サルコジは怒っている


そんなことはともかく、このトレーダー氏の問題は、フランスの大統領サルコジ氏を怒らせている、といった記事が上の本筋を凌駕する勢いで回っていたのが興味深い。

上で書いたように、SGは金融当局とは話をつけていた。しかし、大統領サルコジ氏にもその他閣僚にもその問題の週末にも売っぱらっていた月曜、火曜にも知らせがなく、大統領らが事態を知るのは、殆ど他の一般人と同じようなタイミング、水曜日になってからだった。


巷間怒っていると伝えられる大統領はとりあえず、財務大臣に事の次第を報告するSGに要求したという。
ここにある問題は、一民間企業とはいえフランスの企業が世界を震撼させかねない事態を迎えようとしている、しかもしれは不正取引がらみであって発覚時点での可能性としてフランス司法当局のお世話になる予定の話しだ。実際その後SGはトレーダーを訴えて、それがあるからフランス当局がこの人物を拘束して話を聞くという事態に発展している。


しかし、事態発覚後の5日間、事態は当局に伏せられており、その一方で、フランス中銀から欧州中銀という流れは生きていた。さて、SGを統括するのは誰、あるいは所属はどこなのか。フランス金融当局とはフランスではないのか、とも言えるのかも?


ただ、現実的に考えれば民間企業たるSGとしたら、できるだけ関係者を増やさないで売っぱらいたかったというのも(もし全部本当に一人のトレーダーの仕業であるというこの話が本当ならば、だが)、本当といえば本当だろう。つまり、SGが断固売ってくるとなったらアゲインストのポジションを取ってくる人を増やしてしまい、さらに損失を増やす可能性はあったとは素人でもわかる。で、大統領とか閣僚という目立つ人に知られてくれば、何かかぎつける人もいるだろう、みたいなことも考えただろう。しかし、それでも、もしこれを不正としてフランス当局に訴えを起こすのならば、最初からその当局を統括する主体、つまり国家、政府に協力する姿勢が求められる、とも言えるかもしれない。


さてどうなるのか。
SGという一企業という話だけでもマーケットの現在の動きという問題だけでもなく、金融政策を一元化しているEUって大変ですね、という話でもあるだろうと思う。そしてそこが一番やっかいそうな気もする。


ある種ゴシップ的な興味としては、フランスが誇る特定のいくつかの学校出身者で占められるエリート集団 vs サルコジというテーマの変奏になっている点も注目か。つまり金融業界もまたエリート群からの供給で、SGのCEOもフランス中銀の人もそこの中人々。で、サルコジは完全にアウトサイダー。立場上、業界上の問題もあるだろうが、でも、ここにある「壁」も問題かもね、というところ。どうでるサルコジ、と。


なんにしても、イギリス勢がスキャンダル(殊に金融がらみ)に食いつく時の総力戦ってすごい。FT、Times、telegraphというそれなりに確固たる地位のあるメディアが総出となればそれを見て事態を把握しようとしている世界中のメディアの興味を惹起しないわけもなく、そうすればそこから更に情報は洪水のように流れ出す。別の系統であるGuardianも、フランスでどう報道されているかを翻訳紹介しているという格好のサポートとして参入していた。ここから考えると、アメリカっておとなしい国だよなとか言いたくもなる。