ポストトラウマだってのかぁ?

Author's Suicide Raises Question of History's Toll
http://story.news.yahoo.com/news?tmpl=story&cid=572&ncid=572&e=1&u=/nm/20041115/lf_nm/arts_tragedy_dc


またまたアイリス・チャン。私がしつこいというより、だって記事が出るんですもの。

この記事は目茶めちゃへんだ。著者の死が歴史の犠牲に関する問題を引き起こしている、そうだ。

彼女が亡くなったことを受けて、決して断定はしないながらも、ホロコーストの研究者などは過去の悲劇に打たれて、鬱になっていくことがあるからね、と、何人もの精神科関係者の教授だのなんだのに、ええそうです、を言わせている。それだけ。


で、こういう記事が出れば出るだけ疑いたくなるのが人情というものだが、そうは考えずに何が彼女をそこまで鬱にしたのかと推測することもできるだろうと思う。

それは例えば、今回は言うところの「パターン死の行軍」で協力してくれる人がいなかったのではないのか、なんてところ。夏の取材以降調子がおかしくなっていたらしいし。

日本軍の残虐性を描き、かつアメリカをはじめとする白人というかこの場合言葉の正しい意味での欧米というところにおもねる、という彼女の主旨は一貫しているわけだが、南京は所詮は自分たちの仲間うちの資料でできます、証言もね、だったわけだし、敵たる日本人は、名にしおう論戦下手だから恐いものなしだったと言える。(朝日新聞もついてるし(笑))

しかし、今度はそうはいかない。応分の客観性が求められる。が、その客観性には前作でクレームがついている。そして、致命的ではなかろうかと私が想像するのはこの点。この北米で軍人さん、ことにじいさんの軍人さんてのがどれぐらいプライドっつーか、ディグニティってのが高いかってのを彼女が理解していなかったのではないのかということ。

政治屋はどんなことでもするし言うし言いのけるし、謝ることさえやり遂げるわけだけど、相手は元でも軍人だからなぁ。関係ないけどパウエルも結局最後まで軍人的だった。


アメリカ人にとっての軍はいやしくも正規軍なわけで、それは彼女の両親などが語ってきかせたチャイナの兵隊とはどれだけも異なっていたことだろうと言ってもいいと思う。気の毒だが、彼女自身の素質は、軍と名がつけばなんでも野蛮だ、変態だとなじるという活動には向くが、到底正史を書ける人ではなかったと思うし、そうなった根本的な理由は、国家と国軍を知らないことにあったりしないのかな、と推測できるように思う。
(ま、日本の左翼と似てるね。私の目から見たことが真実です、ってタイプだから。見てもいなくても。)


と、こうなった場合、いかに日本軍の残虐性維持に貢献したいと考えていた人でも、この人に書かせるのか?となったら引くかもしれないし、政治関係者でもなかったら、今さら過去の敵、自分たちが本当に戦った敵を責めるという行為自体が当惑させられるものだった可能性もあるかもしれない。しかも、横合いから出て来たチャイニーズにそれをさせるのか? (このへんはひょっとしたらもし彼女がチャイニーズ性を強く保持していたとしたら理解できないかもしれない文化的差異のような気もする。) しかも負けた軍じゃないから、基本的に恨みはないから、ここから憤激を引き出すのは難しいだろうと思う。

「あんたの飯の種に軍歴を売るつもりはないぜ」ぐらい言われそうだし、遺族だってそうだろう。蒋介石って知ってますかとか皮肉られるとか。

あと、証言に関する重みも軍関係者ならさらに重いだろうと思う。出すなら名前を出すだろうしその覚悟がなければ話さないだろうし。

そう。どんな言い方をしても、政治の中にいすぎたことが彼女の死を早めたという点は間違いないものと見える。


従って、あ〜た、ポストトラウマの鬱ってのはないんでないの、だわ。


あ、でも私ったら見落としてるわね。この記事が出ることによって、ホロコーストと類似のものである南京大虐殺というステートメントが保持されるわけだな。たいしたものだ。