『円の足枷』


今の私の興味にぴったりのご本が世の中にあるらしくて感動。極東ブログさんがリンクされていたところから辿りました。毎度お世話になってます。


『円の足枷』

著者は、米クリントン政権が対日通商摩擦解決のため戦略的に為替レートを操作したことで、中長期的に円高トレンドとなり、それが日本経済の長期的な低迷とデフレをもたらしたと分析する。さらに本質的な問題として、日本の通貨当局にとって円高トレンドが当然の前提となり、デフレ解消に必要かつ効果的な金融政策を取れなくなったことを挙げる。円高トレンドは日本経済にとっての「足枷」、つまり完全復活の障害になっていると主張する。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492394745/fareasetblog-22/ref=nosim


アマゾンのレビューから。
読んでないので何も語る資格はないけど、日本の金融政策がうまく機能できませんとなった問題を考える手がかりを求めて読むという方向が正面であるご本なんだろうとは思うし、その点について私が読んで付いていけるのかどうかというのは結構不安なものがあるけど、とりあえず帰ったら買う本リストに入れた。うっすらと確か去年初夏に日本に帰った時に本屋さんで見て、帯が激烈でやめたような気もする。帯反対。


で、私の興味関心は、日本の当局者の政策もさることながら、「中長期的に円高トレンド」となり」というこの事象、あるいはこの事象の形成過程の不可解さ。

つまり、相場は相場に聞け(マーケットは時々刻々変わるものだ)というのなら、中長期的に円高になるトレンドが所与のものとして存在するのはおかしいはずだ(新興国から先進国への仮定ならいざ知らず)、それにもかかわらず、なぜだか、例えば去年後半から人々は日本は今後何年間円高になる、といった言が聞かれ、事態はまるでそれに合わせるかのように進行する。

もちろん、アナリスト等個々人にそれなりに理由はあるんだろうとは思うし、米ドルと日本円に関して言えば、米国経済の先行き不透明感と世界情勢みたいなものから米ドルの価値下落はある程度うなづける。また、購買力平価から見た両貨幣価値の変化もなるほど、だ。が、一方で、例えば今の事情なら、日本経済もそれなりに相当不調であり、かつ、金利差は例えアメリカの金利が落ちても依然として厳然として存在する。それにもかかわらずなぜ円高トレンドが固定的なわけ?というのが、私の原初的な疑問のきっかけ。そして、一旦大きな方向性がどこからともなく規定されると、関係各員がみんなそれに乗ってしまうからこそそのトレンドは維持されている、とも言えるのではないのか?と思ってみたりしている。


さらに、その間に、あらゆるイベントを通じて、要するに、かなり「強烈に」円高の方向を作ってるとしか思えない、という現在がある。

ユーロもカナダドルも、昨年8月、11月の危機には対ドルで大きく上昇したし、年末年始にもぶれた。でも、結局のところ、今週になってカナダ経済もヨーロッパ経済もそれぞれ下降気味であることを受けて、対ドルで大きく上昇することはなくなった。つまり、話がちゃんとしてる。ところが、なぜだか、日本だけ、米国経済の先行き不透明感から、とか、サブプライム問題による米ドルへの不信からとななんとかいいながら、ドルに対して上昇していて、まだ行こうとしているように見える。(円キャリの巻き戻しファクターという可能性も勿論あるけど)。

なんでよ、と思うのは当然だと思う。あたかも円高トレンドを作るために今頑張ってるわけ?誰がだか知らないけど、という疑問を持つ理由はあると思う。


あと、、「中長期的に円高トレンド」に関しては、以前に無理な円高を作ったことから、チャートというかチャートを元にしたサイクルが今後は円高方向に触れると読める図になってしまった、という意味かなと思ってみたりもする。で、すくなかぬアナリストさんたちはそのチャートを元に予想を立てて、円高トレンド是認になってる、みたいな構造。なんか、呪いをかけられているみたいだが、チャートの問題はきっとかなり大きいかなと思ってる。頭の良い人々であればあるほど、チャートは破られるためにあるものだ、とは読まないから。


でも。まったく個人的には、今回は「円高トレンド」作成に失敗するのでは?チャートは破られるかもしれない、なんても思う。なぜなら、まったく皮肉なことだが、あまりにも日本経済が弱すぎるから。円の価値がそこまで高いということが疑問視されてしまうことをきっかけに、このトレンドは定着しないのでは?なんて思う。皮肉で、失望的な話ではあるけど、でも、これは浮上を考えるチャンスじゃまいか。