「North and South」

本日の夜間気温、すでにマイナス6度。もう来たかぁみたいな感じ。

さて今日は楽しみにしていたテレビを見てまだ興奮している。
「North and South」という、昨年イギリスBBCで当たりを取ったテレビ番組。1年遅れてオンタリオ州の局でやっている。4話完結で今日が3回目。あと1回で終わりかと思ったら残念で残念で今から再来週が恐いほど。かくなる上は、DVDを買って永遠に楽しめるようにしようと考えていたけど、それだけではなくこれは本も読みたいと思うようになったのでこっちも慣行しよう。

これがBBCのオリジナルの番組サイト。
http://www.bbc.co.uk/drama/northandsouth/


ものすごく面白い。どういう見方をしても面白い。産業社会勃興期(というより、完成期に近いか)の社会情勢として見てもいいし、もちろんラブストーリーではある。イギリス人ってラブストーリー好きだよなぁとしみじみ思う。というか、他のことはさておいても感情というのは強いものなのだというある種のあきらめみたいなのが早くから定見になっていて、それをどうマネージするのか、あるいはしないのか、が人生だ、みたいな太い骨が早くから社会内にあるということかもしれない。で、普通はその一面であるところの、冷静だというところがよくウォッチされているわけだけど、それは、死んだように静かなのではなくて(ある種仏教的な静寂なのではなくて)、そうコントロールするだけの意志の現れとして冷静であることが重んじられる、と。逆を返せば感情レベル(へんな言い方だが)が結構高いということなんだろうなと思う。だからわりかし簡単に恋に落ちたり結婚したり離婚したりする、と。


と、それはおいておいて他のアプローチをしたくなる本なのは、この話が19世紀のイギリスが産業社会に変化していく時を捉えているからではないかと私なりにはそう思う。変化していくといってもいくつもタイミングはあるわけだけど、産業革命インパクトというのじゃなくて、19世紀の真ん中といえば大陸では有名人たるマルクスがきっと元気に活動してたんだろうな、なわけだから、もう既にそういう近代産業主義または近代資本主義のが社会にフィットしていく頃。ざっけていえば、そうやって食ってくしかないんだよな、という人々が道ばたにあふれている情景。


そういうわけで、当然のように、雇用者と被雇用者の間の、社会的差異または金銭的差異がありありに見える。そこでこの本の原作者は何を見ているか。


日本のアマゾンを見たら、Elizabeth Gaskellの邦訳は、それほど多くはないものらしい(私もほぼ知らないからえらそうなことは言えない)。「North and South」はないみたいだ。シャーロッテ・ブロンデの伝記を、ブロンデのお父さんに頼まれて書いたという経緯があるのでそれが邦訳されていた。ブロンデは知られている人だからそうなるんでしょうね。


で、そこで、邦訳のあるものをちらちらみていたら、下のようなことを書かれている方があった。どなたなのか知らず、さらにはTBするわけにもいかないのに引用して申し訳ないですが御借りします。


ギャスケル短篇集????岩波文庫
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4003226623/qid=1132718938/sr=1-1/ref=sr_1_2_1/249-7725627-5447541

貧しく才能に境遇に恵まれない人々に救いの手を差し伸べている、基督教的な短編集である。現代の貧富の格差が拡大しつつある時代に、本書をよむとほっとする。ギャスキルの小説が評価が高まりつつあるのは世知辛い時代のせいかもしれない。


これだけ読むと、そういう系統の作家なのか、という感じで、実際聖職者の娘で聖職者と結婚した人らしいから、貧しい境遇にある人への思いやりの多い人でもあったろうし、それを天命としているんだろうなという感じは、North and South(以下NS)でも見て取れる。


が、しかし、救いの手を述べる人の話だけでないのがこの人の真骨頂なんだろうなと、とりあえずNSからはそう思う。つまり、どうあれそこに社会があってそれが変化していく、産業、テクノロジーが進歩していく、ある種もてはやされるそのこと自体を詛ったり、恨んだりもしていなそうだということ。そして、産業化の担い手、というか、投資家、雇用を生み出す人の側を憎んでいるというわけでもなく、しかしながらそこに淡々と、たとえば社会って機械のようなもの、役割よ、みたいな突き放した視線もない。葛藤しつつ、投資家、起業家の中のモラルも見てるし、その役割が重要なこともよく見てる。同時に、「恵まれない」環境にある人々の気の毒さも十分に知りながら彼らの弱さも普通によく見てる。ドラマには終わりがあるが社会状況についての決定打はない。少なくともNSはそうだ。


そして、だからこそ、今でも見応えがあるのだろうと思う。ラブドラマだけで人気が出たのではないだろうし、上の方には申し訳ないが、そういう「ほっとする」話の書き手ではないのではないか?と思ったりする。作家も時期によるからなんともいえないけど。
でも、岩波から出てるからそういうの集めてたりして、などとも思うが。あはは。