カナダ・国連・アフガン・当事者

陽気がいいと陽気になる。とすっかり夏モードから話しているのではなくて冬の中から話しているような視点になってしまう私だが、先週あたり10度近辺を推移していて(ちゃんと温度を確認していなかったが夜間気温はこれを下回っていたんだろうと思う。11月だっけか、今?と語り合ったものだった)、もう容赦はないのだと思い知ったためにすっかり気分は冬モードに突入していた。が、今日はふいに20度ぐらいになって、なんだかとても快適だった。しかし先週の突如冬モードにまけてちょっと風邪気味。


と、陽気もいったりきたりではっきりしないが、アナン氏の次の国連事務総長なるものに南の朝鮮の外相が当確?らしい・・・。


S Korean cements lead in UN race
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/5399756.stm


これってなんて意地悪なの?と思った私は意地悪なんだろうか。しかしなぁ、ここからの任期中北朝鮮がこのまま好調に政権を維持できる可能性はとてつもなく低いだろうと見えるわけで、その動きの中で、方や金さん、方や、因果関係を飲むこむ努力よりも前に、たいていの問題はeither 日本かアメリカが悪いとまず最初に言い出してしまう人々を背中に抱えて、それはそれは大変な「公務」となることでしょう、としか言えない。


ふと考えれば、どうしてそれで出てるの?という気さえする。朝鮮半島はまだ終戦していないことから考えて、あきらかに起こりえる問題その1の当事者だというのに。とりあえず一族の繁栄ぐらいには繋げられるだろうが(阿南さんに指南してもらうとかして)、母国のためには大変なことになりそうな気がする。


2位につけていたインドの人が出ないといっているらしいんだが、これってやっぱり意地悪?

India's Shashi Tharoor, who came second to the South Korean in all the polls, said he would not stand again.

"It is a great honour and a huge responsibility to be secretary-general, and I wish Mr Ban every success in that task," he said.


しかも、その前に誰が見ても国連はすでにその威信みたいなものを低下させているわけで、カナダというある種国連の直轄領みたいなところでさえも、なんかこう、石油ー食糧プログラム以来というか、その前からそうでもあったんだろうが、きっかけとしてはそのへんから、この組織って腐ってるというのが、政府ではなくて人々の間の普通の口調になってしまっている感じだ。少なくとも、そんなことはありません、立派ですという人はいないだろう。他には代わりがないから、とか、ここを下げるとアメリカにやられちゃうから、みたいな理由(これがある種伝統的立場でもあるわけだが)で、一応期待する、というのが表面ではあうにせよ。


で、その国連で、しかしながらカナダの首相はかなり派手な演説をしていた。
カナダはアフガンにずっと兵を出している。そのミッションは、二国間のものでもあり、国連、世界銀行、その他NGOを通じた多国間の支援でもある、というのが公式な言い方。兵の総勢は今のところ2300名ほどと言われている(早晩2500に増員するらしい)。

http://www.canada-afghanistan.gc.ca/background-en.asp


カナダの首相ハーパーは、自身国連での初めての演説となるスピーチで取り上げ、「アフガニスタンにおける国連のミッションは国連の最も大きな特別な、政治的なミッション」であり、カナダにとってもずば抜けて大きくて、最重要の海外での関与となる。国連のミッションはカナダのミッションだ、とかなんとか言った模様。

"The United Nations Assistance Mission in Afghanistan is the UN's single largest special political mission," he said. "It is also, by far, Canada's biggest and most important overseas engagement. So the UN's mission is Canada's mission."


