EUの派遣労働者待遇改善問題


それはそれとして、舛添厚労相というフランス組がここで何かしたいと思ったとすれば、これも関係あるかも、など思ったりしたことが1つある。それはEU派遣労働者に対する待遇向上措置で各国合意したニュースがここ数日の間に出ていたこと。


で、それと軌道を合わせるように、2チャンネルでは次のようなマルチ書き込みが散見できた(下のまとまりを以下表1と呼ぶ)。


欧州 vs 日本
1)派遣労働者が受け取る賃金は必ず正規以上と法定 vs 正規の半分以下
2)派遣労働が2年超だと直接雇用義務 vs 期限撤廃して無期限派遣
3)派遣のピンハネ率は10%未満と法定 vs ピンハネ率は自由、平均40%以上
4)企業が支払う総額はガラス張り vs けっして派遣労働者に教えないブラックボックス
5)派遣労働者の巨大全国組合がある vs 何も無い
6)派遣労働は事業拡大時などにのみ使うと法定 vs 正社員をクビにしてどんどん派遣に置き換えてよい



これってどこの話なんだろう?と私としては結構疑問に思っていた。
2)はちょっとしってる。ただ、だから、2年になる前に雇用を切るってな文脈で。


で、1)は何?と思っていたところに、2チャンネルで次の書き込みを拾った。

派遣も正規と同待遇 EU閣僚理事会が合意
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-06-13/2008061301_03_0.html

【パリ=山田芳進】ルクセンブルクで行われていた欧州連合(EU)雇用社会問題相
理事会は十日、派遣労働者に正規労働者と同等の権利を認めることを盛り込んだ
派遣労働者指令案に合意しました。

合意された指令案は、派遣労働者が原則として契約開始の一日目から、賃金、休暇、出産休暇について、正規労働者と同一の待遇を受け、食堂、託児所、輸送サービスでも同一の利用権を持つことを規定しています。

 ただ例外として、各国の労使間の合意があれば、これらの権利の取得に必要な派遣労働者の雇用期間を個別に設定することができます。

日本での紹介元はアカハタだけだ、と2チャンネルでは言っていたが、それが本当かどうかは私にはわかりません。調べてないです。


で、この記事を頼りに英文検索したところ、確かに、ようやく加盟各国でこの合意ができました、ということらしい。6月9日。(ソース:例えばこれ


(ということは、表1の1)は今ようやく軌道に乗っただけでまだ法制化も何もされていないと思うんだが・・・。権利があるという確認の段階だ。論理的に考えて残るは欧米の米だが、米にそういう動きがあるとも聞きません。全く。)


ただ、反対していたのは主にイギリスらしいんだが、イギリス発のニュースによれば、イギリスの1300万人のagency workersは、雇用後12週間経過したら正社員と同待遇を得る権利を持つようになったとあるから、同一保障時期は1日目からというわけでもないのか、それとも各国ごとに猶予措置とかあるとか? (ソース:ガーディアン



実際問題、確かに12週間後=約4ヵ月後でも正社員と同待遇となるのはエージェンシー通しの労働者にとって朗報だろう。景気の悪い時にはワークシェアを考えたりもしてたし、景気が順調になったら労働者にも朗報をってことかと、それはそれでEUはいろいろ考えているんだなぁと素直に感心する。


ただ、ふと思うのは、これで同一労働同一賃金への道は開けたかもしれないが、これってでも、加盟各国ごとの賃金スケールの絶対値が大幅に違っている中での同一労働同一賃金なんだよね・・・


例えば、カナダ、アメリカ、メキシコがFTAの枠組み内で同種の合意に至った、とか言ったら(現実にはFTAはそんな枠組みじゃないが)、みんな喜んでくれるのか?とちょっと疑問に思った。


依然として企業および個人は、絶対値の高いところ、または低いところへの流動が確保されている、あるいは言い方を変えれば、その流動性にさらされていると言えるのではないのか。つまり、これは企業活動にとっての選択肢が減るわけではない、苦しさも半分、みたいなところがあるからできる部分もあるかな、と見える。


逆にいえば、流動性確保に関して問題の残る日本企業が二の足を踏むとしたら、それはそれなりに理由はあると言えるだろう。(だからこれでいい、と言い切っているわけではないが。)