買えないiPhone

池田先生がNY Timesの記事を紹介されているのを見て、そう、ここ(北米)の通信費は石油の上昇分よりも深刻に高いと思う。しかも、なんか、ものすごく不透明だと思う。お得な感じがどこにもないのが北米携帯事情ではなかろうか、など思ってみたりもする・・・。

ガソリンの値上がりが問題になっているが、なぜ通信費の高さはだれも追及しないのだろうか。平均的な家庭では、固定・携帯電話やケーブルTVを含めた通信費は数百ドルで、ガソリン代とほぼ同じなのに。しかも通信の帯域には、石油のような稀少性はない。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/e477bdaaac635d5b841eeed76d8e34e1


通信費の絶対値としての高さというのも問題だと思うけど、私が常に疑問に思っているのは、通信費の不透明な商慣行。


今回のiPhoneは多分、格好の例になっていたと思う。
つまり、アップルは199米ドルで本体を売る、と言った。

しかしながら、実際には通信費がかかる。
これもまぁそれはそうか、と思う。


しかし、なぜそこに「ロックイン」と呼ばれる契約期間がなければならないの?はかなり疑問。

Canadian iPhone buyers face long lock-ins
http://www.cbc.ca/technology/story/2008/06/23/tech-iphone.html


カナダのNHKたるCBCの記事なのだが、この出だしに、iPhoneの日本での販売はフトバンクという会社がキャリアとなって、ソフトバンクは2年間のコントラクトをつけて販売するようだ。カナダ人はこれに、なんであんなにトレンディな携帯機器がるのにそんな長いコントラクトを付ける人がいるのよと不思議がる、ってなことを言っている。


実際、それでも流行りモノが欲しいから買う人はいる、ってのもまぁそれとして、問題はこのコントラクト。このコントラクトに苦しんでいる人々にすれば、そうでなく立派な携帯を買って使える世界に住んでる日本でなんでこんなの買うのよ、ってな感じに見えるだろう。私もすんごくそう思う。


携帯機器が高いのはわかるとしよう。だからそれはそれで本体として売って毎月の通信費をキャリアは稼ぐ、と。
昔はしばしばその本体が0円で、つまりキャリアが自腹を切ってでも、通信費を稼いだわけですね。


北米の携帯デバイスの売り方も基本発想はそれで、本体だけ買って、通信サービスを任意に受けるプランと、本体を安価にして、その代わりにロックインといって2年、3年の契約を結ばせるプランが並存してきた。

例えば、最初に払うお金が、本体買い切りだったら5万円、2年契約なら2万円、3年契約なら1万円、みたいな感じ。
で、契約期間満了前に解約すると月々何十ドルか分x残りの月数の違約金を支払う必要がある。


しかし、こういう売り方だと、機器本体が安価にとか、値引きされているとかになりにくいという構造もある。だから、別のところで携帯だけ買ってきたりする人もいるし、それはできるらしい(でも、自分のところで売った携帯しかキャリアはサポートしないから自分で各種設定をしないと使えないので、一般的な手法でない)。


また、3年間使いたくない人は途中で変えたいんだが、これができない場合もあるわけで、そうすると違約金が発生するんだが、この額は本体価格の残金ではない。3年契約で4万円を限度に発生する、とか言う場合、使わない通信費の分まで払っている可能性はあると思う。


そもそも、この違約金って何なんでしょう?
日本のドコモでも、途中解約すると違約金としていくらいくら払え、という契約があるけど、金額のマックスがこっちから見ると、まだなんか、単なるペナルティーに見えてしまう。(正確な対比ではない。)


と、iPhoneはこの不透明な「ロックイン」問題をずっとクローズアップしていて、前の時にもすでにロックインがおかしいだろうという話はあった。そもそもアップルが本体価格を提示しているから、余計に、ではその通信費と違う費用ってどういうものなのか教えろという要求があるが、各キャリアはそれに答えていない、っていう事情もあるかと思う。


