感想戦 数値編

下で、他のカナダは、という質問をいただいたこともあり、今後の議論の足下とするためにも、地域別をちょっと書いておきます。



まず極端な例を1つ。
カルガリーのあるアルバータ州は、全28議席中保守が100%。
得票配分だと、保守65、リベラル15.3%


これがバンクーバーのあるBC州だと、36議席を、
保守  17
リベラル 9
NDP  10


で、トロントのあるオンタリオ州だと、106議席を、
保守  40
リベラル 54
NDP  12


と、それぞれの州によって状況が異なる。


BCを例外として、西は真っ青(保守)、東は真っ赤(リベラル)だというのが一般的なトレンド。そこで、青が、議席数の無茶に多いオンタリオで増えるか否かが勝負の分かれ目だった。結果としては、ある程度青が増えたから、保守が勝ったといってもいいだろう。


しかし、オンタリオはこのある種のブームにもかかわらず思ったよりも保守は勝てなかった。いや、結構勝ったと見るべきか。いやしかし・・・・。なんと、コアの意味でのトロント市は、ただの1議席も保守がいない。


トロント市23議席中、
リベラル  20
NDP  3
しかも、といってはNDPファンに悪いが、選挙前は、22がリベラル、1議席が党首ジャック・レイトンのNDPだった。そこから考えると、トロントダウンタウン市民は、リベラルは駄目だ、では保守だではなく、NDPだとなったわけだ。(個人的な観察の範囲でも大学周辺なんかもう、NDPが政権でも取るって騒ぎなのかという感じはあった。)


州単位ではオンタリオもばらつくが、ちょうど議席数も似たりよったりだからと無理に単位を超えて考えると、アルバータ州トロント市が、青と赤で真っ向からぶつかっていると考えてもいいかもしれない。そうして、実際、ものの考え方(social valuesとかいうそれ)で分けるのなら、この両者が総本山なのかもしれない。なーるほど。


でもって、トロントの状況は、しかしながらここだけではなくて、
モントリオールは17議席中、
リベラル 10
ケベコワ 7


バンクーバー議席中、
リベラル 4
NDP  1


と、一般に大都市とか、いろんな人がいて都会らしい都会だとみなされているところには、保守党議員がいないということになる。


この結果から見ると、今回の選挙のある種の表面の結果は、
ハーパー率いる「保守党」となったところの、しかしながら伝統保守の仮面を付けたネオコン保守が来たぞ、どうするんだ、という争いか、または、
そのネオコンが強いと言われる(そういうことでもないとは思うが、イメージとして)西部諸州の利益代表者が中央という名の実は大きく東に偏ったところに乗り込んだ、「西が来たぞ」(オタワ=首都に)だったところに、もう一つ、

コアに言う都市とそれ以外というのも見ないとな、ではあるかな、でもあるし、ひょっとしたら問題の核心は大学を中心としたパブリケーション動向だったりして?など思わないでもない。で、結局は、具体的にお金をどう使うかというよりも、限りなく「ものの考え方」、いや、ものの言い方に近い、表現されたsocial valuesを巡る総本山バトルが繰り広げられていると考えてみることもできそうな気がする。
(ファクターのその1は、なんといってもトロントで一番じゃなくて、カナダで最も発行部数の多いトロントスターは明らかで強いリベラル支持だ、か)


思想総本山バトルといえば、そういえば、「グローバル時代の宗教とテロリズム」などで知られるマイケル・イグナチエフがトロント西部でリベラルから出馬して勝っていた。トロント・スターによれば「スターの落下傘候補」だそうだったが。


数値にご興味のある方は、Election Canadaでどうぞ。見やすいです。
http://enr.elections.ca/MajorCentres_e.aspx




カナダ保守党政権、政治刷新と対米重視へ
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060125AT2M2402B24012006.html


米政府、カナダ新政権に祝意
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060125AT2M2500C25012006.html