お正月危機を考えてみる


なにやら、あわただしいというか、なにやら不安な幕開けとなった2008年でございますが、ともあれあけましておめでとうございます。
何があわただしいといって、ダウが沈みそうだ、なんてこったというマーケットの話なのだが、日本でも日経平均が下がればすごい騒ぎになるけど、アメリカの場合投資資金にお金を突っ込んでいる個人の量が半端じゃないので、マーケットの話は重荷マーケット関係者の話じゃなくて社会問題に直結する傾向が他先進国に比べてより大きいと今さらながらのことを書いてみる。

で、その中で、世界的にドルの価値が低下しているといった騒ぎがずっとこう、断続的に見隠れしているのがちょっと気になったので書きながら考えてみようと思った。


NYダウ、一時200ドル安・1万3000ドル割れ、円は一時107円台
http://www.nikkei.co.jp/news/market/20080104c8AS2M04044040108.html

外国為替市場ではドルが主要通貨に対して下落。対円では一時1ドル=107円90銭を付けた。107円台は約1カ月ぶり。同時刻現在では前日終値比1円05銭円高・ドル安の108円20―30銭。(05日 01:39)

というのが1月4日金曜日(NY時間)に対する締めのコメントみたいなものか。
で、一方、同じことのFTのタイトルはこっち。

Stand-out performance by yen
http://www.ft.com/cms/s/0/723079b8-baab-11dc-9fbc-0000779fd2ac.html?nclick_check=1


円だけ勝っている、少なくともこれが目立つ、と。

日経さんが書いている通りの、ドルは主要通貨に対して弱い、というのは過去1ヶ月とかについて言えばそうだけど、年明けに関して言えば、FTが言うとおり、やたらに円との関係でそれが顕著だったと言っていいかと思うんだが・・・。

これはどういうことなのか。


とりあえずカナダドルは金曜日、ほぼパリティ付近を行ったり来たりで終わった。つまり過去半年顕著だった、アメリカ大変→カナダドル買いという様式はなかった。カナダドル原油価格に結びついているという説を取るなら、最近はずっとカナダドルは常に米ドルを上回らないとおかしいし、特に1バレル100ドルで跳ね上がる必要があっただろうが、それも限定的だったみたいだ。実体経済としてのカナダは小さいから、アメリカ不況のあおりを受けないわけはないのでアメリカ経済不調のニュースで上がりきれないとももちろん言えるが、それなら、過去半年だってそれは同じだったのに実際には15%ぐらいのものすごい上下があった。

さらに、ユーロももう上げ渋っている感じだ。
もうユーロをそんなに上げたらEUどうすんのよ、という実需がらみの不安もあるだろうし、金融機関のやばさは別にアメリカに限った話でもないからこうなったとも言えるだろうと思うがもうひとつあるかなと思う。ユーロは過去1年政治銘柄みたいに動いてきた感があって(少なくとも私はそう思ってみてた)、その主要なツールのひとつは、原油産出国がドルペッグをやめるか否かだったと思うんだが、その話は、とりあえずアラブ首長国連邦さんちでは、ペッグ外しませんといっている。もちろん永遠にとかいう話ではないだろうし、UAE当局者のコメントでも、向こう12ヶ月外れることはないっすよというものらしい。


このへんを上のFTは、投資家たちはこのニュースを無視するようにしてユーロ買いに走ってたみたいなことを書いていたけど、少なくともニュースが出てからは走ってなかったんじゃないのかなと思う。詳しく見てたわけじゃくて今ニュースの出てた時間を見ていっているだけなのでなんともいえないけど。


というわけで、なんかドル/円だけが、ものすごいことになっていたというのがこのお正月の現実じゃまいかと思った。
で、どうしてって、まぁその、で、日本にはお正月休みつーものがあって日本国籍の主体が広く欠席つーのがあるわけで(少なくとも実需の動きはお正月というか年末年始に向けて調整されるわけだし)、ということは、円がどうしたこうしたと書いてるけど、実際には、ドル/円をいじる日本国籍主体以外にとって円買い、ドル売りが進んだ、と言っていいんだろうななんてことを思う。ま、ありがちなんでしょ、こういうスケジュールって、ってことも思う。つまり、なんか仕掛けられたのか、と。時間足を入手して見たけど、これってもう、パニックに値するような出来事が連続的に発生したとかいったチャートに見える。従って、通常の需給という範囲ではなく単純にとにかくドル売りという意志で動いた人々が優勢だったみたいな話しなんじゃないの、これ?など思う。


