チベット方面情報


なんかずっと気になっていたのでここらでちょっとサーチ。

チベット亡命政府(Central Tibetan Administration;中央チベット政権とでもいうのか)のサイトによれば、月曜日(19日)チベット人たちが集って四川の地震の犠牲者への追悼集会をしたようだ。
Tibetans offer Solace to China Quake Victims through Prayers

http://www.tibetgov.net/en/flash/2008/0508/190508.html


その席で、チベット亡命政府のKarma Chophel氏が、地震で犠牲になったチャイニーズへの哀悼とこの悲しみの瞬間での連帯を表明し、

その現れとして、5月末まで中国大使館前での抗議行動を延期すると発表。

温家宝首相が被災地区を早々に訪問したことは歓迎するが、中国政府はチャイニーズの危機の時にはこのように最大限の努力をするけど、チベット人たちの平和的な抗議行動への中国政府の摘発によって何千人もの人が怪我をしたりしてもそんなことはしないとしてそのダブルスタンダードを非難。
(そのトーンは静か。)

その上で、四川省内のチベット人居住地区でのチベット人たちの被害について懸念を表明。

He expressed concern that Tibetans might have affected by the earthquake, since the largely hit areas by the powerful quake also include Tibetan inhabited Lungu county (Ch: Wen Chuang), Tashi Ling county (Ch; Lixian), Sungchu county (Ch:Song Pan), Trochu county (Ch: Xiao Jing) and Maowen county (Ch: Mao Wen) under Ngaba (Ch: Aba) Tibetan Autonomous Prefecture (TAP) in Sichuan Province.


ということで、全体として、追悼、哀悼に主眼が置かれているからでもあるだろうけど、チベット人居住区への差し迫った危機を訴えているというトーンはないように思う。

この理由を察するに、
1 中の様子が本当にわからない
2 被害はでているが、全体の被害と同様で特別にチベット人が悪待遇を受けている感じではないのでハイライトしない
3 全体被害が大きいし今は追悼の時なのでチベット問題を取り上げない、自粛

のどれかで、抗議行動を自粛していることから3なのだろうかな、など思う。
つまり、良い人たちだからなぁ〜、だったりするのかも・・・。

 懸念される街

上で表明されている場所がそれぞれどこなのか、というのが私には難しい問題なのだが、とりあえずこんな感じか・・・。ご存知の方、ご教示いただければ私にとってとてもうれしく、誰かにとって役に立つこともあるでしょう。ご指示くださいませ。


アバ・チベット族チャン族自治州内の、
Lungu Wen Chuang(Wenchuan)   汶川県
Sungchu Song Pan   四川省松潘(ソンパン)
Trochu Xiao Jing  ?
Maowen Mao Wen ?
甘粛(Gansu)省隴南(Longnan)地区の、
Tashi Ling Lixian    礼県 

(上の英文ではすべてアバ・チャン族自治州内の県みたいに読めるのだが、Tashi Lingはチャイナの行政管轄では隣の省ではなかろうか、と思う。同じ名前の街があるのかもしれないが。いずれにしても、こんなことがこんなに難しいとは知らなかった。)

 ダライラマ@イギリス


一方で、ダライラマは、イギリスを訪問していて、

Dalai Lama urges west to remember Tibet

On the first full day of his 11-day visit to the UK, the Dalai Lama said he fully understood that Britain, like other nations, was seeking to maintain good economic relations with the growing Chinese superpower. However, at a press conference in Westminster, he said: “The economy is important but human rights are more important. While you are making close relationships in the business field, there is no point in ­forgetting about principles. I think that is very important.”

イギリス他の諸国が成長するチャイナと経済的なつながりを良好にしたいのはよくわかる。しかし経済は重要だが、ヒューマンライツももっと重要なんだよ、ビジネス関係を近しいものにするからって、そういう原則を忘れていいってことはないからね、とダライラマは言っている、と。

非常に穏当で、事前にも言われていた通りだと思うけど、6月の会談とオリンピックが終わってからだよ、という線を繰り返している。

で、イギリスはダライラマとブラウン首相が会うんだが、その場所はダウニング街首相官邸ではなくてカンタベリー大司教のところ、ということで、これは宗教界のリーダーとの会談であり、政治的なものではありません、というのがイギリスの意思らしい。


このおとなしい話はしかしちょっと気分が違うっすね、という報道もあって、カナダプレスによれば、

チャイナのリーダーたちは全世界の良きメンバーになりたいし、チャイナの野望はスーパーパワーになることだ。そして、チャイナは欲しくて仕方がないスーパーパワーのステータスを達成するための多くの条件を満たしている。大きな人口がそこにあって、軍隊もある、経済力もある。4つめは道徳的権威だ。スーパーパワーになるためにはこの4番目が大事だ、とダライラマが言っている、という言を引きながら、最初の要約部では、

China lacks the moral authority needed to be considered a superpower, the Dalai Lama said Thursday in remarks to British legislators in which he also noted that the Summer Olympics provide an opportunity to press Beijing over human rights.

