為替レートを見ながらカナダ経済のレポートを読んだ


で、2007好調カナダ経済!としか良いようがないほどカナダの経済はまったく好調だった。だったと言うともう終わりみたいでごめんなさい、だったりもするが、基本的にはカナダ自身もそう読んでいて、今後は下降トレンド気味であること認識されている。ただ、今後もセクターによってはまだ行きそうだというところもあるようだし、全体的なスランプというほどになるとまでは予想されていない。但し、何事もアメリカ経済からの影響は極めて大きいのでそれにひきづられる可能性を非常に心配している。


とりあえず現状について、カナダ財務省の2007年のまとめと今後の見通し(Recent Economic Development and Prospects)が分かりやすい。用あって読んだついでに、メモ。
http://www.fin.gc.ca/ec2007/ec/ecc1e.html


一言で言えば、2007年のGDP実質成長率は3.4%と予想を上回る成長だった。しかし、今後は下降気味になりそう。その理由はビジネスサイクル、米国経済が弱いことと、カナダドルが対米ドルで30年ぶりにパリティを超えるなど非常に強くなっていることが挙げられる、とのこと。


カナダ経済そのものについて興味のある方は上のレポート、わかりやすくまとまっていると思いますのでご参考までに。
私は、昨日からの興味関心の流れで、予想されている下降トレンドの要因のひとつとして挙げられている対米ドルの為替レートに注目してメモ作り。


・対米ドル為替レートの変化(過去7年)
Chart 1, 12 Canada-US Exchange Rate
http://www.fin.gc.ca/ec2007/ec/ecc1e.html

1米ドルに対して、約65セントを底に、右肩上がりに上がり上がっていることがよくわかります。2007年9月20日、30年間ではじめて等価となり、ほぼ3ヶ月3%程度を上限に(毎日ベースでは10%近く上回ったこともあった)再びパリティ付近から<1になろうとしている(2008年1月現在)。


この対米ドルの上昇の原因を、同レポートは、コモディティ価格の上昇と、カナダと米ドル間の金利差の縮小、経常収支の違い(カナダ黒字、アメリカ赤字)を挙げている。その上で、2002年以来、米ドルは貿易加重平均で各国通貨に対して20%セント程度きり上がっており、カナダではそれが30%程度であったことを記している。


2007年を当面の天井とするカナダドルの対米ドルへの上昇によって輸出産業、殊に製造業と、国内で外資企業と競合しているカナダ企業が打撃を受けている。2005年以来13万人の雇用を失った(自動車産業の工場閉鎖などが大きかったと思われる)。


カナダの経済成長における製造業のシェアは、1993年から2000年で順調に伸びたが、これはカナダドル安に支えられたもので、カナダドル高以降は下降気味の圧力に押されている、ともある。


どのぐらい安かったかといえば1998年にカナダ中央銀行が介入するほど安かった。日本とは逆の介入。過去10年間で、1米ドルに対して、65セントから1ドル3セント(月間ベース)で上昇してきた。2001年ぐらいまではほぼ70セントぐらいで、その後ゆっくりと右肩あがりでパリティに至って超えた。


ちなみに、最近30年間のカナダの大雑把な経済トレンドは、80年代後半から93年までは深刻なリセッションで、経常も赤字、失業率も高かった。その後、94年は一旦ちょっと良くなって95年から96年も不況。そこから徐々に良くなってきて、過去10年間は2001年がちょっとまずかったらしい(ドットコムバブルがらみ?)がほぼ順調に成長。だから90年代いっぱいカナダドルが安い理由は確かにあったと言えるんでしょう。


今後の為替レートの予測については、2008年には96セント、2009年95セントを見込んでおり、これは現在の取引レートを大幅に下回っている。従って、今後現在のレートに近く推移していけば、貿易セクターへの影響を通してカナダ経済成長の下降リスクとなる。また、現在のカナダドルの上昇は、米国ドルの弱さだけでなく、カナダドル投機の気配である可能性もある、との言及もある。


勿論、カナダドルの上昇のベネフィットも非常に大きくて、対米投資が増加したし、各種の輸入品の価格がそれにつれて非常に下がった。
Chart 1, 15
Real Business Investment and the Exchange Rate
Chart1, 16
Average Price Levels

チャート内で最もきれいに下がっているように見えるのは、音響機器と次は家電。逆に対して変化していないのは、車、家具、若干低下しているのは衣類。


私の感想としては、家電とかビデオ類等の音響機器は事実安くなったが、これって為替の変動以外の要素で世界的に値が下がった品物のように思える。単純に言って中国、台湾等々からの物品の輸入っていう話ではないかと。ということは、つまるところ、あんなに為替レートが変動しているのに、それ以外の物の値段はそのままだったと読むべき話と言えると思う。


で、インフレについては、
・コア消費者物価指数のチャート。
過去7年間、あちこち超えたり、下がりすぎたりもあるのだが、おおむね、なんとか3%の枠内では推移できているようだ。
http://www.fin.gc.ca/ec2007/ec/ecc1e.html
(真ん中ぐらいの、Chart1, 10 Total and Core CPI Inflation)


が、今年の消費者物価は4.5%上昇するとの見込みもあり、もし政府が適切な処置を取らなかった場合成長率を上回ることになる。

一方で、2001年以来、カナダの一人頭の収入は7.6%上昇している。
(このレポートにはないが、確か、これまでのところでは賃金は問題なく上昇していると見た気がする・・・。いずれ捕捉)