EU大統合推進チームが三振した件について

アイルランド国民投票、EU新条約を否決 欧州統合にブレーキ

最終集計結果によると、反対票は53%で、賛成票47%を上回った。

http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080614AT2M1303R13062008.html



いやいやいや面白くなってきました。
どうなるでしょうね、EU大統合推進チーム対地場リーグ寄せ集めチーム。


そもそも地場リーグのフランスとオランダが憲法でノーを言った時点で2ストライク、ノーボールと追い込まれていた。それもうるさい技巧派が投げてる。

試合は0−0で向かえた9回表、
これはちょっと厳しいですね、ここで打たなければ勝ちはないですからね、だった。


そこでファールを飛ばしながらも2−3まで粘ってフルカウントにした。
相手ピッチャーは癖球の速球派に代わっている。

サンシーン!


これで試合終了か、なわけだけど、今現在は、これをストライクに取るなんて、そんな馬鹿なとEU推進チームがベンチ前に集結して審判に食ってかかろうかというところ、みたいな感じか。


そもそもアイルランドなんてそんな貧弱なチームのピッチャーじゃないか、EUなくして何ができる、そのためにEU各国(のうちのお金持ち国家群)は補助金出してたんだぜ、との野次も飛び交う。
野次はいけませんね、野次は、関根さん、これは仕組みの問題ですから関係ないですよね、なのだが、言いたくなる観客を黙らせる法はない。


さてしかし、判定は判定です、だが、今のは、ボールインプレーじゃなかったのじゃないのか、だから今のはナシにしてもう一回投げさせるのがいいんじゃないのかとの声もある。そもそも試合を直接やるのは馬鹿げているのではないのか、勝敗はフロント対応で決するべきじゃないのか、との声まで出る始末。さすが、またの名を官僚チームのEU推進チームかとの声もある。


ふざけている場合じゃなくて、この先どんな試合展開があるんだろうか・・・。
フランスはそもそも自分たちがきっかけになっているんだから強いことは言えないだろうし(それでも言うのがフランス式だろうが)、イギリスは半腰以下、ここはドイツが切れる、というパターンもありではなかろうか?


実際にはドイツ企業は好調だったし、世が世なら叩かれたかもしれない新東方拡大政策から得たものもあったはずだから、悪いことばっかりではなかったとは思うものの、それでも、ヨーロッパで唯一強い通貨だった、あるいは主要な通貨であった(ごめんねポンド)強いマルクを捨てたこともあり、そうまでした自己犠牲が伝わらないことに対しての反発等が予測されるところではあるまいか。

で、もしそれが目立つようになると、そもそも、どうあっても、自分でどれだけアイデンティティがと言を強めに強めて水増し請求なんのそのであったとしても、本質的に、ディールして生き残る世界の住民たる、イタリア、その背後としてのバルカン系が揺れるかもしれない。
(イタリアとルーマニアが今現在険悪なので、このへんも火薬が飛んでるくさい)


で、それが呼び水となって、なぜだかドイツ人が自分で引き受けて暴発する、するとフランスが直情的になんか言っちゃう、みたいな・・・。

こっちのきっかけはなんだろう、ユーロか。



いや、あんまり揉めないでね、とばっちり食らうのヤだから、とは思うものの、水面下の個々人の感情は、今後、穏やか、スムースになっていく方には行かないのではないのか。域内対立から、腹いせというのか、憎悪標的ってのかのターゲットとしての日本叩きとかあったりして。これはアメリカではそなる可能性は大だなと思って覚悟してるけどヨーロッパもなんか怪しくなってきた。


冷静に考えれば理屈はないのだが、なぜこうなったのか、と後でじっくり考えるとよくわからないんだけど、走り出すと止まるまで走るのがヨーロッパ式、という傾向は史的に考えればありかもよ、なんてことも思う。


しかし、今、アメリカが、全体として若干引きこもりがちで、部分的になんかへんな動きを意気揚々とやってる(北朝鮮万歳みたいな)人たちがいるという、世界の大国つか、一極とは思えないプレゼンスになっている(そりゃ、あらゆる意味で突出はしているものの)ので、これと合わせてどういう絵図になるのかよくわからない。


いずれにしても、様々な局面で法制度とか合わせていったり、共通ルールを作るという試みをなしたEUは偉かったし(過去形かい。いや、これまで、という意味よ。)、これは真に先駆的なものとして受け止めていいと思うな。


単純に、何も根本から一元にしなくても、社会・経済的に達成できることはあるんだからそれでいいんじゃないの、という話になるといいな、と個人的にはそう思う。

こんなことも念頭に。
移民は双方向と想定するのが得策


で、EUをそれ以上に、憲法込みで統括したがる人々、つまりこの場合はEU官僚またはそれ臭い人たちに対する反感という問題は常に欧州全域にあると思うので、統一が過ぎるEUに対する反感がもたらす拒否決議、というのは実際いつでも可能な問題ではある。

確か、加盟各国内向けのアンケートでも、どの国でも、重要な条約についてはレファレンダムをすべきだと答えている人の数が多かったというのを前にどこかで見たことがあるが、この状態が既に、あまりにも統一されすぎたEUというのを拒否している姿勢だよな、とも解釈できると思う。自分の知らないところで作られた法律を飲まされるのなんてごめんだ、と。


その点から、今回の、アイルランドの反リスボン条約チームの、キャッチコピーは上手すぎる。

EU: It'll Cost You.


だったそうだ(ソース各種。例としてIndependent)。EU:あなたを犠牲にします、とか、あなたの犠牲の上に成り立ちます、でもいいし、でもコストという語を使っていることから、お前に金を払わせる、というニュアンスを嗅ぐ人もいるだろう。


しかし、そうするとだ、アイルランド補助金の話もあり、やっぱり、ふざけんな、金払ってんの、俺らだ、という先進西欧諸国組の反発を引き出す可能性はあるでしょう。凄い効き目のコピーだったとも言えんじゃまいか、これは。


だから、

トロントスターの見出し *1)、
Ireland puts European Union in chaos


アイルランが欧州連合をカオスに陥れた、ってのは全然大げさではないと思う。注目だわ。


*1) 記事自体は、The Economistのを使っているが、見出しだけ独自にしている。本家の方は、「The answer’s no」。こっちの方が強い気もするけど、これは、成り行きから言って、ヨーロッパ域内、なかんずくいくらかのイギリス人の視点、ノーだった!、みたいな感じがする。