共和党

CNNを基本に、BBCワールドCBC(カナダのBBC)をパチパシやっていたのだが、その中でBBCのキャスターと解説担当の人たちの話の中で、今回の大統領選挙で最も注目するテーマは何かをアメリカ人に問うたアンケートで、デモクラッツの50%、共和党の30%だかの人が経済と答えていますよね、だったら、共和党ロムニー候補に来るんじゃないかと思うんですが、なんで彼は苦戦してるんですかね、彼の履歴書は素晴らしいですよ、という下りがあって、解説の人が、テーマはそうでも、それで候補者を選ぶわけじゃないんですよ、アメリカの大統領候補者選びはあくまでリーダーを選ぶ、そのキャラクターを見るという要素が強いんです、といったことを言っていた。


まさにそれで、それが故に、ロムニー候補の支持は限定的だろうなぁと私も思ったし、逆には妙にほどにハッカビー強しかと思い、さらにはクリントン横綱とも思うのだった。


ロムニー候補は、実際民間企業出身で経済に強い、というか、ウォールストリート直輸入みたいな言語、声、姿形だ。で、それを強みと思う人ばかりはいない、ってのがまさにアメリカだ。南部の普通のおっさん、おばさんが、心を打たれたりはあんまりしなそう。ただ、移民政策がマイルドでない方なのでそれで一定の強い支持はあるだろうが、基本支持層としては、あくまで東部言語的だから、南部浸透は限定的でないか、と思う。ただ、東部言語的といっても上品な言葉という意味じゃなくて、マーケット的、経済合理的な考え方、アプローチの仕方という意味。声が悪人声なので、これが妙な庶民味を出しているかもしれない。


それに対して、ハッカビー候補は、アメリカ人のハートに直球、みたいな感じか。いや、どの候補も普通のアメリカ人という語を多用するのでこれぐらい曖昧な話もないのだが、少なくとも中西部、南部でこの人が話しているのを聞いて、好意的に思わない人はあまりいないのではないのか、というところ。一般に、ソーシャル・コンサーバティブと分類されているわけだけど、ファミリーバリューを大事にして、ちゃんと頑張ればちゃんとできるんです、草の根アメリカンドリームは生きてます、っていうイメージがよく伝わる人。

スピーチの中で、ここのところメディアは共和党のレースは2人(マケイン、ロムニー)の争いだって言ってた、you know what, yes, it is, and we're in it! 
(まさにそうなんだよ、そう、オレたちはねその2人のうちの1人だったんだよ)
と言った瞬間、感極まっている感じがあって、ああ、今、11月に向かって何千票か稼いだかもと思った(笑)。

大きな候補者に叩きのめされて叩きのめされて、メディアにもコケにされて、苦しいところを頑張ったんだ、という感じが、鼻の差で試合に勝った後にはみんなでシャワーをあびながらシャワー室で泣き出す、みたいなアメリカの映画を思わせられて、なんか、とてもさわやかだった。


マケイン氏。安定してはいるものの、やっぱりこの人の敵は共和党内だよなぁというのは変わらずか。
つまり、誰も彼をデモクラッツだと思う人はいないし、渾身のリパブリカンには違いない上に、軍人一家の軍人だわ、捕虜体験を生き延びたという信じられないようなエピソードを持つ英雄なわけだけど、しかし、社会生活上の価値観がかなりフランクにリベラル的。

というか、言い方を変えれば他人の価値観も尊重した上でというアプローチとも言えるんだし、実際問題どんな問題でも落としどころは常に「真ん中」近くなのだが、立候補して何かを表明する場合には、歯切れの良い意見が通りやすいし、人もそれを聞きたがる。誰だってリーダーになったらボールを一方の壁際に追い込むわけにはいかないだろうに。

さてしかし、そう、ここにマケイン氏の弱点がある。彼は上院議員なので、各議題への賛否が非常に明確になって晒されている。政治の中で妥協してしまった部分もそのまま覆すわけにもいかずそこにある。これに対して、ハッカビーロムニー州知事なので、連邦レベルで妥協したり、揉んだりという経緯は国民の前には明らかになってない。これは強みだ。

ずっと前から、上院議員は大統領にはなりにくい、というジンクスがここでも生きてしまうのではないのかとこれはマケイン氏の不安点ではないかと思う。ただ、強みは、この人が共和党の候補者になったら、リベラルかコンサバか特に決まってない人の浮動票を読める。

そういうわけで、共和党は、明日以降メディア的にはマケイン強しになるかもしれないが、どうしてどうしてまだ混沌では、と思う。