ロシア再び:第3部「苦闘から○○○へ」

いろんなことがあった1年だったなぁと改めて思う。原油150ドルから30ドル台に落ちましたというのがこの1年の異常さを物語っていると思う。ということは2年ぐらい前からこの夏までがラウンド1で、そこから潮目が変わってラウンド2に移ったとか考えてもいいのかも。


で、そのラウンド1で、存在自体がバブっていた感のあるウクライナが恒例のガス危機および通貨危機である由。あまりにもわかりきった話が本当になっているだけ、という感じすね、これは。


ロシアがまたウクライナ向けガス供給停止を警告
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/081219/erp0812190915002-n1.htm

ロシア、ガス供給停止を警告 対ウクライナ
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20081219AT2M1804F18122008.html


FTとか、冷静なことを書いていて、ちょっとウクライナがかわいそうになるぐらいかも。
ロシアがまたぞろエネルギーを使って脅しをかけてる、と、それはそうだ、なんてふてーやつなんだ、そう、まったくその通り、が、


That said, Ukraine could do much more to stabilise its end of the business. Instead of constantly casting itself as a victim of Russian bullying, it should bolster its bargaining position.


そうは言ってもね、ウクライナもこの件をしっかり安定させるためにもっともっといろいろできたからね。いつもいつもロシアにいじめられてる犠牲者なんですよーとかばっかり言ってないで、そんなことするかわりに高く売りつけられる自分の価値を強化するようにすればよかったじゃないのよ。

Gas war flares up
http://www.ft.com/cms/s/0/2dbf82e0-cca4-11dd-acbd-000077b07658.html?nclick_check=1


だそうだ。もう、もはやこれ以外に言うことないでしょう。


しかしそうは言っても、ウクライナの普通の人々の生活は大変そうだなぁとは思うし、そこは気の毒に思う。でもって、その気の毒な状況を利用しているのは、ロシアというより国内の政治家たちなわけだが、そこを飛ばして、ね、ロシアは悪いでしょ、と一方が言い、他方が、ロシアから離れるとことうなるんだ、わかったな、など言う、と。


両方とも間違ってる、と気が付いてもっと現実的な政治家を自分たちが育てられるようになるまで、ここに安定がくることはないと思う。きつい言い方だが。


若干気の毒に思うのは、西側世界のメディア量が圧倒的な世の中では、特に英語圏のメディアが、ロシア悪しと書くと、ウクライナの人々の中である種の期待が持ち上がってしまうという状況があからさますぎたことか。つまり、ロシアが悪いと書かれると、脳内変換で自分たちはきっと守ってもらえるみたいに思うらしい、ってな点。

ロシアが悪いと書くのは、実際問題西側の戦略的に当然なんだと思わないとだわ、など思う。だって、そもそもその地域、黒海カスピ海から中東方面にかけて、実際問題依然としてビッグ・プレーヤーなのはロシアなんだもの。


で、ここが問題だと思うんだけど、もしロシアの存在感が無視できるほどに小さいなのなら、逆にいえば、米+EU(含む英)が完全に強いのなら、ロシアを叩く必要はない。

今年の夏以降顕著に、しかし多分去年あたりから本当に、そうなっていった傾向というのは、むしろ、米+EU(含む英)にとってのこの地域における一時的な退潮が明らかになったからと読むべきなのではないのかしらね。


もしそうなら、それは米は米で、EUはEUでそれぞれ独自の問題はあるが、それと同時に、トルコをつかんでおけなかったというのも大きいんだろうなぁ。いまさらだが。去年あたり、米がトルコに最終的に私たちから離れていってねといっているとしか思えないようなことをした(アルメニア問題)ことが懐かしく思い出される。あれって何だったんだろう。まったく、だ。


といっても別にロシアの将来がブライトだとか言ってるわけでは全然ないし、金融危機はしんどそうだよなぁとか思うし、ま、原油価格も噂の20ドル台までいくんだろうが、これが1年ぐらい続けば深刻なことになるだろう。ただ、ガスという年金みたいなものが細くとも確実にあるしなぁ、やっぱり侮れない。


で、そう考えて来て、この夏からずーっと何か気がかりだったことの一つに自分なりの説明を付けてみたい気がしている。


というのは、夏にグルジアで問題が起きた時に、プーチンが、サーカシビリが単独でそんなことを決断できるわけないですね、で、そこでマケインなわけですよ、とか言っていた。対露強硬派で売ってるマケイン陣営が自分に有利にするためにこの戦争を起こした可能性がなくはないでしょとばかりの、かなりひやっとすることを言っていた。

一方マケインはマケインで、プーチンの目にKGBの文字を見たとか、G8からはずせとか悪態をついてきた。


で、これを素で見れば、両者は敵対しているとなるのだが、状況から見て思うのは、マケインというプロの政治家というかプロの愛国者としては、一時的に米のプレゼンスが当該地域で不安定になる可能性があり得る(イラク撤退時とか)、という冷静な判断のもとに、そこでロシアのフリーハンドを許すわけにはいかない、だから、今からずっとロシアのイメージだろうが、欠点だろうがなんでもかんでも突っ込んで、とにかく、自軍のダメージをコントロールするしかない、という決意があったのじゃなかろうか。


いや、そうですよ、とかは絶対言わないでしょうし自分の言動が行き過ぎているとか、馬鹿に見えるとか叩かれても気にしないでしょうしブレはないでしょう。プロだから。


で、プーチンがマケインが臭いと言ったのは、マケインの言動の意味がわかるからこそじゃなかったのかな、など思う。あんたの危惧はわかってるぜ、じーさん、でも俺らも本気なので利用させてもらうぜ、みたいな。


なんでそんなことを疑問に思っているかといえば、あの時点で、グルジア問題からマケイン支持が持続的に上昇する可能性というのがもっともらしすぎると思ったので、プーチンの言動が少し無駄か、あるいはちょっとお馬鹿に思えて気になっていたし、他方、マケインはマケインで、自軍の失態(なんだよそのサーカシビリって)を反省することもなく、徹底的にロシアだけを悪いというのはまぁ普通に無理があってこっちもアホに見えたから。

正直、なんてアホなじいさんなの、と私は明確に、こんな人だったのぉ、みそこなったわぁ、みたいなことを2週間ぐらい思っていたが、その後、そんな馬鹿な、とか思って、何か納得できずにいたので年末に向けて考えなおしてみたわけ。