Pewリサーチ「Views on China」について


Pewリサーチの件で、先週トラックバックされていた。

Cf. id:Soreda:20050628#1119927143
中共 フォビアにとってはなかなか受け入れがたい調査結果。(注)

http://d.hatena.ne.jp/gachapinfan/20050702

と、名指しされていたので、答えておこうと思う。


gachapinfan氏が何をクレームしているかといえば、fenestraeさんがPewリサーチについて書かれていたエントリーの一部分。

Views of China と題された グラフ (右)ををみると、「 中国 の経済 発展が自国にとってよい影響を与えるか」という質問には、 総体 的にだいたいの国が50%ラインの前後にいるが、「その 軍事力 が米と 競争 することはよいことか」という質問に対して、米・欧諸国が概ね否定的(もっとも好意的な フランス で27%、 ドイツ では11%が イエス )であるのに対し、 アジア ・中近東諸国では約半分から7割以上の人が イエス と答えている。 日本人 が頭にいれておくべき 国際世論 の与件だろう。

http://d.hatena.ne.jp/fenestrae/20050629#PewReport



これから、gachapinfan氏が何を私に読め、と言っているのかは定かではないのだが、中共フォビアには受け入れがたいだろう、というからには、「中共の軍事力の米との均衡はこんなにアジア、中東諸国で受け入れられているぞ」、ということを読め、ということなのかと考える。[追記:ここらへんはマジで読まないよーにお願いします。コメント欄参照ください]


さてしかし、このデータはそう読み得るものなんだろうか? それを検証してみる。


断っておくが、fenestraeさんが、ここにそれほど焦点をおいて書かれているかどうかは私にはよくわからないので氏の書き方が悪いというつもりはあまりありません。成り行きで引用させてもらってますが、事情をご理解いただければ幸いです。


該当の調査部分はここ。
http://pewglobal.org/reports/display.php?PageID=805

「View of China」というグラフ。

ここで、「「その(チャイナの)軍事力が米と競争することはよいことか」という質問に対して」「約半分から7割以上の人がイエス と答えている」アジア・中近東諸国というのはどこか。


それは、この調査がそこしかやってないからこの中でそこは「アジア・中近東諸国」になるわけだが、それは、

(T-1)


トルコ 56
パキスタン 77
インドネシア 60
レバノン 43
ヨルダン 77



トルコのケースは、すべてのトルコ関係調査がそうであるように(笑)、なんでなのか私にはよくわからん。が、他は、今現在の世論でいえば、だいたい「反米」基調の国なのじゃないんだろうか、と察しが付くわけだが、ではこれらの国々を含めたアメリカへの好印象度の項目を見てみよう。

http://pewglobal.org/reports/display.php?PageID=800

対米好感度、とでもいうべきリサーチの結果は、

(T-2)

カナダ 59
イギリス 55


オランダ 45
フランス 43
ドイツ 41
スペイン 41


ロシア 52
ポーランド 62


インドネシア 38
トルコ 23
パキスタン 23

レバノン 42
ヨルダン 21

インド 71
中国 42


という具合で、このデータをどう表現するかはそれぞれいろんな理由がつくだろうが、私がするなら、今現在別のリーグなり対米フォースを考えているところは、気持ちが半々なんだな、と冗談のようなことを言ってみたい。


で、その中で、問題の「アジア、中近東」は他地域に比べて、レバノン以外顕著に対米好感度が低い。


ま、インド&USが仲良しになればパキスタンは引くというよく知られた関係線もあるわけだし、テロリストという語を媒介に(この因果関係を認めるわけではない)米国とイスラム圏が穏やかなわけもない。


だから、これらの反米感情まっさかりの国々が、チャイナのぼっ興は結構だと答えていると読むことは妥当な話かと思う。


さてこれは、「中共の軍事力の米との均衡はこんなにアジア、中東諸国で受け入れられているぞ」と読むべき、あるいは読むことの可能なデータなんだろうか? ま、当然中共本体とそのファンはそうだと言い張るだろうが。


また、これってそれほどのほほんと見ていられるデータなんだろうか?とも見えるんだがそれは別儀としておくが、いやしかし、パキスタン北朝鮮の核を考えてみるまでもなく、何かもっと別のものが示されているような気もする。


そういうわけで、このデータを持って、「中共フォビア思い知ったか」を論じることには無理があると私は判断する。



今日の本筋とは関係ないが、
私がこの「Views on China」で、ほーと思ったのは、
http://pewglobal.org/reports/display.php?PageID=805


カナダ、イギリス、ヨーロッパ諸国の、「「その(チャイナの)軍事力が米と競争することはよいことか」への回答が、私が考えていたよりもずっと低かったことか。これでチャイナに武器を売ろうとしていたフランス、ドイツの首脳は何を考えているんだろう? だ。考えていたよりも、なのは、武器売りをしよーってぐらいだから、「反米」返しとしての「親チャイナ」がもう少しあるかも?と思っていたから。


この調査結果にある程度の信を置くのなら、このへんの西欧、東欧+コモンウェルス諸国の国民は、反米だからといってチャイナに強くなってほしいなどとはあまり考えていないという意味でリアルではあるよな、という点こそ興味深いかと思う。

そしてそれはまた私がカナダにいて想定するのと合っているとも加えておく(いらない人は無視してね)。この割り切れなさこそ真骨頂みたない(笑)。


ちなみにこれらの国々の数字は、上の(T-1)と同じ調査。

(T-3)

カナダ 21
イギリス 20


オランダ 24
フ薀鵐 27
ドイツ 11
スペイン 14


ロシア 18
ポーランド 8


と、上の(T-1)との違いがものすごく大きい。

この差異が大きすぎるということこそ国際情勢にとってもっとも見逃せないもののような気がする。