模様と書いているけど、この様子は私も夕方のラジオで聞いていて、なんなのこの高い調子はと驚いたことを記しておく。戦争中かこれはとでもいったような、甲高くて、決意を示すことが重要だといったニュアンスの濃厚な語り口だった。といっても、ハーパーの声がそもそも若くて甲高いので仕方がない部分も若干はある。ぼそぼそしゃべりの方でもないから、普通にやってもこうだったという可能性もなくはない。同じことを安倍ちゃんが言ってもこうはならないと思う。ただ、同じことを安倍ちゃんが言ったら世界中の騒ぎにはなると思うが(笑)。


Beaming Harper puts UN on notice
In his debut speech, PM urges world leaders not to waver in fight against Taliban
http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/
RTGAM.20060922.wxharper22/BNStory/National/home



が、しかし、今日の新聞のあるアンケートによればカナダ人の59%が、カナダ人の兵士は勝てない大儀のために死んでいる、と答えているらしい。が、外務大臣のピーター・マッケイはあんまし気にしていなくて、むしろ、みんなね、私たちはNATOの一員としての役割を果たさないとならないんだよ、と述べている。


MacKay dismisses poll indicating Afghan mission lost cause
http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/
RTGAM.20061002.wmackay02/BNStory/International/


そう。これはカナダが単独でやっているわけではなくて、最初はアメリカ主導でカナダも、だったところが、途中からNATOのミッションになっていたという流れだったと思う。


NATOとカナダ軍についてはこれが公式発表サイト。
http://www.international.gc.ca/foreign_policy/nato/nato_cnd_contribution-en.asp


で、いずれにしても、カナダ@アフガンについてはずっと疑問の声はあがっているわけで、アンケートなどで過半数を大きく上回って支持されたといったことはなかったのじゃないかと思う。多分。しかし疑問が出るたびに、これは大事なミッションなのだとリベラルにせよ保守にせよ政府がほとんど一枚岩で言い張るというのが定番で、それ以上の論争にはなっていないといっていいかと思う。論争にしようという試みなりは見えるんだが、政府も主要メディアも載って来ない、みたいに私には見える。


問題点はいくつもあるわけで、少し前までよく言われていたのは(今もか?)、カナダ人は過去何十年か、ピース・キーピングには賛成してきたし大事なことだと思ってきたが、これはもうキーピングじゃなくてメイキングじゃないのか、つまり戦闘そのものをやって片方の当事者になっちゃったりしてないか?というもの。


さらに付随すれば、そうなってくると軍事物の範疇に深く入り込むわけで、実際に何をやっているかはカナダのパブリックからは見えなくなる。見せろといいたくても、実際に人の生死にかかわることになればなるほど限界がある。作戦に透明性は求められない。民主主義的透明性命のカナダ人が、この手の質問を軍人さんに投げているところをテレビで見ていたことがあるのだが、なんだかなぁと思った。


また、一口にアフガンに人道的な体制を、復興をというけどそれってどこまでできるものなのか、というのがはっきりしないことも問題。で、去年の夏前だからにある大将が十年単位の問題なんだとかなんとか言って人々を驚かせたことがあった。でもこの人は、ドンパチ大好き!とかいう意図で言っているわけではなくて、カナダ人がのんきに構えていることに対して、これは長くて、そして流血の事態があることなんだと釘を刺した、という動きで、言い方を変えれば、軍人の側が、あなたたちが決めたことなんだとわかれよ、と話を戻したとも言える。結果的にはその時も論争になるようならないようなで今日まで来てしまった。


そして、そもそもそんなことできるの、それってアフガンの内戦状態に油を差してるだけじゃないのか、という意見もあるようだしそれ以上のことも考えられるという意見もあるだろう。下の記事は、zmagで拾ったので、colonial warという枠組みから見るというある種の人々にとってのデフォルトの意見と見えないこともないのだが、それにしても、この著者はカナダ人にとってみれば痛いことを言っている。で、これが現代のカナダ人にとってどの程度の重みをもって受け止められるのか、というのが問題、というかそういう具合に問題を展開できる力がカナダに残っているのか否か現在のところ不明だというのがカナダにとっての本当の問題のように私には思える。


曰く、カナダは、植民地主義の戦争における供給センターであり、外交的な支持者であり、そして訓練基地だったが、直接的な軍事参加は避けてきた、と。

Canada was a supply centre, a diplomatic supporter, and a training ground – but it shied away from direct military participation in colonial wars.

