やる気があればできる国際協調


冒頭で書いた、私がそう来たか北米の露出、と思ったそのニュースに対しての翌朝の朝日新聞社説。25日付け。


■拉致再調査??圧力は国際協調で
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

本社世論調査でも、経済制裁への賛成が63%で反対は25%だ。北朝鮮の不誠実な姿勢に、いても立ってもいられない被害者家族に対する共感でもあろう。


ってことで社説がある、と勿論言えるんだが、流れ的には、結局のところメジャー・フォースであるアメリカの出方が「圧力」をかける方向に出ていることを朝日も無視できないのだろうなと考えても悪くはないだろう。


でもって、これからは国際的な圧力が重要になってくる。だけどその中で日本の立場に支持を得るのは大変だ、大変だが、

だが、たとえば疲弊した北朝鮮経済を支える中国を、拉致問題で影響力を行使するよう、首相みずからが説得する。米国にもそのための協力を求める。それらはやる気があればできるはずだ。


やる気があればできるはずだ、っていう文はなかなかこう、リアル社会でもこの頃あんまらい言われない、このなんというかこう、無責任語の筆頭のような気もするけど、そう言うのかぁと結構口あんぐり。やる気があればできるはずだ、という時、この文は誰に向けられているのだろうか?というのも疑問ではある。日本政府ってことなのかな。また、この妙な切れ切れの文も気になる。動詞の意味が確定できない。ちょっと、このパラグラフの意味を整理してみる。


「たとえば疲弊した北朝鮮経済を支える中国が拉致問題で影響力を行使するよう首相自らが説得することが求められる。その際には米国の協力を取り付けることも欠かせないだろう。厳しい仕事だがやり遂げなければならない。」


こんな感じか。で、こうやってみてわかるのは、中国に頑張ってもらうからアメリカにもそれに協力しろって日本が言えってこと・・・がさり気に示唆されてるのかしらね。で、しかし、中国とアメリカの調整をするは大変そうだぞ、と思ったりもする。


で、最後が、

北朝鮮という非人道的な体制をいかに変えていくか。「拉致も核もミサイルも」という日本の立場を貫くには、国際的な態勢のなかで事を進めるしかない。


体制を変更することはいつの間にか「是」で、すでに与件らしいのね。韓国は迷っている様子がずっとあるわけだが(彼らの大統領はそれさえイヤみたいな感じをずっと表明しているし)。

「拉致も核もミサイルも」は、拉致事件は解決し、北朝鮮核兵器は排除され、ミサイル開発または「誤射」騒ぎのようなことはもっての他だ、ってことだ。で、これって、「日本の立場を貫くには、国際的な態勢のなかで事を進めるしかない」というほどの事か???


拉致事件はすみやかに解決されるべきに決まってるし、核兵器は偽善に満ちた言い方ではNPTの体制があるのだし、そもそも明らかな「脅し」で誤爆の可能性を持ったところからそれを排除してくれ、使うなと要求することにどんな困難があるだろう??? 少なくとも道義的にはなんにもないし、多分外交慣習、法的、といったところからもないだろう。


朝日はこの問題をもう一回ちゃんと考え直すべきだ。少なくとも、頭を整理する必要がある。日本政府に努力目標を課すことは結構だが、伝えようとしている内容がワヤでは話にはならない。


北朝鮮に関して難しいという点は、実際にはもうテクニカルな面、どうやって体制変更が可能になるか、それに伴う混乱を収拾する枠組みはどうか、実効性は、誰が金だすんだ、といった点にしかない。


朝日にとっては、そう決定してしまうことが難しいのだろう。しかしもう、自分で言っているのだが・・・。この混乱はつまり、社説を書く朝日にとってのこれまでとの整合性の問題なんだろうなとは、まぁ思うわけだが。



ああ、そう。この一年でしみじみ思うのは、日本のあらゆる業界の中で一番混乱しているのは、朝日などの新聞論説媒体業界だと思う。