カナダ野党3党不信任案提出

Conservatives introduce
no-confidence motion
http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20051124.w2vote11241/BNStory/National/

"After 17 months in office, the record of this government, or I should say in many instances its lack of record, has become unacceptable to a large majority of members of the House representing on overwhelming majority of Canadian voters," Mr. Harper said.


"The Liberal party has no desire to change, no intention to change, and no ability to change," he told the Commons.


与党リベラルが率いたこの政権の17か月間は受け入れられないものになりました、と野党保守党ハーパー氏が不信任案を提出、月曜日投票の予定らしい。


ということは、ホリデー・キャンペーンという語が取り交わされているところを見ると、クリスマスだっつーのにキャンペーン(選挙運動)をして、年明け早々ぐらいの投票だろうか。まだ日にちはわからないんだと思うが。というか、そもそも不信任案はまだ可決されてはいない。

しかし、今年の夏前に不信任案を出された時には仲間になっていたNDPが今月になってリベラルとたもとを分かっているので、今回は、だめっしょ。


一連のケベック州におけるリベラルのスキャンダル(「スポンサースキャンダル」という)がどうしても蹴散らせないリベラルはついにここまで来たかという感じか。どうしても蹴散らせないと書いたけど、調査する人を決めてその人に報告書を出してもらって、その結果としてさらに状態は悪くなったような気もする。そもそも前の政権の90年代の話なんだし、ようするにこの名の通り、リベラルがバカかというほど気前よく、あるいはこれでもかというほどいい加減にお金をまき散らしていたという、ある意味でそれだけといえばそれだけのスキャンダルではあるんだが、実際には、もっと深刻でもっと「いやらしい」感じでずっと話題にされている。それはなぜか。それはつまり、この政権そのものと見られているからではなかろうかなど思Α

妙にお金をばらまくんだよな、というその感じ。しかし、お金を使ってる、がんばってるといってはいるものの、それが全然効果的じゃないじゃないか、つまりどっかに流れてないか、流れてるんだよな・・・となる、と。

たとえばヘルスケアシステムの改善を、というとすぐ予算がついて、さあよくなるのかと思えばそういうことはなくて、人々がしばしば言うところでは、たとえば、管理する人だけが増えてる、とか、広告だけ立派になってるとかでおわってると。


今日はUSA Todayにも書かれていたけど、

Last year, Martin's Liberals launched a plan to pump an additional $35 billion over the next decade into the public health system, which costs $22 billion annually.

Despite this commitment, there has been little progress, according to the Wait Times Alliance, a coalition of Canadian physicians. The coalition says the lack of funding has resulted in too few doctors and hospital beds ? the source of the long waits.


お金を入れても全然、医者が足らない、待ち時間が長すぎる、ベッドが足らないという人々が望んでる部分の解決になってない、と。


いったい何年(何十年か)同じことを言っているのかという気もしなくはないんだが(その意味で別にマーチンのせいではない)、近来についていえば、ざっくりいって、大きい政府指向の政府が陥る道をただなぞりました、みたいな感じではなかろうか。


ただ、根本的にはそういう捉え方でいいのだろうけど、私はもう一つ違った視点を持っていている。それは、この件に関していえば、政争にしてしまったこととカナダ人のある種の傾向によって、実際には本当に考えるべき点に到達せずにずっとやっているのではなかろうかという疑義だ。

つまり、ヘルスケアの話が持ち上がると、結局、ないよりマシでしょ、とアメリカの方を見て、そこで、だから保守よりリベラル(または保守以外ならなんでも)、でまず一段落してしまう。この傾向はどうしても根深い。問題は、あるかないかじゃなくて、どうやったら効率的になれるかじゃまいか、とは実際あまり考えられていないのではないかと思うぐらいだ(ほんとにそうだったりして)。


カナダかアメリカか、それ以外に見るべきものがないかのようだ。せいぜい時々フランスあたりを見て世界を見たようになっていると。私としては、カナダのヘルスケア状況から考えたら、日本なんてものすごく上手く言ってると思うが、日本を見てみましょうなどとは考えたこともないだろうと思う(いや、日本を見ろってことが主意なんじゃないよ。せめていろいろみて検討したらどうなのかな、と思うのよ)。


また、この傾向を促進してしまうもう一つの事情もある。それは、なんせトロントの人口の半分はトロント以外で生まれた人間だと言われているところ。で、非常に多くの場合、人々は比較的貧しい地帯から来ている。すると、彼らにとっては、トロントで受けているものが、彼らの人生で最も効率がよくて最も素晴らしいものになりがち。これはヘルスケアに限らず、ほとんどあらゆる社会的インフラの問題についていえる。


この人たちは、だから、よほど頭を働かせていないと、自分の体験値から、効率的であるシステムの問題なのだ、とは考えることができない。で、すーっと、あるかなしかの政争の道具になっていく。あってうれしいヘルスケア=リベラル万歳と。


また、たとえで、プライベートか否かという問題ではなくて、保険のシステムにしたらどうかとか、個人の負担分を作ればいいのじゃないのかと、そんなことを言おうものなら、火がついたみたいに「そんなことしたらお金持ちしか医者にかかれない世の中になるんだ」と怒られたことがある日本人は私だけではない。なんでそこまで話が飛ぶんだ、と思った時にはすでに遅いぐらいの素早い反応は体験してみて初めてわかる恐ろしさでもあるし、考えるという行為を挟む余地がないことから、これって刷り込みなんだなとただそう思う。でもって、そうそう、一部だが、社会主義圏から人たちの、民間開業医、民間の病院という存在に対する根拠のない不信感には驚かされるものがある。というか、会社とは人をだますものだとさえ思っているのではないのかとさえ思いたくなる人も、マジでいる。ビジネスをする、何をやってもいい、所詮ごまかしだ、みたいな。


で、アメリカとの対比で勝ってると思うと終わりになってしまう人と、カナダ万歳の人を足したら、より効率的な仕組みとはどんなものなのかへの真摯な構えが主流になることはないのじゃまいかと考えて悪い理由はないだろう。


ヘルスケアがこの先どんどん、やたらめったら民営化という線になっていったとしたら(可能性はある。ここの保守はそういう保守、社会学的考察が嫌いな保守だから)、それは別に保守党のせいだけではなくて、これを政争にしないで討議できなかったことに問題があったと考えなければならないんじゃまいかと、ま、外人たる私はそう思う。


そういうわけで、カナダドルの勢いはすさまじく、資源という意味での心配のない今日うらやましい限りの国なのだが、それだけで上手くいくというもんでもないのが大変だ。さらにいえば、GM不調のあおりを受けてアメリカ系自動車会社が雇用をカットしているので、オンタリオ州はおおわらわ。自動車は関連産業の多いところだという点と、特定の地域で特定の産業に依存しているという形態が見られるので(つまり町ごと不況になって他に手がない)、今後これは大きな問題になるでしょう。

しかも、数値的には悪くないからなのか州政府(これもリベラル)は、俺たちの将来は明るいと言ったまま・・・。多分これはリベラルの選挙にとっては全くの逆風となるでしょう。保守が敵失を拾えるのかもまた問題だが(ここの保守に欠けているのは選挙対策だとは私の持論。どうしようもなく言辞が揃わない)。
なんにでもリスクはある、と。