健闘を祈る、USA


あと1週間でイースター。あと1週間で冬が終わる。終われ、終われ、終わってください、お願いします、神様ぁ。もう飽きました、冬。なのに今週はまだ2、3日雪がちらつくとか言っている。ああ。でも気温のレンジが0度近辺になったので確かにもう冬じゃない(トロント標準)。あと1歩。


さてしかし、何この長足ぶりは、なのはドル。ドル下落が止まらない。


円、95円台に上げ幅拡大
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080317AT3L1702U17032008.html


いや、日本を中心にするから円高、と書くならわしになっているけど、この局面は誤解なくドル安と書くべきでないのか、とか思ったり、しかしもうこの件で誤解している人もいないだろうからいいのかと思ったり。

先週末、こ、これはまずいのまま閉まったNYマーケット。アジアが開く前に、というか、多分アジアからヨーロッパに行ってNYが開く前にもはや泥沼になっていないようになんとかしたかったのかアメリカ、ではあったけど全く間に合ってなかったですね。

米公定歩合、0.25%緊急引き下げ

ますます、ドル安はアメリカにとっていいこともあるだろう、しかし破壊的に下がったらどうするんだ、という懸念が拡大。


しかし日本は先週の日経さんの社説が非常に良かったので、要するにもはや覚悟はできてました状態と見た。私は正直に、3ヶ月前までこんなになるとはまったく思っていなかった。馬鹿だったと思う。私が多分日本で一番最後の馬鹿かなと思っていたけど、先週もっといろんな人がいることを知ったので自虐的にならないでおこうと思う。あはは。


優れものだと思ったのは15日の社説。
社説1 基軸通貨ドルの不気味な揺らぎ(3/15)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080314AS1K1400114032008.html

 昨今のドル安の主な原因は、サブプライムローン問題に端を発した信用収縮と、それが引き起こす景気の悪化、米連邦準備理事会(FRB)による政策金利の大胆な引き下げと、それに伴う国際的資金のドル建て資産から外貨建て資産や商品への逃避などにある。

で、

1999年のユーロ発足当初、ユーロは低く評価されたが、今はドルに対し最低時に比べ7割程度も高い。一方で、ドルはほとんどの国の通貨に対し下がり、主要な通商相手国との貿易額を考慮したドルの名目実効レートは1973年を100として69と、過去最低の水準だ。これでは“ドル離れ”もうなずける。


この、ドル離れもうなづける、ってのが怖いわけですよね。
そして私見では、ここが少なからぬアメリカ人たちがまだ理解していないように見える点、と。


で、私が、こ、これって・・・と思ったのは同じ15日の、日本で信望を集めているらしい、あるいはなんかものすごく信者さんめいた人が多いよなぁとかしばしば思ってみているのであんまり引用しない方がいいのかもしれないけど、クルーグマン教授が、

Good news on the dollar
http://krugman.blogs.nytimes.com/2008/03/15/good-news-on-the-dollar/

But the US is an “open economy” ― we do a lot of trade with the rest of the world ― and there’s another important channel for monetary policy: low interest rates tend to cause a low dollar, which is good for net exports. In fact, the decline in the non-oil trade deficit is one of the few bright spots in the US economic picture.

ドル安にも良いことがあって、ドルが安くなると輸出にいいでしょ、など書いていることか。15日でまだそういうか、みたいな。

ま、それこそ氏の真骨頂ではないのかなど思うと何を今更など言ってみたい気もする。また、そういう事態をアメリカが狙ってやっているとまで言えるのかどうかは異論のあることだろうが、そういう動きが場合によって強化されることのあることは別に日本だけじゃなくて、カナダでもヨーロッパ圏でも知られているので、まぁその、これを今のフェーズで書くというのはアメリカ国内向けということなのなのだろうが(実際国内の新聞なわけだが)、何この今更感?はぬぐえない。


で、それだけでは留まらず、もちろん、ヨーロッパや日本といった他国はこのドルの下落にハッピーではないでしょ、でも我々の目的としてはいいんだよ、という一文を最後に書いてしまうあたり、何かこう、今更感だけでは済まないものを感じる今日この頃。妙な優越感みたいなものをナイーブな読者に与えて安心させてしまう点で、ある意味悪質ではないのかとさえ思った。ごめんなさい、ファンの人。


とりあえず、成功した作戦とは個別の成功した作戦である、とは思わない人なんだな、なんても思えるわけで、ちょっと危惧を感じた。



で、そんな外国人の話はよくて、とりあえず日経さんがこういう事態をしっかり見ているのは我が方にとってよかった。

と、そこで思い出した。この連載。


円・元・ドル・ユーロの同時代史
http://www.nikkeibp.co.jp/jp/report/senior/test04.shtml



この事態の観戦のためのネット上で読めるマストアイテムの1つかと思いましたです。

偉そうに書いているけど、私は基本経済音痴なので、2004年に連載されていた当時半端の半端の半端の半端ぐらいにしか読めませんでした(サブプライムモーゲージバッグの証券並みの掛け目か)。むしろ歴史の流れとしてだけ読んでいた。さりながらこのたび多少なりともお勉強して、夕べ思い出して検索して引っ張り出して読み返して、ああ、勉強って役に立つんだわ、じゃなくて、いやそれもあるけど、正しい連載じゃないかぁと感心した。でもおかげで目が痛い。


事態は2004年なので今日の事態とは若干異なっている部分もあるし、特にユーロの仕儀は結局その時点で希望されていたようにはいかなかった、またチャイナの動向も当時想像できた範囲よりも複雑といえば複雑かなとかとか私自身は考えているんですが、でも、それでも問題は著者の谷口智彦さんが提示されている枠組みの中にあるとの思いを強くしましたです。


そういうわけで、日本の守備隊はとりあえずいいとして、逆にふと思ったのは、アメリカってもしかしたら、日本を敵視しながら作ってしまった不用意な思い込みを土台に機能しない作戦にしがみつくの図、になっていったらどうしましょう、という点か。


例えば、イラクでの戦争の時に、日本の民主化の例という成功例があるじゃんかとか言って日本の人の顰蹙を買っていたけど、今回の経済問題にもそれ式の思い込みがあったりして?なんて思い出してきた。日本相手に勝ってきた歴史みたいなのが目を曇らせてるとか。いや、まさか。これはきっと私が音痴なので(歌は歌える方だが)、何ヶ月すぎたら私たったらまた物知らず、となることを祈る。



しかし、何か不穏だ。
いずれにしてもアメリカが転んで目先に良いことは無いので、健闘を祈る、USA、など言いたい。

日本は、下手に手を出しても仕方がない局面なんだから、窓口(責任者)だけ開けて、ちょっと恐々開店休業しちゃうのが一番いいのでは? どうせ下手に何か言ってもやっても効果はないだろうし、痛くない腹を探られ(オレたちの均衡点がとエコノミストいい、みたいな)るだけでは? 


民主党のへぼな対応とはこのような時を見越しての第二艦隊的な行動だったのだろうか。まさか。