でので、この動きって、他の通貨を巻き込んでの広いドル売りができなかったってことだったりしたらもっと面白いのになぁとか思った。つまり、世界規模と言うに足りるほどの大きな危機をあおり損ねた、みたいな。でもそういうことじゃなくて、107円を底にしないでものすごい円高時代を作りたいという意志を持った主体がどっかにいるのかなと考えてもいい気もする。ほら、不況になると為替をいじりたくなる大国があるからさ。


いや、だからといって米ドルがこれまで通り安泰とも思わないし、リセッション懸念も本当だろうと思うけど、でも、3億人の人口をかかえてとりあえずすべてのインフラが揃っているところの将来がそんなに簡単にボロカスなわけもないでしょ、とも思う。これまで通りのことはできない、というのは考えていいポイントだけど、アメリカドル崩壊とか暴落とか、アメリカ経済崩壊とかなんとかって、なんか、ものすごい文字が躍るほどの話なのだろうかと私自身は考えている。起こるとしても、時間が必要だし、その前に、その発生過程でこれだけの人口がいたら適度に内需が拡大して多少のモデル変更も可能じゃないのか? アメリカ人はそんなにどうしようもなくアホか? だから、今のような真似はできないってのは本当だが、一気にドスンとドルが紙切れになんてことにはなりそうもないと考えていいんじゃまいか。


あと、これらニュースがなんだかなぁと思ったのはもう1点。
危機になって、ボラの高い、あるいは減価しそうな通貨を捨ててそうでない通貨を買うというのは一般的に合理的だろう。で、例えばドルがやばいから円で、というのは円をベースとする主体の行動としては合理的だ。でも、ドルベース主体にとっては、逆じゃないのか? つまり、米ドルが減価しそうだと思ったら、とりあえず他にものすごくいいものがない限り、米国内に資金を戻すことを考えるのじゃまいか?米ドル本国が過激なまでに小さなマーケットしかない、戦場になりそうだとかいうのでない限り。どうでもとにかく移そうと思うのは、オフショアで転がすことがメインのベースのないお金だけじゃないのかな。だから、日本のマーケットが閉まっている時に、質への逃避でドルが売られました、って、へ?と思う。


ネットをざらっと見ると(日本語に限らない。むしろアメリカ)を読むと、アメリカ大変、ドルをみんなが捨てる、みたいなことを書いている人がかなりいる印象を受けるんだけど、これって違くない?とか私は思う。ドル円に関していえば、だから、もし大きな危機があったら、その危機の最中にはむしろ突発的なドル買い、円安時間もあり得るんじゃないの? 馬鹿かしら私。

馬鹿でもとりあえず、私の底の浅い仮説では、去年カナダドルが米国危機を叫ばれるたびに上がったのは、この逃避行動のひとつだったんじゃないのかな、なんて思ってる。でもって、今回はそれが起こってないから別にそこまでの危機でもないんだろう。

でも、この仮説を敷衍すると、今後起こり得る危機のために、カナダ、オージーとかは出来るだけパリティ付近だと便利でいいな、ってなお金持ちがいても不思議はない気はする。そういえば、年末にまたカナダドルが高くなったことがあったが、その前に11月高値を戻して、まぁ適当になりましたね、とほっとしていたあたりで2007年を振り返るみたいなタイミングが来て、その頃のテレビで、2007年はカナダドルが上がりましたが、という話で、これはカナダ経済を反映したものではないです意見を述べていた大手銀行の人がいた(もちろん、カナダ経済が強いから、素晴らしいからという人もいたけど)が、このへんが実際というやつなんじゃないかと私は思った。私、間違ってるかしら。でも、2008年も引き続きこのへんを注視していこうと思う。


あと、アメリカの株式市場って暴落願望でもあるのかなとかもちょっと思う今日この頃。各種指標が悪いとか、FEDの利下げの幅が小さいとかいうのって、常に予想との落差でわーわーになる。で、その予想がそもそもおかしくないか?ってのはスルーになっている気がする。勝手に期待して失望売りを誘うみたいな。いや、アメリカ堅調と言いたいわけでは決してない。まったくないんだが、この構造も自然には見えない。