地理には勝てないと思うわけだが

EU、グルジア問題で緊急首脳会議開催へ
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080825AT2M2500V25082008.html


緊急というわりに、開催が9月1日というところが、独仏の現状なのでしょうかね。
どういう決定をしたもんか調整、調整、調べて、ちょっと、と。


実際問題ヨーロッパ地区は踏み絵を踏まされていると思う。
つまり、中期的にロシアを含めて、東方拡大する、マーケットを大きくするという以外に欧州地区の将来ってないでしょ? もちろん、独仏とか部分的にはオランダなんかの多国籍企業はどこに行ってもやっていけるだろうからその周辺の輸出ではOKだろうけど地域全体として考えたら、ドイツ、フランスがぽしゃったらどうするのよ、だと思う。そしてそのためにドイツはロシアを含めていきたかったが、駄目だしを食らっている。実際問題今年はじまった話ではないのだが。


で、冷静に考えてみればサルコジ氏は地中海クラブを提唱しているわけで、その意味ではその時点で東方拡大に黄色信号、いや、赤信号と読んだのでしょう。当時は、東方はドイツにもっていかれているので、南に転進しているフランスと書かれていたと記憶するけど。
(しかし、その一方でトルコを止めていたというある種の「功績」はあるわけで、その意味では迂回しつつも、米英のいわゆるポイントを支配していくいわゆるシーパワーに貢献してはいないと思う。)


だからこれはまたまた米英軍によるドイツいじめには違いないんでしょうかしら。ま、いろんな見方があって、ドイツがロシアとなんか手を組むからだと前から言っている人はいたけど、だけど、マーケット拡大を考えたら東か南しかないでしょ? で、南は現在はまだ資源の輸入先であって、輸出先としての市場を見込めるところまで行くには長いのでは? なんてことを思うと、近場のロシアは好都合だと考えるのが合理的だろうと私は思う。つか、もったいない。地理には勝てない。


が、しかし、そうはいっても強情なポーランドがある限り、ドイツとロシアは歩み寄れない。
多分それは、自ら好んで歩みよれないのではなく、ドイツ・ロシア連合軍こそ米英の悪夢だからなのかと、まぁアナクロのように聞こえるけど多分本当にそうなんだろうと思う。ここが共同しだしたら、そら強いっすよ。大西洋からカスピ海まで全部が妥協なく統合地域になる上に、資源と技術を持った共同体だもの。


そういうわけで、これは米英を振り切らない限り無理な相談だったということなんでしょう。
ではどうやって振り切るかで、きっかけとしてNATOがあったと思うんだけど、これをずっとだましだまし来てしまったことが敗因でしょうかね。

*NYTでトーマス・フリードマンがそのあたりのことに触れていた。
ロシアなしで解決できない問題はいっぱいあるんだし、仲良くね、の派もあったが、クリントン政権の外交関係者がそんなの駄目、ロシアのぎりぎりまでNATO拡大だと言ったんだ、と書いている。まぁいろいろだろうが。
http://www.nytimes.com/2008/08/20/opinion/20friedman.html


さらに、EUを作ったおかげで、関税等の貿易障壁を使ってポーランド他を攻められないというのも痛かったに違いない。でも、今後、ありとあらゆる合法的手段で徹底的にいじめてやると考えているドイツ人がいても私は不思議に思わない。


しかし、そうはいっても、結局は、この幻の大欧州失敗は、工業力全般で優位にあるドイツやらフランスにとって影響は小さく、結局は、域内で少しでも先進国になるまで頑張らないと、国としての国際競争力がない国々にとって大きな影響をもたらすのじゃないですかね。そうです、バルト三国、そしてポーランドも。


そういうわけで、先週のThe Ecoomist。

東欧経済について。パーティーはほぼ終了、だそうです。URLをクリックすれば一目でわかる。

それで一体、残りのEUに何をしてもらいたいの?というしかない程の急降下で経済が減速している。しかもみんな規模は小さい。

The party is nearly over
Aug 14th 2008

http://www.economist.com/world/europe/displaystory.cfm?story_id=11921270



さらに、このあたりのエネルギーのロシア依存率。

Energy security in Europe
Dependent territory
Aug 21st 2008

http://www.economist.com/world/europe/displaystory.cfm?story_id=11986026

これも一目瞭然。ラトビアのガスのロシアへの依存率ほぼ100%。



このへんの国は、第二次世界大戦前にも、反露のあまりナチに傾斜して最終的にロシア(ソ連だが)に完全敵認定されていると思うわけで(概算で言って、いつもロシアに脅されているというのは否定できないにせよ)、ちょっとなぁ、生き延びるためには、遠くの援軍を希望するよりも自分が持つ地理的条件をしっかり認識するというのがやっぱり大事なのではないだろうか。

逆手にとって、むしろ自分より大きな市場であるロシアへの入り口になります、という態度で欧州向けに(逆方向ももちろん)商売に励むみたいな発想の方が経済的に潤うチャンスは大きいのではあるまいか。


が、そういう判断ができないからこそ、戦略的ポイントにされる、と。
心から、教育は大事だと思う今日この頃。このあたりの様子の過去10年間の観察では、朝鮮半島にまそっくりなのがしみじみ怖い。気持ち悪い。気が揉める。あああ。



でので、しかしながら、ふと思うに、このへんの地域に深く関わりすぎた場合、アメリカは、この大陸(ユーラシア)に対して完全なフォーリン、外来者であるためにまったく自らは傷まないという優位性を失ってしまう可能性も出てきてしまうのではなかろうか。基本的に「マスター」を求める国をこれだけかき集めてどうしますか、あなた、みたいな。軍事だけならともかく。

ポイントは、西欧州という自立しているグループが、親ロでも親英米でもないみたいな、得意の会議作戦で絶対立たないと心に誓った場合ではなかろうか。アフガンはまさしくそれだと思う。



逆にプーチン的には、極東と南をきっちり締めて、反乱とか革命とか(笑)起こされないようにして、味方しろとはいわん、それぞれの立場は理解する、でもこれとこれとこれだけはしてくれるな交渉で、総じて、見とけ、状態にして、本腰入れてウクライナをもめさせるのが吉か。来年大統領選挙だそうだから、どうしたって揉めるわけだけど。でも、状況によってはバルト3国真ん中あたりというのもありなのではなかろうか。

なんにしても、来年までの見所の1つには、この地域の経済も含まれると思う(そんなの知ったことか、と外来者は考えたとしても)。メジャーニュースは西欧しか拾わないから注意してみておかないとだわ。

いや、極東にはもう1つネタがある、なんてこともあるのか。いや、まぁ妄想だけど。