ブッシュが来る

あと数時間でブッシュが来る。カナダのメディアは朝から大変。ブッシュは最初の任期中は一度もカナダを訪れていなかったからこれが最初の訪問。なんかこう、鬼が来る、ような感じで大わらわになっている。


多分このへんからが、今までリベラル左派に押し切られていたリベラル右派から保守(合併して大きくなったコンサーバティブとして括ることができる)の巻き返しであろうかといったところかと私自身は観察する。好んでいるというわけではないが情勢はそんな感じだろう。


と、そういう騒ぎなので、今夜のCBCは、アメリカとの関係の時間延長の特集。アメリカとカナダの国境の両側の人びとに集ってもらって、遠隔地からのライブを交えて1時間半ぐらいやってただろうか。私は途中から見たのだが。


話の主軸には、アメリカからカナダへ移ってこようとしている人びとの話。これに対してカナダ人の側からの質問あり、アメリカ人の側からの質問やらエールありといろいろ。今回の反ブッシュでいささかテンションがあがっていると思しきアメリカ人のおにいさんは、だけど自分の考える通りにならないからって国を捨ててもねぇという感じで、当たり障りはないがあまり好評を得ずという感じで対話を終えた。


しかし一方で、私のファミリーは1600年代にUSに移ってきました。私はベトナム戦争にも参加し、その後帰って来てからこの戦争が間違いだとマーチにも加わりました。自分自身をパトリオットだと規定してきました。しかしこの国の持つ排他的で独善的(などなど)なやり方がいいとは全く思えません。ですのでいろんなところでマーチ(行進とかデモということだろう)にも加わってきました。しかしこの国は私が持っている価値を反映できない、カナダは反映すると判断して移ろうとしています、と結構こう、堂々とした中年を過ぎたおじさんに言われると、そうか、ではあった。


でも、だけどそうやっていろんなもめ事があって、fightがあるわけでしょ、それはずっとそうなのよ、といなされ、おじさんは、そうだと思います、だけどそう単純に言ってボクは少し年を取り過ぎて戦うのに疲れたんだと思う、と言った。私は、ああこういう判断はありだよなと思った。で、ミシガンからの、明らかに確かにデモクラッツだよな、という化粧っけのない顔をしたおばさんが、わかるわ、とレスポンスしていたのもとても印象的だった。若い人の瞬発的な怒りよりも、この30年間の闘争を考えるという人の持続的な絶望感の方を呼び起こしていることがアメリカのデモクラッツにとっては大きな問題だ。


そういう個人の話の合間合間にキーになる問題のビデオクリップを見せて、カナダってこんな国ですよを表現する。アメリカからのみなさん、ここはあなたたちの北で、極北ですが、私たちの南だというのも忘れないようにというのは、誰でも知ってるんだがやっぱマジで深刻。西海岸に住む昔ヒッピーの人たちはまずこのことを言うようだ。寒くないんだったら移りたい、と。


ビデオは、国境の南と北の往来は、しかしながら、アメリカ革命以来何度もあるんだよな、というのを思い出させてくれもした。アメリカ革命でアメリカの方から北にあがってきた人もいるし、ベトナムの時もそうだが、ケベックあたりから10万人ぐらいの人が南に向かった時代もある。だいたい、カナダから南下するのは食えないか、職を求めてかという感じか。


その今日の代表は、ミシガンから参加した人で、カナダは大好きで移って来たんだけど(何十年だったか前に;聞きもれ)、今ミシガンで得ているような好待遇をカナダで得るのは難しいわけですと、医者と教授のカップルが言っていた。なんというかこう、そうなのはよーくわかるし現実にそうなのだが、ああ、デモクラッツ、みたいに思った人も少なくないだろうなぁと私は思いもした。国境って結局あんたの都合のいい時に超えられればいいってわけね、と。で、昔からそれはそうなのだが、昔人びとが食うに困って移動というのとこの話は同じなのか?というのも問題になるだろう。


最後の方になって、カナダの保守派、それも宗教的保守派が登場。カナダもアメリカもクリスチャンの原理(Christian's principle)によって出来た国です。そのことを人びとは忘れている。今では誰もカナダを考えようとはしていない(なんてことだ、と顔が言う)という発言の人も登場。


これでバランスするつもりなんだろうなこの番組、ではあるのだが、こういうある種の極端に針が触れないように、どうにか中間内で保守を着陸さえることができなければアメリカ人たちが移ってきた時には保守王国だたたというシャレにならない事態もなくはない。順番から言ってもリベラルはもう長過ぎるので保守党になるのは多分止められない。ということは、保守の内実をどうバリエーション付きにできるかが今後のカナダ政治の課題と言えるだろう(えらそうだが)。まぁ、そんなに極端にはならんだろうが。


明日はブッシュがこの上空をブッシュが通過するのかと思うといささか不安になる(ウソ)。