ヴォネガットがいるアメリカ


カート・ヴォネガットの最新エッセイ集が米国で発売
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2005/09/post_e21f.html


ヴォネガットのエッセイが出るということをきっかけに、氏がこの間Daily Showに出ていた。あまりにも面白くて書こうと思っていたのだが時期を逸してしまった。これがこの、暗いニュースリンクさんとかが訴えたいトーンとは全然違っているもので、どう書いたらいいんだろうかなと思案していて忘れたというのもある。

ひとことで言って、氏は無論ブッシュ政権を非難している側ではあるのだが、それはそうとして、リベラルもいい加減にしろよ、というものだった。Liebaral Crap(リベラル「くそ」とでもいうのか。あるいはリベラル、意味ねーぜ、おい、とか)というリベラルに捧げる詩まで作ってきた。


いやしかし思い出しても、なんといっていいかわからないヴォネガットだった。いや、ものすごくいい、むしろほのぼのと、いやあははと笑う瞬間だったと私は思うのだが、文字面を追う人であれば、あるいは、語られた事の意味をもしとても狭く取るのなら、いや、どう広くとってもかもしれない、とにかく、普通に考えて、いや取りようによって、ええ、なんでもいいやとにかく不穏当な発言もした。


この番組のホストは、ジョン・スチュワート。とてもリベラルな白人。ハンサム。この組み合わせでそのうえとても良い人、心が優しいわというケースもあるのだが、とんがってるという組み合わせもある。後者の場合いやになるほどリベラルというそれになる。スチュワートもその系統ではある。でも、憎いキャラとは一般的には言われていない(と思う)のは、誠実は誠実だからではなかろうかとは私の観察。

つまり、あくまで私の言い方だが、この人はリベラルであるよりありようがないリベラルなのだろうと思う。地球上のどこでもないアメリカ産リベラル。空気を吸うようにアメリカ産リベラルなわけだから別に厭味になりようもない、というわけで、わざとらしかったり、自分を守ろうとしてリベラルになっているとかとかそういうものでもないからこれでいいんだな、この人、なのだろうと思う。個人的にはストライクでかなり好きかも。いや、もちろん、何事によらず受け手の許容範囲という問題もあるわけで、私はこの人は全然OKなのだが、人によっては、好きになれない人もいる。なんだこの、みたいな感じで、つまり鼻につくといった感じで語る人もいる。


と、長々とくだんないことを書いているが、いやそうじゃなくて、ヴォネガット。記憶でだらだら書くが5分間ぐらいのざらざらっとした会話はこんな。


この日のテーマは進化論について(もちろんコメディ番組なので鋭いがおふざけ)だったので、ボネガットもそこからはじまる。何か聖なる力みたいなのが働いてコントロールしてるとしか思えないのよね云々と緩い出だし(しかし話はすでにはじまっていたのだが)。そこで、スチュワートが、あなたはいつも人間を讃え、でもがっかりもしてますね、とふる。すると、そうなんだよ、人間は酷い動物だよ、WWI、WWII、ホロコースト、長崎って、ろくなことしてない、地球の免疫系がはじき出してるんんだよ、そうすべきだし、と笑いになって、ハリケーンとブッシュにちょっと話が及んでさらに笑い、あれは酷いとブッシュに話が流れた。


ヴォネガットは語り出す。でもね、彼は私たちの政府の中で最もダメダメってわけじゃないんだよ、最もダメダメなのは国務長官(ここで弌法He is so dumbとまで言う。あはは。彼は2億7千万の国民とムスリム、それから石油を、20万の兵隊でなんとかできると考えた。兵隊たちはアラビア語で「こんにちは」ってなんていうのもわからず行ってる兵隊なんだよ。でもってそれで私らはデモクラシーをもたらしてることになってる(スチュワート、守ってるんですよ、と冗談をかます)で、そのデモクラシー、私は私たちが経験から学んだことをイラクの佑燭舛砲△欧燭い隼廚Α100年たったら奴隷もあきらめないとなんないし、150年たったら女性に選挙権もやらないとならなくて、デモクラシーの初期にはけっこうなジェノサイドやらエスニッククレンジングも全然OK(そういうこった、といった終わり方)。


スローテンポで、そして静かなのに圧倒的なものがある彼に、誰もとっさにどうしていいかわからない。

誰も、ってまず、テレビの前の私だが、疑いもなくスチュワートもそうなわけで、あの、ボネガットさん、申し上げてよろしければ私にとってはあなたが逝っちゃったみたいに見えるのがとても悲しいです、と言う。


ここからスチュワートはヴォネガットの本でヒューマニティをどうしたこうしたと言い出すのだが、ヴォネガットは聞いてない。要するに自分の方向性を持ってここに来ていた模様で、2、3語交わして、この番組時間がないでしょ、だから紙を持ってきたといって広げ出す。そもそも、冒頭で、この時を待ってました、といったのはこういうことだったのか。


書いてあったのは、

LIBERAL CRAP I NEVER WANT TO HEAR AGAIN

Give us this day our daily bread. Oh sure.
Forgive us our trespasses as we forgive those wh trespass against us.
Nobody better trespass against me. I'll tell you that.
Blessed are the meek.
Blessed are the merciful. You mean we can't use torture?
Blessed are the peacemakers. Jane Fonda?
Love your enemies - Arabs?
Ye cannot serve God and Mammon. The hell I can't! Look at the Reverand Pat Robertson. And He is as happy as a pig in s**t.

なんつうっていいのかわからんけど、リベラル「だめだめ」、りべらる「くそ」でしょうか。あるいは、リベラル役立たずとか、無意味とか、ばかたれ等など。で、俺がもう聞きたくないリベラル「くそ」、という詩(?)でしょうか。聖書をかましているから誰でもざっと聞いて構成が頭に浮かぶいう代物だったのも作戦か。


スチュワートは、その文章をこの番組のサイに貼ると約束したので貼ってあったのだが(先週みてコピーをしておいた、私)、今みたらもうないみたいだ。とりあえずサイトはここ。
http://www.comedycentral.com/shows/the_daily_show/index.jhtml



こういう特別な人、得難い人の発言を解説するぐらいダサイものはないのだが、人間ってほらダメダメだから(だから変化する)、みたいなことを、言いたいのではなくて示唆してくれたってことなのだろうなと思う。

リベラル、もういい加減にして、なんであんただけなんでも正しいのぉおおお、みたいな草の根的人々(右でも左でも真ん中でも)には好評であっただろうが、リベラルな人々はコメントしない、みたいな感じか(ネット上をざっと見る限り)。でもそれでも、ヴォネガット氏、エスニッククレンジング容認か、私は許せない、みたいに部分の言葉に発狂している人もいないようにみえるのは幸いかな、という感じか。


ヴォネガットのいるアメリカっていい。


ヴォネガットの公式サイト
http://www.vonnegut.com/news.asp


この方(誰だか知りませんが)がことの成り行きを書いているのでご参考までに。
http://rubyrocks.blogster.com/blogApp/?u=rubyrocks&


この方は、一部分ラフに英語を書き起こしている。14日付けのところ。
http://www.angryflower.com/


こっちの人は、Daily Showからのビデオをダウンロードして画質落としてアップしてる。これは便利。
http://www.crooksandliars.com/2005/09/14.html