防衛省を浮かさないために


これはこの事件の展開とは現時点では関係は無いけど、でもやっぱり気になるのは、なだしおの時にもそうだったが、そもそも、軍の船に特に警戒なく近づく日本の習慣ってのがなくはないようにも思う。もしそうなら、あまりいい習慣じゃないと思うんですけど・・・。基本的に、そこで不審認定されたら拘束とか、下手したら撃たれても文句は言えない船なわけで、さらに、その不審を故意に行う人がいた場合(小型船によるテロって珍しい話じゃないでしょ)、自分も危険な目にあうかも知れず、むしろ軍艦を見たら緊張しておけ、というのが普通の神経なのではないのか、など思う。

ブログをちらちらしてたら、東京湾付近は自衛隊の船が多くてさぁ、邪魔とさえ言い出しかねないことを書いてらっしゃる方がいて、まぁこういう意見も日本ならではの意見と言うべきなんだろうなぁとぼんやり眺めた。海で防衛するしかない国だからこそ船が多いのは当然ではないのか?


以前、ロシア人、ポーランド人で歴史好き(ということは普通インテリであれば軍の歴史もよく知ってると言っていいかと思う)、おまえら、何食ってたんだぁ〜、と言われたことがあった。つまり、日本の戦前までの軍艦の数量がとても多いと。ロシアだってバルト、黒海、極東にそれぞれに艦隊持ってたでしょ(それぞれが戦略的に統合されているとは言いがたいとしても)と私は言うわけだが、要するにここには、ロシアは大国だからいいけど、という当時の時代背景及び戦略的には無意味な思い込みがあるんだわなぁなど思った。で、それはそれでちゃかしあって、とりあえず、だって日本って列島の国だから、大陸に出て行くようなことさえなければ基本的には陸軍こそあんまり意味がないわけでしょ、と普通に語り、陸軍こそ華の国の人々としては、まぁそうだが・・・としかしなんかすっと落ちないみたいな反応が興味深かった。


いや、これは横道だが、とりあえず、極東地域における現在にとって日本の軍のプレゼンスは安定に寄与していると私は思うので、防衛省はもうちょっとしっかりしないとまずいっしょ、と思う。多分、バランスこそ最良なんだと思うんだな。だから、例えば軍事力がどこも突出しないようにして低下していればそれが最も望ましいと言えるんでしょうが、現在のところ、日本の西の国々は歴史が古い国はあるにせよ、新興勃興国なので押さえが効かないかもしれないし動向も不明なところもあるのはよく知られている。そう思えば、現在は、ボリュームを上げてプレゼンスを大きくすることが求められるのではあるまいか。軍縮の話で出てくる水平軍縮というのは確かこんな発想に基づいていたのだったと思うが。


で、多分国際政治って、相手国もこっちの持ってる力を当てにしながら保ち合うんだと思う。だから突然の力の低下は勢力均衡を破るので望ましくない。それこそ、大型船は航路を変えるべきではなくて、一定のプレゼンスを保つことで制御系に寄与することもあるのじゃないのか、と同じ。


戦争したくないんだったら、その地域内で均衡させられる、まとまりのいい軍を持っとけ、って感じではなかろうか。


自分んちは、あれは軍隊ではないので、と言いたい気持ちがあろうとなかろうと、その地域に存在していて、沈められたいという積極的な意思がない限り、やれることはやっておくのが地域の安定への貢献ではないのか、と。


そんなことを考えながら、有名な元自衛官で軍事評論家の佐藤守氏のブログを読んで、あえてちょっと話を勝手にに繋げさせてもらいたいと思う。その前に過去1年間ほど何度も読ませていただきましたが、いつも丁寧な資料と議論の提示に感謝していることを申し添えたい。日航機事故にあたっての自衛隊側からのお話を読んだ日、被害にあった方は勿論言葉もないほどお気の毒だが、その現場に行ってくれた人の無念さにも思いが行くわけで、一日何回も思い出しては涙が出て困ったこともあった。

 今回も「あたご」犯人説が強調されているが、当時も事故発生直後から「なだしお」犯人が横行した。要するにマスコミの本音は『反自衛隊』なのであり、何とかして自衛隊をたたきたいのである。 これは沖縄の新聞が顕著であり、今でも11万人集会や、住民自決を軍のせいにする報道に現れている。今やこの国のメディアには『報道の公正』なんぞ期待できないのであり、反自衛隊→反政府→反米で一致しているというべきである。この構図から、彼らが“支援”しているのがどこの国かは明瞭である。支援というよりも『手先』と言ったほうが適切であろう。

http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/20080225/1203922000


お怒りというか、義憤に耐えないであろうとことはよくわかるんです。しかし、
日本の主要紙が反自衛隊であることは、今に始まったことではない。私が子供の頃からそう。子供ながらにいろいろ記憶しているし、その中には私はマスコミの言うとおり信じていたがそうでない見方があるのかとず〜っと後になって気が付いたことも多々ある。


