波風はある方がいい。

中国漫遊記10「盧溝橋・抗日記念館にて」


つい最近、軍事評論家佐藤守氏が「盧溝橋・抗日記念館」を訪問した時の様子。展示内容が変化している模様。

事実、今回の展示は、国民党も米国も、みんな仲間?のような扱いになっていて、中国の「敵」、つまり「悪いのは日本一国」に絞ってあるように感じた。

http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/20051207/1133949926#c



終戦から60年ということもあって、戦勝国であることを強調する年だったからではないかとも思うんだが、この「仲間」であることの強調は、チャイナにとってはなんてことはないかもしれないが、西欧社会にとっては必ずしも歓迎、大歓迎とはならないかもよ、という点も興味深い。


なぜなら、英語圏で見る記事あるいは英語圏で生活している非常に多くのひとにとっては、チャイナ戦線とは、ある日唐突に日本軍が狂ったようにチャイナを侵略した、というのがポツンと存在しているようなものだからだ。


もちろん、前にも書いたが、日清戦争からちゃんと知ると、ああ、と別の視点を持つひともいるし、それ以上によく知っているひともいるんだが、それ以外の圧倒的多数は、殊に北米では、ヨーロッパがどれだけ東アジア(アジア全域)にプレゼンスを持っていたか(つか、植民地政策をしていただけだが)について、わかってんだかわかってないのだかよくわからん、あまり示唆しないという点が目立つ。少なくとも、日本との関わりではここは大幅にオミット。たまに、今年も夏あたりにあったが、インド人がアジアの独立について声をあげる、というのはよくあるんだが、しかしそうすると今度はいきなり視点がイギリスに飛んで、イギリスがインドを植民地にしていたというだけで終わってしまって、東南アジアはおろか東アジアに目がいかない。


で、そういう中で、そんなことないじゃないですか、あなたたちヨーロッパ人はずっとチャイナ大陸にいたじゃないですか、同志ですよ、同志、とチャイナが大音響を上げるとしたら、それはそれでとても興味深い。


上で書いたTimeの記事の中に、とりあえずヨーロッパの植民地勢力もとがめを受けてはいるんだけど、フォーカスは日本軍の記憶をとどめることになって、それをするために北京の抗日戦争博物館に生徒たちは連れていかれる、という下りがあった。

Although European colonial powers receive their share of censure, the main goal is keeping memories of Japanese conquest fresh. Thousands of students each day, for instance, take class trips to the Anti-Japanese War Museum in Beijing to view grainy photos of war atrocities ? women raped and disemboweled, corpses of children stacked like cordwood.

http://www.time.com/time/world/article/0,8599



私としては思わず吹き出してしまったのだが、歴史を知っていて、しかも自分がヨーロッパに根があったりする人だったりしたら、すべてが日本軍のせいだというチャイナのストーリーは多分居心地が悪いのだろうと思う。へんだよな・・・と。


結局のところ、大声をあげる人がいると、それをそのまま鵜呑みにする人もいなくはないにせよ、もっとリラックスした人の中には、それって何の話だったかと詳細を見たくなる人もいる。


日本人としては、チャイナ様、言って、もっと言ってという感じか。沈黙の中でこちらの預かり知らぬことが落ち着いてしまうよりはよほどいい。