チャイナはスーパーパワーとみなされるのに必要な道徳的権威を欠いているとダライラマが言った、となって、なんかちょっと挑発的な会談がイギリスであったような感じになってる。カナダにあるチベット系の団体はあまり穏当な筋ではないかもしれない、という感触もずっとあるので、全体的にカナダ発はそうなのかもしれない。
Dalai Lama says Beijing Olympics offer chance to press China on human rights


チベット問題って、チャイナとチベットの問題でもあるけど、実際西洋諸国、なかんづくイギリス動向の問題でもあるよね、ってなところもあるので(もろもろのアジア周りの問題と同様)、この足並みが揃ってないっぽいのが今後どうなるのかも問題かも。


世界的な大問題としてのチベットももちろん大事だが、しかし私としては、今そこの人たちは大丈夫なのかという問題に今すぐ答えられていないっぽく見えることにショックを受ける。

ただ、ダムが大変なことになっているようにも見えるわけで、その意味で、想定される、あるいは想定を排除するのが容易でない、もしくは、作為、不作為を問わず発生する、中共政府の究極の悪意のあるなしに係わらず、問題の深刻度は非常に高いと思う。

神様、雨ならオンタリオ湖が引き受けてよ!


[http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080512-2403370/news/20080522-OYT1T00424.htm:title=集落のみ込む土砂崩れダム…台湾の観測衛星とらえる
]

12日に中国の四川省を襲った大地震で、同省北川チャン族自治県の川がせき止められてできた湖が次第に大きくなり、川沿いの集落がのみ込まれてしまう様子を台湾の観測衛星がとらえた。

 チベット問題を沈下させない

今日は一日チベットチベットとあっちこっち読んで、で、残った疑問は、少数民族として遇されている人々の現在の状況と、もう1つ、で、この問題を取扱う主要な人というのは誰なんだろうか、ということか。


上のように、ある種「公式」中の公式は非常に穏やか、serene and peacefulみたいな感じがするわけだ。どういう問題であっても。


一方で、天漢日乗さんが連載されているラサのシリーズでリンクされているところをたどると、もうね、読みたくないものがずらずら。


私は身体的苦痛の話が非常に苦手であり、基本的に、惨い話を読むことは、平和的、あるいは理想的、望ましい、あるべき(任意に)姿への到達手段として必ず必要なものではないという考えを持っている(心が張り裂けて、惨い人の像を刻むことはトラウマにしかならない場合もある。それなら良き人の良き言葉を心に刻む方が百倍もいい、ということはある)ので、英文の原文はざっと目を通すにとどめたが、いやしかし、嫌な話だ。怖いっす。お祈りして寝るよ、もう、今日は。


と、この状況を私なりに(私のために)整理すると、ダライラマ以下の主要人物たちは宗教者関係であることもあり、基本的に、平和裏に平和裏に、それはつまり現実的にいえば、政治的に政治的に解決したい。それは誰しも思うだろう。

が、この政治的にというのがまた曲者ではあるわけで、ではいったいどのような落としどころをどのような手段で目指すのかで、同じチベット問題を懸念する人々の間にもばらつきがあるのだろうなということはなんとなくそうなんだろうと思う。どういう行動でもそうだといえばそうだが。

さてしかし問題は、では、一般大衆というか、問題の枠組みからは遠い私たちはどこにこの懸念を伝えればいいんだろうか。数が問題ならどこかの団体に名前を連ねることにはなんの問題もない私だが、ではそれはどこに、というのがよくわからない。

当面の私の理解と行動としては、とりあえず、地震被害の大きさ、および、オリンピックのまぶしさに負けてチベット問題が沈没しないために、どういう波及があるのかはともかく、あっちこっちで問題だ、問題だと書き連ね、さらに人にもついでのついでも良いから語っていく、ということを実行しようとは思う。それは多分、雷雨の中の1粒の雨粒よりは大きな効果を持つだろう。

どういう関係者がいるにせ、私の願いはただ1つ。
個人に対する不当な暴力はやめろ。話はそれからだ。以上。


天漢日乗さん、今後ともがんばってください。