メディア戦線異状なし

一応外回りの記録と感想。


AP伝が出しているこの記事があちこちで使われているようだ。


Thursday, March 17, 2005 ÅE Last updated 6:37 p.m. PT

South Korea slams Japan in island dispute

By BURT HERMAN
ASSOCIATED PRESS WRITER

http://seattlepi.nwsource.com/national/apasia_story.asp?category=1104&slug=Disputed%20Islands



South Korea、南朝鮮が、島の問題で日本を糾弾している、と。で、この見出しがあらわしている通り、ほぼどれも南朝鮮のクレーム、つまり苦情を比較的そのまま書いている。

そして、プロテスターがあっちでもこっちでもデモをしていて、旗を焼いたり、指をきったり、でもって、最後には、日本の外務省にハッカー攻撃をかけたのではないかという疑いもある、と。


韓国の大臣Chung Dong-yongは、竹島の日を作った日本の行動を、1910-45まで日本が朝鮮半島を占領したことを正当化しようとしていると言った、という下りもあるし、この記事にはその大臣の顔写真がついている。結構冷静な顔の写真。


どういうロジックなんだ?と私なんかは思うが、それについての詳細はなし。


ついでに、
「論争は北朝鮮国営放送のニュースの中で繰り返し言及されており、それは反日のレトリックと、アメリカへのいつもの酷評であふれていた」


ってな一文があったりする・・・。


しばらく遅れて、今度は日本の文部大臣の発言を主体に日本側の対応の記事が出ている。ボロボロになった関係を修復しようとしている、と。


Japan Seeks to Repair Frayed Ties with South Korea
By Linda Sieg †|† March 18, 2005
http://www.boston.com/news/world/asia/articles/2005/03/18/japan_seeks_to_repair_frayed_ties_with_south_korea/


こっちはロイター。


全般的な情勢としては、メディアにあふれる記事をgoogleしたところでは、コリア系と、チャイナ系が大量にあって、おおごとだぁ、に見えるし、大騒ぎに対して日本がひたすら防戦していると見える。だから、あるいはこれらの記事を読んだ日本人の人は、韓国よりだ、と見るかもしれない。しかし、どうかな、私は結構それにはネガティブ。記事そのもので評価すればそうだとしても、判断は主に読み手によるだろうと思う。


・・・じゃないのかなぁと思う。日本にとっては、このままともあれしばらく、冷静な判断をしていった方がいいと夕べ書いた見解を引き続きホールドするし、対策としては、この論争の主要な点にフォーカスをあわせておくことは賢明だろう。つまり、島の問題をちゃんと焦点にすえる。


コリア、チャイナ勢の戦略としては、主眼点を、日本は悪い、日本の軍国主義がもたらしたものが今でも未解決なのだというロジックで、いつもの感じ、彼等にとっての一連の問題の続き、にしたいのだろう。それが基調トーンになれば個別の法的、歴史的な効力はともかく、メディア戦は勝利だからだ。そしてこれまでのところでは日本政府はそれにこられると、なんとなく、なんに誤ってんだかわからないような調子で、ちょっとすみません状態になる、と。しかしこれは相手にとっての言質になる。日本政府が気をつけるべきはこの「ついで」をしないことであることはいうまでもない。(どういう意味からもよくない)


とはいえ、実のところこのロジックを使用した場合にマイナスの印象を残すのはチャイナ、コリア勢だってのが私の率直な感想。ニューヨーク・タイムスなんかはこういう展開が大好きで、イラクでの戦争の時には、墓穴を掘ってたこともそういえばあったけど、まぁ一般人の考えとしては、まず60年前の植民地の話を持ち出して、だからなんでも日本が悪い、ってのは全然説得力がない。メディアがどれだけ誘導しても限界ってあると思う。強制的な統制でもしない限り。


理由はまず第一に、北米で暮らせばわかるけど、世の中、山のように昔植民地でした、ってな地域から来ている人が存在するわけで、そこでコリアだけが特別というのはあまり説得力がない。
そのうえ、その植民地時代のために今も非常に貧しいとかいうのなら話もわかるというようなものだが南のコリアはもうそうではないし、自分たちを先進国だと考えている言動が目につく。補則的には日本のコピーっぽいことを大量にやっていることも案外知られている。特に他のアジア人がよく知っている。


第二に、日本といえば軍国主義、野蛮な帝国主義というステートメントを是としたとしても、それはともあれ昔のことでしょ、と一般には考えられている。私自身の体験としても、なにかの拍子に、日本は軍国主義だ、侵略的だ(以下任意に想像して)とあるコリアンが発言したらカナダ人に、「だけどさ、チャイナが軍備を増強していることはどう考えるの?」「今の話なんだよ、今」と正面から問われたり、同様の発言に対して、「だけどさ、あんた、さっき徴兵制度は大変でさっていってたぐらいで、徴兵制度持ってんでしょ? なんで日本の軍備はいけないわけ?」とつっこまれて困惑する・・・などなどということが結構ある。


そういう状況下にあっては、すべてのことは日本の占領ないしは植民地が悪い、というステートメントが効力を持つ場合はとても限定される。アイデンティティとか、心理的な要素とか云々。


そのうえで、上にもちらりと出たように、この情勢からすれば南は北と同じという印象を残しかねないわけで、実際そうかどうかはいろいろあるとしても、また、同じ民族だからそうしたいというのと、だからといって今北朝鮮を全面的にかばいだてできるのか?という問いは別であろうに、ってことは、つまるところ、南のコリアは、ただひたすら、自前のコリア系の英字の記事で、自分たちがどれだけ理性的でなく、ハッカー行動にまで出てしまう人々で、その上レトリックが北と同じだと宣伝しているということになる。


私が再々、これって仕掛けられていないのか?と言うわけは、こんなことを真面目にやる人たちがいるのかと思うからだが、昨日kagamiさんにお返事を書きながら、よしんばここに策略があるとして、ともあれいるってのも本当のことなのだなと自らにも釘をさしたところ。


ま、この件に関しては「外国の反応」ってのが紹介されないようだけど、国内の反日家諸氏は引き続きこの線、つまり「結局日本が悪かったからだ」でいくことになるだろう。しかし、これに対して正面線を挑みこめば、上に書いた通り、争点がぼけていく。とはいえ、今の状況では国内ではもうできそうもないから、問題は、私は、とてもまじめに敏感に正面から南のコリアの行動に怒りをもやしてしまうことが、ちょっと危険になる可能性を指摘したい。というか昨夜に続き書いている理由はそこ。


それはいたずらに、我が身に憎悪を埋め込むだけで、この冷静さを失った日本ってのを待ってる人たちが少なからずいるんだろうなぁとは私は考えるし、その結果は、自分にとっては律儀で正当な怒りの表明であるとしても、結果は、その地域へのこれ以上の政治的な関与を引き起こすし、だとしたらそれはまたさらなる何十年か到底ハンドルし得ない案件をかかえることになるからだ。意図と結果は乖離するものだ。