パトリオット

久しい以前から、アメリカの下院外交委員会アジア太平洋小委員会が、いわゆる「慰安婦」問題についての決議案を巡って公聴会をする、した、という話をネット上で目にしていた。自分なりにあちこち見たりもしていたが、産経新聞の古森さんがお書きになっているブログに記事が集まっていて、さらにそこに貴重なコメントを寄せる方が数多くかり、かつ、TBも豊富にあることから、都合よくそこをこの問題に関するポータルにしてウォッチさせてもらっていた。
お世話さまでございます&ありがとうございます。


で、今日の記事に、2月15日の公聴会で発言したデーナ・ローラバッカー議員(カリフォルニア州46地区選出、共和党)の同委員会での発言がアップされていた。
http://rohrabacher.house.gov/


慰安婦」非難決議に反対したアメリカ議員
2007/02/22 01:25
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/121570/#cmt


一読、true patriot love in all thy sons command...とか歌いたくなった。
これはカナダの国歌の一部なので、共和党の議員さんあんまり好かないかもしれないけど(笑)、パトリオットの気持ちはどこでも一緒だと思うなぁなどとも思うので、いいかしらね、などとも思う。


日本の問題でなぜアメリカの愛国者なのかと思う向きもあるだろうが、要するに、このグラウンドレス、少なくとも相当にゆらゆらなクレーム(主張)から氏はアメリカを救い出してるんだものなぁというのが私の率直な感想。


同議員の発言の骨子は、古森さんがまとめてらっしゃる通り、

決議案は日本に謝罪を求めているが、日本は首相以下、何回もすでに謝罪をしてきた。慰安婦問題では1994年以来、多数の日本の首相が明確に遺憾の意や謝罪の意を表明してきた。決議案の記述は正確ではない。
▽決議案は日本の教科書が慰安婦問題を無視あるいは軽視していると書いているが、日本の教科書はすべて日本の戦争行動を批判的に取り上げ、その大多数は慰安婦問題にも触れている。

という部分が直接の反論で、その上で、

▽世界のどの国も過去において犯罪を冒してきた。日本だけではない。アメリカも国家として犯罪を冒してきたが、それほど謝罪はしていない。
▽すでに糾弾され、その糾弾を受け入れた日本をいままた糾弾することは、現代の日本国民を二世代前の日本人がしたことによって、不当に懲罰しようとするに等しい。
▽現在の日本はアメリカの同盟国として、また他の自由主義諸国とともに、国際社会では礼節や人道主義を推進する主要な存在である。
▽すでに何度も謝った相手に、また謝罪を求め、叩くようなことはしてはならない。


という組み立てなので、日本人の中には、いわゆる「慰安婦」問題を認めた上で成り立っている以上この発言も認められないと思う人もいるだろうが、同議員の立場を考えれば、彼にとって明らかにできることについて、できる限りの発言をしたと言えるだろう。

つまり、日本政府が発言している以上を自分の考えてジャンプしてどっか持っていってないという意味で、彼は自分の発言を根拠レスにもしていないし、日本国政府の方針なりやり方を尊重しているわけだし、それはつまり彼なりの責任感というものだろうと思う。こういう責任感の持ち方、あり方を私は非常に尊重する。高いところから調子の高い発言をするのが好きな人とは相容れないだろうが。


我が邦の太郎さんが事実に基づいていないと主張していたのも呼応していると思う。事実に基づくかどうかに焦点を持って来るかどうかは、今現在この問題を大枠ではas isみたいな感じで認めてしまっているのが日本国政府である以上、一義的に日本国政府の問題だ。(太郎さん、確実にどうぞお願いします。拙速は必要ない。)


で、まとめれば、前半は、基本的に他国vs他国で、しかも別に個々のクレームを現実に沿って検証してみたわけでもないという現状がある以上、同議員はテクニカルにこれを否定し、もってアメリカを余計な案件から救い出したということだろうかと思う。


でので、後半、Every country in the world—and Mr. Chairman, から始まるところが、私としては泣かせどころじゃないか、など思った。おっちゃん、パトリオットじゃんと。