で、問題は、そんなことをいくら言ってもはじまらない(いや、情報を教えてくださる人々には漏れなく感謝であることは間違いはないのですが)。防衛省が今すぐやらなければならないと私が思うのは、第一の敵は国内であるというのをもっと明確に自覚することだと思う。そしてここであえて拳を挙げる必要もない。淡々と悪質な媒介を介さないで情報を流し続けることがまず第一だろうと思う。


だから、情報管理部を建てて広報を一元化して対応するなりして、主要紙に話を抜かれたり、適当なストーリーを作らせないこと、と言いたいところだが、それでも駄目でしょう。だったらもう、直接広報、自前報道に頼るしかないですよ。ウェブがあるじゃないです。これを使ったらどうでしょう。


多分、少なからぬ国民は既にマスコミがおかしいことには気づいてる。だから、事故があったときにひたすら誰かを責めたいからマスコミを頼る、といった心性のある人でなければ、とりあえず理解、歓迎の人も多いと思う。


その際に、もちろん自分を庇ってばっかりとかいう話だったら誰も付いていかない。でも、相応に合理的に許容できる範囲の情報で説明していけばいいのじゃないのだろうかと思うわけです。合理的な情報の出し方をしている、ということが信頼性に結びつきますので、そのへんに注意して。ですからこのへんをコントロールできる、中も知ってるがメディア対応もできる、説得力のある、スピーチライターでアメリカで食っていけるぐらいの腕前のあるプロが必要。これは別に騙せとかいう話じゃない。中間媒介が完全にニュートラルでなく、その姿勢もなく、その誠意もない、できるだけニュートラルで権威のあるメディアが他にない(情けないことだが)以上、こうするより他にはないのではないか、など思う。


民主主義の歴史の中では、普通、国民と国防軍が結びつくことは注意しなければならない動向なのだと思うが、しかし、ここまで媒介が壊れている以上、やむを得ないと思う。むしろ、このままにしておいて、国民内の感情的暴発傾向を温存してしまう方がリスクは大きい。直接的に軍という組織体がそこにあって国民と向かい合っている形になっていることによって、擬似的に国内のシビリアンコントロールに即して行けるのではないのか、とか思ってみたりもする。新しい挑戦だが今という時代になってようやくその道ができてきたというだけかもしれない。


もちろん本筋は、どうやったら政治をそこに絡められるのか、なのだろうが、今現在の政治家は、マスコミが怖いから軍を正面から捉えると選挙に勝てないみたいな感じもあるんじゃないのかな。または妙なスキャンダルを誘発されるかもしれないとかいう疑惑とか。何がなんだかわからないけど、でも及び腰で何ごともなく行きたい政治家と、マスコミに反発を感じて怒ってばかりの政治家ばかりではどうしようもない。


が、軍事ネタが国民的にとりあえず合理的な思考の中に組みいらられている状況が現出できれば(私はその土壌はずっとあると思っている)、これで選挙で勝てないということはなくなる。そうしたら話もしやすくなる。また、静かに合理的に国際政治的に考えられる人が増えれば、軍事力を煽って選挙に勝てる人が出現するリスクも低減する。


前にも何度も書いた気がするけど、日本はいまだかつてきちんと軍をコントロールできるだけの民主政体的体験をしていないと思うし、戦前もこれができなかった。で、誰のせいだったこういうやつら、ああいう考え等々の「せい」にする説がいっぱいあって、それはそれでいいけど、でもこれから必要なことは合理的な意思の中にフォースをオプションとして入れることによって、国民的にフォースをコントロールすること、ではないかと思う。これが目標。
(逆に最悪の事態と私が想定するのは、国民的に戦うしかない、みたいない気分が醸成されていってその歯止めがなくなること。)


この考え方からすれば、極端に防衛庁自衛隊を嫌っている人々も、極端にマスコミ叩きする人々も、反シビリアン管理的トレンドの上にいると言える。議論を非生産的にしているから。(気持ちはわかるんだが)


私たちにまずできるのは、とにかく事件があったら担当省庁のサイトを見る。
で、サイトの出来があまりに不出来だったら、建設的なメールを送る。情けぐらいの話だが、でも、漫然とテレビ見てマスコミ裁判を傍聴しているよりは(判断する権利する与えられず)、ずっと次の世代の人のためになるんじゃないかと思う。私たちは向かい合っているという信頼感を国内的に醸成することがとても大事だと思う。


とりあえず防衛庁、「報道資料」という項目以外に、ニュース!の項目を立ててみればいい。そうすれば、自分で発信するのだな、という意識になるはず。(なってね)

http://www.mod.go.jp/