とりあえず、iPhoneアメリカのAT&Tでは2年間のロックイン、ソフトバンクもそう。
イギリスは18ヶ月。
オーストラリアはロックインしないプランも作って販売(当然高額)、
そして、カナダのロックイン期間は3年間。供給2社ともこれだけ。


こうなってくると、このロックイン期間というのがどういう名目なのかがよくわからなくなる。
これに対して、上の記事がロジャーズというカナダの2つあるうちの1つのiPhone供給キャリアに聞いたところ、キャリアによってそれぞれ事情が違うから、という、なんつーか答えになってない答えを得た模様。


モデルにして考えてみるに、本体2万円に、毎月最低6500円ぐらいを3年間払うのがプランとする。(*1)
そこで、中途で解約した場合、違約金として月々2000円づつ、最大で4万円発生する。1年後だったら、24000円、1.5年後だと36000円。


ということは、最初っから
20000+24000円=44000円で2年、
20000+36000円=56000円で1年、

というプランがあってもいいわけだ。この金額で買う気になる人がいるかどうかは別として、実際支払いを要求しているのはこれだ。
しかし、じゃあアップルの言う199ドルって何、だし、月々最低でも6500円かかる通信プランっていうのは何なの? 結局、何にそんなに違約金を払う必要があるのだろう? わかりません。

(*1)月々6500円と書いたけど、65カナダドルを単純に100円としてしまったため6500円と書いた。しかし今日あたりは1カナダドル=106円だそうで、これだと6890円。
消費税13%込みで、7786円


そもそも、上にも書いたけど、以前から、どこかから機器だけ買ってきて通信サービスだけ受ける、ってのが可能らしい(私がやったことがないので曖昧に可能とか言っているが、みんな断言して、できる、と言う)。だったらロックインの違約金とは、独占サービスに対する違約金というだけの意味なのか? 
(そうだ、とここの人々は言うのだが・・・・)


そういえば、前のiPhoneの時、ドイツで、コントラクトなしで売るべきだという判決が出たというのを読んだ。どこだったか・・・。後で探してみよう。


で、それらこれらをつらつら思うに、このロックイン慣行、すなわち、3年契約とかで携帯を買わせる(そして本体だけを支払って次に移る、ってのが不透明な中にしか存在しない)、という現状が、新しい携帯機器への移行を阻害してきたんじゃないのかななど思ってみたりもする。違約金がばかげてるから待ってしまうのは当然だと思うもの。

従って、北米の通信費は高いというだけでなく(大したことのできない携帯なのに、も置いておいて)、何に払っているのか不透明で、そのくせ強く拘束されているということが普通に不愉快だ、というのもあるように思う。どうやったら楽しく使えるか、よりも、どうやったら安くできるかを考えたくなる気持ちもわかる。


そう、ドコモとかは、新機種への乗り換えが可能でしょ? でも、こっちのプランは、今回のiPhoneがまさにそうだけど、乗り換えたい時に乗り換えられない、または、障害が大きすぎる。

さらに、何年使うと割引になりますよ、とか、ポイントたまりますよ、なんてサービスもない。何か、こう、ぶっきらぼうにお金を取られるのが携帯電話というものだわと改めて思う。


これって、なんか奴隷制度または人身売買契約を想起させるとも思う。
最初は、お得ですよといって安価で長期契約を結ばせるが、本体とランニングコストが分かれていないから、どの部分が借金なのかさっぱりわからない。で、最後まで行って、ああようやく奴隷身分が終わったと思った時にもまた、5万円とかいう金額を一気には払えなくて長期プランになる・・・以下続く。って感じ。
iPhoneの場合は、お金がないわけでなくても無理やり足抜け防止にひっかかる。どんなお宿なの?)


見て!このドコモの分割払い。
http://www.nttdocomo.co.jp/support/procedure/value/installment/index.html


本体に対するお金、というのがはっきりしていて安心感がある。この部分に関しては残金払えば終わりだ、って言えるんでしょ?もう借金はない、足抜けできますね、って言えるんでしょ?