世界中のどの国も、議長、あなたは米国政府が過去に誤ってあるいは意図的に犯した罪のいくつかに関して繰り返し注意を呼び起こし、いくつもの公聴会で私たちの政府がなした恐ろしいことを問題にしてきましたね、私はそのことを指摘しもしましょう。つまりですね、誤りを犯すという点で日本だけがその他の国々よりも酷いという話じゃないわけではないわけです・・・・

といった具合に、一見すれば自分の国米国を落としているようでいて、しかし、実際問題誰が考えても、どの国にも間違いはあったというのはユニバーサルに真であろうと言って悪いケースはあまりなさそうだ、という問題なわけで、こう語り出すことによってこの議員は、自分だけが絶対に正しいというポジショニングにアメリカを曝すというアホを回避し、なんなら名誉を守ったともいえるだろう。

しかもその上に、このparticularな問題、つまり戦争中の慰安婦という問題に関しては、実際問題、戦争をしたことのあるすべての国のうちで、胸を張って俺たちは素晴らしいといえるケースはまずないだろう。だから、もしここで日本にのみ特別な罰を諾とした場合、その余波は当然あり得る。そしてその余波のうちの1つは、間違いなく、日本とアメリカというより、日本人とアメリカ人の感情的なバトルとなり、それは大きなしこりとなるだろう。そんなことは今現在アメリカで望まれているわけではないのでこれも回避した。

こういうことは、アイデンティティのゆらいでる人にはなかなか出来ないわけで、なんというか、牧歌的なアメリカのパトリオットの賜物みたいな気がした。調子が高くないというのが結構なポイント。その後の、日本は人権に関して今現在ちゃんとしたスタンダードを持ってますよ、にしても、アメリカ人が聞いて、ま、そりゃそうだなと思うコーズをちゃんと踏んでるし。逆に言えば、神学論争的言辞が徹底的に苦手か出来ない人であろうとも見えるが。


(余談ながら、北米という欧州オリジンが多いか、少なくとも言論という表面においては未だに主たるプレーヤーであるところにいて普通によく聞く、あるいは開示される、WWIIに関してげぇと思う問題といえば、まず殆ど他の追随を許さずソ連なわけで、そこをパスして日本が世界一残酷だ、みたいな調子というのは、別にこんなこと比較すべきことでもないが、こういう議案そのものがそれだけで、それそのもので、相当特殊だな、と思える構図だ。

では、なぜソ連ものがこういう話であんまり話題にならないのかといえば、率直にいって、流刑まで含め出したら戦争の話なのかなんなのかわからなくなるかじゃなかろうか。規模が大きすぎて考えるのも嫌だし、今やることはそんなことよりもっとある、みたいな。

つらつら思うに、連合国軍に対して日本の蛮行を、とかいう構図は80年代まではソ連関係者が西側世界に、つまり私たちが普通に接することのできる人の中にあまりいなかったので、あっさり英米仏なんでかオランダその他対日本場合によってはドイツ、ときれいな軸で取れたが、ソ連関係者が出てきてしまってからは、実のところ、かつてのようにオールマイティな語ではなくなったのかもしれない。何をかいわんやチャイナ、だしね。)


ちなみに、wikiによれば、同議員は、不法移民に対する揺ぎ無い反対者らしいし、チャイナの最恵国待遇も気に入らない模様で、気候変動が人間の行動によってもたらされたという考えを信じていないらしい。また、議員になる前は、レーガン大統領のスピーチライターの一人だったそうだ。話してる時にはそれほど派手さも目立つ感じもしないし、むしろ徹底的に、ああ都会でないところにいるアメリカじーーーんみたいな感じがするのだが(髪の毛とかして、服も変えてほしい。どうやってワシントンにいるのか想像できない)、なるほど、スピーチは上手いわけなのね。
http://en.wikipedia.org/wiki/Dana_Rohrabacher


とにもかくにも、発言ありがとうのメールをしようと思う。アメリカの中で誰も発言してくれなかったらそれはやっぱりとても困ったことになっていたはずだもの・・・。もちろん、それは日本人にとってだけでなくアメリカ人にとっても。
欠席裁判みたようなことは厳に好まれない。それこそ今現在のアメリカ人誰に訴えても呼応してくれる岩盤だと私は信じてるし、それこそが良好なsomething about human issuesについての基礎だとも信じている。