とはっきりは言ってなかったと思うけど、そうなんだなぁ・・・と思いなすよう出来てた。


つか、彼に言われなくてもそう語っていた人は多いと思うが、このようなメジャーなお説の流布は初めてであったかと思うし、バークレーかどこかでの公開レクチャーで、この指摘を興味深いですねぇ、とモデレーターが語っていたことが、私には、そっちの方が興味深かった。


で、12月から1月にかけて、ブルームバーグ他、あっちでもこっちでもこの人のインタビューがあったし、大学とかで開かれる公開トークみたいなのも勢力的にやっていた。イギリス人だが(スコットランド人だが)、そもそもハーバードの教授なのでアメリカで活躍するのは不思議ではないんだが。カナダでも、CBC(BBCのカナダ版)でも、The Agenda(議論専門番組?)でも、ビジネス系チャンネルでも出ていた。偶然、見てたんだが、また出た、みたいなもう食傷気味になるほどだった。


何が起こっているのかを北米人に理解させるためのプロジェクト、みたいな感じなのかもしれない。


下のブルームバーグトークがまとまっていたかと思う。40分ぐらい。アメリカ(だけではないが)のある種のトーク番組って時間も長いし、きちんと聞くこと聞くしいいよなぁとかいつも思う。日本だと、こういう放映枠はどこになるの? ケーブルの中にあるのだろうか。よくわからない。

Night Talk: An Interview With Niall Ferguson
http://www.youtube.com/watch?v=HiF1YMpTewE