金より強い


リセッションになるかもなるかもと言っているうちにリセッションが終わったりするんじゃないのか、など思ってみたりもするアメリカのリセッション懸念とやらがうるさいというか、なんか、こう、なんでそんなに騒ぐの?という感じをぬぐえない。自分の時間がニューヨーク時間と同じなので、リアルタイム&通常の生活時間内にアメリカが混乱してます、ってな状況を見ることになってるのが運の尽きかも。あまり嬉しい状況ではないが、まぁこのそういう時を経験するのも一生に何回もないかもしれないからまぁいいか、みたいな感じでニュースを見てる。

この間カナダでは、トロント証券取引所の株価が月曜日に2001年以来7年ぶりの下げ幅となって、さすがに年中強気のカナダ経済関係者もショックを受けていたようで、1日ニュースが暗かった。そうはいっても結局今日はぼちぼちで、それほどの事態にはなっていない。

翻って、日本ってもう下げなれしてしまってこういう動揺も見なくなって久しかったりするかもとかも思った。

リセッションとかいっても、だって大昔の大恐慌ならいざしらず、とりあえず近年のリセッションなんて1年以内で終わってるし、その個々のリセッションによって後退した部分が回復したのは第二次世界大戦を待たねばならなかった(いわゆる大恐慌の時)、なんてことは普通まったく想定されていないわけで、だったらなんでそんなに騒ぐの?と思うのは、やっぱり10年失われても人はだいたい生きてる、問題ない、と思いがちな自分の感覚の問題なんだろうなぁと彼我の差を感じる今日この頃。


もちろん、今回のは今までとは違う、という可能性も勿論あるかもしれない。しかし、やっぱりそれでも大恐慌時代のわけはないと考えて悪い理屈はあまり思い当たらない。あと、メディアは騒ぎまくってるけど、普通の人たちは結構落ち着いてると思う。このあたりは、何十年間かの教育の成果により当該経済体内では経済に対して合理的な期待を持ちながら行動する人々が増えているからパニックが発生しない、だから回復も速やかだ、みたいな点もあるのかなと思ったりもする。とりあえず、ビジネスサイクルで後退期はある、コスト削減で職も失う、でも必ず盛り返す、みたいなのがリズムになってるっぽくみえる。別に沈んでない。


それはともかく、ドル円相場。
もはやなんで円が高くなっているのか、誰もちゃんと言えなくなっているっぽくてちょっと面白い。というか面白くないわけだが。

ただ、自分が考えていることは、日本円に対するドルという組み合わせ以外だったら、かなり普通のことだったのだと確認できたことはとりあえず私にとってはゲインだ、とかも思った。

つまり、


米リセッションならドル全面高、それでも3月98円不可避-JPモルガン
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90001002&sid=aCMPTHn5OwFE&refer=jp_home


米リセッション懸念だというキャッチフレーズで円が買われてます、買われてます、という報道を過去3週間みたわけだけど、それ逆じゃないの?と私は思った。なぜなら、短期的には特に、米でダウが下がる、資産が下がるとかなったら、ダウ等の株式相場ならなおさら、証拠金足りません→現金必要→他のマーケット(海外)で利を確保→ドルに買えて本国に持ってくる、という流れになるでしょ、と思ったから。


で、先週から今週はそれが起こっていたっぽくて、ユーロ、カナダ等々の通貨ではむしろドルが高い日もあった。
さらには、米経済不調なら、カナダは言うに及ばずユーロ圏の景気後退もありという懸念から、これまたドルだけが一方的に売られる展開は先週後半からは薄くなった。

要するに、人気投票してるわけじゃなし、通貨ペアには2つの当事者があるんだから一方が不調になっただけではそんなに一方通行にはならないはずだし、実際なってない。

米経済がリセッションに至った場合、日欧や新興市場国も悪影響が避けられないとの懸念が強まり、「デカップリング論」は支持を失う。米国と他国との景況感格差が縮小し、ドル売り圧力が弱まる。加えて、自国経済の悪化でリスク許容度が低下した米投資家が対外資産の引き揚げに走るためドル買いが増える、というのが佐々木氏の読みだ。


というやつだった、と。


で、それにもかかわらず、ここがこの記事の面白いところだよなぁなんだが、

いずれにせよ100円突破

  円の対ドル相場はどうなるか。佐々木氏は、米リセッション入りの有無にかかわらず、同じ展開になると予想する。3月末に98円と、95年9月以来の円高・ドル安水準に達し、その後は100円前後で一進一退になるという。


上のような円以外の通貨で見られる状況なんか関係なく、どうでも円は高くなる、が、このJPモルガンのアナリストさんの予想らしい。


現在のドル円相場に関していえば、特にこの方の意見が風変わりでもなんでもないので引用してしまうのも申し訳ないんだけど、とりあえず、円は特殊な通貨である、と言うしかない通貨として扱われているというのは間違いないらしくある。理由はないけどそういうことで俺たちも動いてます、ってことかな。

実際、ダウが下がっても円高、日経が下がっても円高アメリカ不調でも円高、日本が不調でも円高、金が高騰しても円高、金が売られても円高原油が上がっても下がっても円買い。動かない通貨の代名詞っぽかったスイスフランも相応に動いた今は、円独歩高。もはやゴールドを超えた底固さで円が強い。


一方で、東京三菱の市場業務部が出している週報は趣が違う。

非常に真面目な(あたり前か)現状の分析をしていて、根本的に金融市場がパニックを起こさないような環境ではないといった感じのことが書いてあって、それに続いて、ドル円相場に関して言えば、「過去半年で米株以上に値を崩した日本市場で織り込まれた日本の景気減速が為替市場で織り込まれ始めてもおかしくなかろう」、
「シカゴ通貨先物市場の持高等から察するに、目下、欧米系ファンド筋等は積極的に円買い(ロング)ポジションを構築し始めたようだ。」(1/21日分)

http://www.bk.mufg.jp/tameru/gaika/index.html


とあった。ついにというか、事ここにいたってというか、これを問題にしないことには説明できません、と言っている、少なくともほのめかしていると取ってよいかと思う。これを執筆されている方とか、なんか気の毒だよなぁとかも思う。

しかし、東京三菱の執筆者さんは上のJPモルガン氏と違って、金融的な因果関係もないのに組んだそういうポジションはアンワインド(巻き戻し)されると言い放っているのが興味深い。三菱さんの見方は、今年は年末に向かって100円前後までドル安円高が進むとの中期的な見方は持っているが今の状況はへんだ。

状況から考えて、要するに、今回の急ブレーキみたいな円高は作られすぎだ、というのはどっちから言っても結局コンセンサスっぽく見える。で、そこで判断が分かれるわけで、モルガンのアナリスト氏は、簡単に言えば、そんなのどうでもいいよ、そのまま流れに乗ればいいじゃん、「いずれにしても円高」、それが経済合理的じゃん、だし、三菱アナリスト氏はそんなの経済合理的とは言わない、ということか。経済合理性の意味が違う、と。