Abandoning Hypocrisy
Canada in Afghanistan
by Justin Podur
September 26, 2006

http://www.zmag.org/content/showarticle.cfm?SectionID=49&ItemID=11064


colonial wars を植民地主義の戦争としたのは、20世紀の前半までの戦争のことを言ってるというより、全体的に旧植民地支配者群が引き起こすとされる戦争のことを言っているんだろうと思ったから。


で、実際問題、第二次世界大戦の東アジア戦線における当事者だった日本からしてみたら、まさにカナダは供給地なわけで、独立しているように見えて、イギリスに戦線布告したらもれなく出てきちゃうという、なんか反則みたいな人々ではあったわけだ。日本人の侵略者がバンクーバーを襲うのを恐れてと、まるでなんの理由もなく襲われるようなことを長らく言い習わしている人々を見るにつけ、また、香港ではカナダ人兵士が800人も殺されたなる言辞を聞くにつれ、なんでそんなところまで、何用あって兵隊を出したのですか?と私は聞きたくなる。


答えは、大英帝国だから、しかないわけだし、部分的にはアメリカと同期していたからだろう。しかし、ここがなかなかトリッキーで、むしろ、そうなのだとわかっている人々は自ら主体的に、誰かにとっての敵となったと自覚できるのだが、そうでない人もいる。


これはついさっき、第二次世界大戦中のカナダの様子のアーカイブフィルムのドキュメンタリーの中で耳が拾ったのだが、アジアの宝石であったインドを、日本軍の侵略から守るために云々というのがあった。私が文句をたれる百倍ぐらいの大きさと密度できっとカナダに大量にいるインド人がどこかで、お前もな、と言ってるだろうよと思うと苦笑してしまうのだが、なんにも考えてない人は、このようにして、自分たちが何で戦争に行ったのかわからなくなって、しかし理由は必要なので、第二次世界大戦とは、最初っから最後まで、世界中が悪の化身である日本、またはナチを相手に戦った、という戦争観というより、戦争感みたいなものが出来上がるんだろうなと思ったりもする。そのうちきっと、悪の日本軍からインドを守っていたイギリス人、カナダ人とか言い出す人がいるんじゃないかとさえ思う。多分笑いごとではない。


話はそれたが、カナダというところは存亡の危機の戦争をしたことはない。さらに戦争となったら旧宗主国であるイギリス他の連合軍から褒められた経験が大きい(二つの世界大戦で発言権を獲得したといってもぜんぜん嘘ではない)。だから、といってしまうのは圧倒的多数の人が牧歌的に戦争となったら反対だというある種反射的な拒否感がある土壌ではフェアではないような気もするが、ややもすると、あるいはぼーっとしていると、戦争に行くとはどうあれ敵を作っていくことであって、それは必ず禍根を残すのだということに得心していないというファンデーションでは、目先に見える立派な話に押されてしまう傾向があるように思う。


アメリカだって日本はおろか、イギリスを含むすべてのヨーロッパ諸国およびロシア、またそれらのメジャープレーヤーが騒ぐおかげで迷惑を蒙った世界中の圧倒的多数の人々からすれば、ありとあらゆる戦争を余裕の中でやっている。が、ここはとにかく敵になったという自覚がある分、カナダよりは戦争を知っているとは言える。(最近まで知らなかったかもしれないが)


もちろん、当事者になって憎しみやらわだかまりの連鎖からなかなか抜けられない国ではないところに良さもあるわけで、そこらへんがピースキーピングを売りとする国柄としていい感じだったんだろうとも思う。あまりに戦争なれしている人々は誠意みたいなものをなかなか信じられないから、中立とか公平、話し合いみたいなものへの落ち着いた関与の仕方を要するポジションに不向きなのは、あまりに不幸がしみこんでいる人が仲人になっても困るだろうというのと同じだろう。
(当事者中の当事者をリーダーにという国連はどういうつもりなんだと、やっぱり思う。)

そこで、こういう現状からしてカナダにとってアフガン・ミッションとはどういうものなのよ、と私はとても危惧してしまう。とはいえ、タリバンのままがいいとも思えない。しかし少なくとも、カナダが音頭を取る話なのかという疑問は消えない。