油が高いの次は何か

洞爺湖のサミットの様子をテレビで見た。霧がすごかったようで、それにひっかけて見通し悪し、みたいな入りで紹介していた。霧かぁとちょっと驚いた。いい景色を見られるとなんとなく期待していたからの落差かもしれないが。


さてさてガソリン、さてさて原油
そのうち原油価格は落ち着くだろうという予想というか感触がつい2ヶ月ぐらい前までは優勢だったような気がするのだが、ここに来て、多少の上下があっても原油はずっと高いままだという説がなんとなく優勢に見えてきた今日この頃。

とはいえこれはカナダで顕著なのかもしれない。

特に、この間書いたCIBCという銀行の投資部門(だと思う)CIBCワールドのチーフエコノミスト、ジェフ・ルービン氏が原油高止まり説の急先鋒か。
彼によれば、2009年150ドル、2010年200ドル予想だそうだ。


さらに、今日は、世界的に株式市場ががたついている中、局外中立的に2008年でも20%のばしているというトロント証券所の指数(TSX)の先行き見通しを下げたというのが話題になっている。

ルービンがそう言ってる、というのがそれだけでインパクトになってるってのがこの人の最近の「大きさ」を示してるんじゃないかと思う。あれか、武者さんがこう言ってるみたいな話・・・う〜ん、もっと怖い。あいかわらず顔も怖い(私はとても好きだが)。
CIBC bullish no more, Rubin cuts TSX target to 14,300


ジェフによれば、経済の原則、原油価格高騰につられるインフレ、それに対応するために必要とされるであろう利率の上昇が合わされって、カナダの2009年の状況は悪化する、で、特に航空機、車関連に打撃が大きいだろうということだそうだ。


で、カナダに限らず、北米という視点に立った彼のモデルの基本は、原油高騰は続くが前提なので、これがこければすべての予想も外れる、って感じじゃまいかと素人ながらに思う。で、去年から原油は上がる、高止まりを言っていて実際当ててきているためにこの人に以前よりもフォーカスがあたっているという感じかしらと思う(ぽっと出とかじゃないですよ)。

で、そのためなのか、1ヶ月ぶりでテレビで見たジェフの顔が、がくっとふけて見えた。中年後半の男の顔にたるみが見え、油が抜けてる。やっぱりこれって疲れ、緊張感による疲労なのかしらと、経済読みの話とは全く関係のないところにひたすら気が向く私。心配だわ。(単なる飲みすぎかもしれないわけだが。)


しかし、緊張するのも無理はないわけで、2010年200米ドル説は現在の製油所環境から考えればそれは、ガソリン価格で1ガロン7ドルだ、と、現在の4ドルでもびっくらこいているアメリカ人としては聞きたくないような話をだみ声でがんがん飛ばしているから、これがこけたら俺の人生終わり、みたいなところもあるのでは? (そんなこと心配してどうする、なのだがw)


今月のCIBCの戦略レポートは、この説を敷衍して、今後は2012年までに1000万台もの車がアメリカの道路からなくなる時代だと言っている。少なくとも2台持っていた人は1台手放し、1台持ってて低収入の人は車を維持できなくなる、と。

[補足:米の雑誌ビジネスウィークで紹介された模様。
Analyst sees 10 million fewer cars by 2012
http://www.businessweek.com/ap/financialnews/D91HV6BO1.htm


説から考えるとまぁ確かにそうなのだが、いきなりそう来られると、ひぇ〜としか思えない話を展開しているジェフ。レポート内では、ヨーロッパ諸国や日本の公共交通機関へのアクセス可能な率とアメリカのそれを出して、いかにアメリカ人たちが車に依存して暮らしているかが描かれていた。これだけでも、アメリカ人が読んだ場合、気分悪いんだろうなぁとは思う(ただの想像だが)。どうせいというんだ、みたいな。

だからこそ、アメリカのビジネスチャンネル等だと、掘れ、もっと掘れ、自前の油があるんだ、という話に行くんだろうと思う。
どっちに行くかわからんけど。


と、ジェフが言っているモデルがアクセプトされると、多分、ここで示唆されるのは環境税なのかなと思ってみたりする。そういえば、油は購入でも税、燃やしても税という時代だと氏は前に指摘している。
ただしこれは、排出規制スタンダードが下のままの途上国からの輸入に炭素タリフ(関税)をかけるようになる、という話で、国内の環境税の話ではない。でも、アイデアは同じといえば同じだ。


で、国内の方の環境税の使い道はいろいろあるだろうが、交通機関等の整備をする、もあるよね、きっと。


ということは、今後に予想される経済の柱は、もしかしたら、大インフラ再構築か? いやこれは私が今思いついただけ。でも、燃料の種類が変わっていくのなら、インフラも変わっていくしかないんだから、追々そうなるよね。


そんな中、カナダのブリティッシュ・コロンビア州では、今月から炭素税が導入された。

ブリティッシュ・コロンビア州が炭素税を導入、便乗値上げも
http://jp.reuters.com/article/jpEnvtNews/idJPJAPAN-32566720080703


それなりに戦略的に面白そうじゃないのか、など私は思ってみたりもする。
そして、便乗値上げはともかく、この税の導入にあわせて所得税低減、低所得者への新たな控除とかいう策を取ったという話なので、あわせ技ではそんなにびっくりするような「酷い」話ではないのでないか、と報道を見る限り思えるわけだが、カナダの連邦レベル(国家レベル)では、これら炭素税を含めたグリーン政策を進めるリベラルと、概ね反対にまわっているコンサーバティブ(保守党)が、今、なんか半分低レベルな言い争いも含めて、激しく対立している模様。


この成り行きも含めて、なんか本当に大変な時代になってきたよなぁとか思う。
なによりも、もしジェフが言うようなことになったら、アメリカ国内の社会問題として非常に深刻なのじゃまいか・・・。住宅が買えないの次は、車も乗れない、だ。


ある意味日本と西部欧州ってこのへんは結構先取り(*)しているので、アメリカほど騒ぐ必要がなくて、よかった、ではあるね。

*先取りというか、逆で、19世紀の鉄道ブームの時点で既に国内という領域が確定していて、そもそも道路というのも古代以来ずっと通ってる道とかあったりする場合もあるわけで、そこらへんの蓄積の上に社会があるところか、すべて更地みたいな地域が膨大にあって開発してからの歴史が尋常でなく浅いかという違いがまず第一ですね。(カナダなんて国土全域に交通網をもたらすとか考えてないと思う。広すぎ、人いなさすぎ。)