ベニヤ板のお城と群衆

法王さま、具合が悪いらしい。

Pope hospitalized with breathing difficulties
http://www.cbc.ca/story/world/national/2005/02/01/pope050201.html


念のためだよ、大事を取ってだよ、ということらしいが、風邪ひいて病院に入院した模様。


法王さまといえば思い出す。3年前の夏にトロントに来た。すごかった。80万人だかの人が集まって、トロントダウンタウンカトリックの信者さん(含む当然やじうま、含む私(^.^;;だが)が繰り出して、街が乗っ取られたかのようだった。別に私はこの人に悪い感情はないんだが、そういうことじゃなくて、同じものを信じている、ある意味で誰かが号令一下何かを言ったら途端に「そうだぁ〜!」と言い兼ねない人々が大挙して集まるというのは、その頂点が誰であろうとその思想が何であろうと、善意であろうと悪意であろうと、恐ろしいのだなとしみじみ思った。

そう、デモと同じ。デモをなぜするかといえばこの「群衆」がそれ自体として威圧的だからなのだろうなぁとしみじみわかった。


そんなことはともかく、ここ数日忙しかったのだが、その合間をぬってというかそこからの逃避のように友人に電話して長電話、短電話多数状態だった。北米にすむ日本人が多かったのだが、その中で当然のように、この2週間のキャッチアップJapanコーナーがあって(by私)、今回はなんつっても朝日新聞


私としては驚くことに、ニュースのヘッドラインだけをネットで見ている日本人はこのたびの朝日新聞誤報大会というか、朝日の朝日たる由縁が見えてしまったんですけど問題にまったく気付いていない模様。確かに、何か「こと」が起きたわけではないので、追いにくいのだろう。


で、手短かに述べたが、一様に驚いていた。ただ、理由なしで「私たちの取材は正しい」的姿勢を崩さないというのは、まったくありがちなだけに、まぁずっとそうだったけど誰も脇にまわって見て、あれ、ベニヤ板だったんですかこのお城みたいなことを言った人がいなかった、きっかけがなかったというだけの話かもしれないわな、というところで一つ落ち着く。


しかし、その大もとになった女性、慰安婦、戦犯、裁判問題については、私の方が驚くリアクションをしてくれた私の友人たち。ま、従軍というか、追軍というかの慰安婦問題がこのごろはsex slave systemみたいな、なんかものすごい語が英語圏を中心にまわっていて、それが「性奴隷制度」だかなんだかというこなれない日本語になって出回ってるってのにまず言葉を失い、結論として彼等彼女らによればこれはシステムだった、システムであるからには偶発性なんかないわけで、とどのつまりはその頂点たる天皇に責任があるって話になるらしいよ、といったら、「はぁ?」になっていた。


活字になっているのを追ってしまうと、ネタが所与になってうっかりしてしまうが、この話は日常性からものすごく遠い。天皇、それももう死んでしまったあのおじいさんの責任を問うて今何がどうだってのぉ? なのだ。死人を持ち出している点でとても特異的な正邪論争だとも言えるな。で、それをNHKがともあれ番組にしたという点で、むしろNHKがどうかしている、断固そうだというのが、はからずも私たちの結論みたいな感じになってしまった。みんな結構NHK&朝日育ちのいわゆる学業優秀の「いい子」だったと思うんだがな、子供の頃。で、今となっては朝日問題なんかもうどうでもいいようだ。


あと、sex slave systemが、いかにも翻訳くさい「性奴隷制度」という語で語られてるってのが、考えてみれば、日本の中になかった「システム」だったんだよなとも言えるなとも気づいた。特異な、特殊な語彙が人口に膾炙していないってことは、人々にとってそれはそこにあったものは、女を買うという行為、女を売るという、善悪抜きにいえば、ありふれた話だったということなのだろう。


で、『レイプ・オブ・ナンキン』ってタイトルは、しみじみ思うがマーケティングの成果だなぁ。つまりこれだと、レイプに焦点が合うから、戦時中なんだ、っていう点と、食えない奴、食えない女がいっぱいいたのだという点が遠くへ押しやられる。うまい。実に。どこなんだ代理店はといいたいぐらいうまい。


戦争を開始した政治的な問題を若干置いて、vast majority、大多数の大衆にとってそれは、食えないから兵隊に行くし満州に行き、一方で少女の身売り話があった時代だったろうし、食えないからこそ、あるいは不満いっぱいだたからこそ『ジョイ・ラック・クラブ』のおばあさんたちは、上海とか南京とかあたりから、チャイナを捨ててサンフランシスコに渡って、だからこそ、主人公は現在チャイニーズ・アメリカンなのだろう。


『レイプ・オブ・ナンキン』から習う世界史ではそこらへんの見通しがまったく忘れられる。ま、だから燃料になるんだろうが。ま、是非ソ連兵問題などにも取り組んでもらいたかったな、アイリス・チャンには。


それはともかく、
この1か月の、朝日新聞ベニヤ板の城宣言のまとめとしてはgoriさんのこれが手っ取り早いかなと思う。
これをすすめよう。わかりやすい。


朝日新聞がデッチ上げた「第二次NHK番組改変問題」まとめ
http://www.wafu.ne.jp/~gori/diary3/000445.html