良い連鎖のうちに無傷で行くのか?


なんだか春に向かっていく感じが非常に濃厚で、とてもへんな陽気のトロント
いや、暦の上からは(古い言い方だが)そうには違いないのだし、そうでなかったら問題なわけだが、でもここでは1月、2月はまだ全くの冬のはずなのに今年はプラスになる日がぽつらぽつらとあって調子がおかしい。そのうち気象配置がどうしたこうしたの説明をどこかで読むことになると思うのだが今のところ私はなんでなのかわからない。

そんな春めいた(とかいっても気温レンジは0度を境に下方に強く、という低位安定ですが)日々だというのに、アメリカ経済はかまびすしく、でもって、チャンネル変えれば今度は大統領選挙だらけと来る今日この頃。今日はFRBがFFレートを下げたというので騒ぎとなり、でもってお約束のような条件反射でダウは上げたものの、ものの見事にすぐにしぼんで、なんなのこれはという落ち着き方となり人々の不安は更に増すという春らしくないムードになっていた。

で、それを織り込むにも時間はかかるだろうし、でもって、アメリカのGDPの1%を突っ込んでの言うところの刺激パッケージという名の小切手配りは早ければ5月には発送できるという話になってきたので、それはそれなりにリセッション回避プランは実施中というところの模様。リセッションだろうがなんだろうが、とにかく小切手が来るのは嬉しい、というのが人情なのでこれは明らかに好感されている。あと、選挙の年に候補者が最もやりたいことはこれだ、というプランでもあるからすんなり(多少のぐじゃぐじゃはあったが)決まったという側面もあるでしょう。

さて一方でカナダ。こっちは小切手はないのか、と言いたくもなるけど、しかし、実にまったくタイミング良く、まったく小さい話ながらも今年の1月1日から連邦売上税が6%から5%となっていた。これは2006年7月までは7%あったものなのでこれで合計2%の削減。さらに所得税は法人も個人も減税(個人はごく一部だが)が決まっているので、小切手こそないものの実質的には、刺激プランが実施されているといってもいいかと思う。話が小さいにせよ。


アメリカの景気が下振れしたらカナダもそうなる、というのはある種法則めいてそうだと信じられているので、このへんの減税プランというのは昨年策定の際にもしかして読んでいてそうなったのか?など思ってみたりもする。いや、そんなことじゃない、現在の保守政権が、隣の保守政権と同じく信念のタックスを下げろ論者だから、というのが支配的な俗説には違いないけど、でも、結構真剣にこのタイミングは読まれていたのではないのかと私自身は思う。私は多分、大方のカナダ人よりもカナダを褒めてるとしばしば思う。

つか、私の考えでは、ここ10年ぐらいのところでいえば、他のすべての欠点を補って余りあるほど、中銀、連邦政府の連携がうまく機能して、上手に経済の波を乗り切っている国だ、なんたってあなた、バランスした予算なんですよ、と言ってもいいのではなかろうかと思う。


で、個人の所得税はともかく、法人税を大幅に下げ続けている動向が私の感想を裏付けているんじゃないのかなぁなど思う。つまり、今現在の経済が順調なのでそのままにしないで、どうあれカナダだけではまかなえないので、国境を超えた投資が必要なわけで、その際の条件をできる限り良好にしておこうという意図が見えるといってもいいのではないのか、と思うわけ。4年ぐらい前から、この法人税の減税プランがこれこれしかじかで段階的に成功するとその時点で対米で6%ぐらいカナダの方が安くなりますと宣伝していたが、そのペースをさらに持続しようとしている模様。

参考まで法人レートの今後の変遷。カナダ歳入庁(ようするに国税局か)のページ。
http://www.cra-arc.gc.ca/tax/business/topics/corporations/rates-e.html


ただ、気をつけなければならないのは、このレートは「連邦」のもので、ここには恐ろしい州ごとに異なる州の所得税があるので(法人でも個人でも)、連邦の税率21%、20%なんてのがそのまま法人税なわけではないです。


所得税を下げると大半の人が喜ぶが、法人税を下げると、大企業ばかり優遇かぁ、みたいな突き上げが来るので政権のイメージには良くはないのかもしれないが、結構ガシガシ断行してる。で、結果的にこれによってイメージが損なわれて政権が倒れて、次の政権は会社じゃなくて人に優しいんだよ、とかいっても実際にその時のエコノミーはその前の不評政権が敷いた法人税削減の上に乗っている、みたいな話になるんだろうなかななど思ってみたりもする。どこでもそうだが。


さてそこで為替。
アメリカが先週すごい勢いでレートカットをした翌日、こちらはスケジュール通り25bp下げて4%にした。
以前は普通はアメリカより若干低いレートだった(していた、というべきか)がアメリカの下げが早いために追いつかず、こちらはそこまで実態経済が悪いわけでなく(といってインフレの懸念も緊急にはない)、というわけで昨日までは、アメリカ3.5、カナダ4だった。
が、今日アメリカが50pb下げたので、今度は3%対4%となり、金利差しっかりとなっている。それを受けて為替市場は昨日またまたパリティを切って、今日は朝からまたまた怒涛のカナダ上げになっていた。これはユーロも同じで、どこもかしこもこんなに読みやすい動きもなかっただろうなぁと感心した。
(感心してないでお前も買えよ、とか思うわけだが私はこういう時にトレードできた試しはこれまでない。悔しいというべきか性格というべきかわらないが各種情報を見ながら眺めることに主たる楽しみがあるらしくて、とにかくなんでなのかお金を賭けるって方向に気持ちが付いていかない。)

しかし、恐らく3月の定期ミーティングではカナダもまた下げるかも、という予測は一応ある模様。もちろん経済データ次第だが。カナダ高の気配が出てきましたので、といった言い方で経済成長に対してネガティブな要因として捉えられている基調は健在。


ただ、去年のように、一気にカナダ高になるような気配はとりあえずないっぽい。お約束で上げたはいいけど、その日のうちに若干以上に戻してるようだ。これはユーロも同じに見えるけど、アメリカがこけてきたところで自分たちの経済が無傷のわけはないといったコンセンサスの故なんでしょう(実際ヨーロッパは強弱まちまちだし、金融セクターのサブプライムがらみはかなり深刻だしといった事情があきらか)。ここでインフレを懸念して欧州中央銀行がいきなり利上げ断行とかあったらそれはそれでかなり面白いけど。


なんにせよ、カナダを見ているとうまく言ってる時はとにかくなんでもご後手後手にまわらず、先、先で対策を立てられるんだなぁとしみじみ思う。多少悪くなっても、金利はまだ下げ代あるし、税以外には特にパッケージ出してるわけでもないし、まだいろいろやれるものがある。悪くなりだしたらなんでも大変になるのと同じように要するに連鎖とはこのようなものなんだろうけど、神様ももう少し均してやってくれればいいのになど思う。神様はイチローじゃなくて結構決め打ちするタイプなんだろうか。ああ、だから寒くなったらなりっぱなしで、突如暑さに向かうのね。