テロ未遂事件と国家警察

いろんなことが起こりすぎて何から書いていいのかよくわからなくなっている私@カナダなのだが、すべてはハーパー率いる保守党がリベラルの長期政権を覆したところから始まったということなんだろうな、とは思う。


なかでもこの間で一番、珍しくカナダ発の記事が世界的に出て行った事件はやっぱテロ未遂で容疑者がつかまりました、の事件だろうか。


finalventさんがまとめてらしたものをちょっとおかりします。

カナダ大規模テロ未遂
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2006/06/post_2bf3.html

「地元メディアが伝えた」というのに多少苦笑するが、テロ未遂犯についても日本国内ではあまり報道はなかったかと思う。五人は未成年。成人は十二人。内六人が爆発物を使ったテロを計画。残り六人を含む九人はテログループから訓練を受けていたという容疑。重要なのは、この訓練を受けていたという容疑で逮捕に踏み切ったことで、これはカナダでは今回が初めてのことのようだ。裏付けとなる法改正なりがあったのかよくわからない。


朝日新聞の記事の引用とのことですが、基本的には現地メディアでもわかるようなわからないような報道しかない、というのがこの事件かもしれません。一応容疑者が誰なのかは、少年以外の名前はすでに出回っていて、それはそれなりに憶測・推測はいろいろあるようですが、肝心の、ではいったいそれはどのぐらい確からしかったのか、容疑と見合っているのか否かというのはまだよくわからないし、今も、ちょっとざわざわしている感じ。


昨日ちょっと新しいざわざわがあったのは、15歳と18歳(容疑当時17歳;だから少年保護で名前などのプロフィールが保護されてる)少年の釈放の申請が通らなかったから。
http://www.canada.com/nationalpost/news/story.html?id=5f4517e3-17b6-4080-892d-574ea4a212c4&k=68954


で、それはそれとして、finalventさんが言及することで示唆を投げてらっしゃるように、容疑って、どのぐらいで逮捕、拘束にいけるの?どういう法なの?なのだが、それは2001年10月に成立した反テロリスト法というやつ。


この法は、反テロリスト法は単体の法律の名前でもあるけど実際には関連する複数の法改正で実行されるという体裁なので、たとえば刑法内にテロリスト関連のパートが設けられていて、これにより、それは何に対してのチャージなのかといえば刑法に対するそれ(主に83条あたり)、という書き方が可能、というかそうだし、反テロ法で、といっても間違いではない、という仕立てと言っていいんだろうと思う。


でもって、こうした法にありがちというか、普通にセットで付いてくる問題として、これって見事なまでにcivil libertyを壊してないですか、という点は指摘はされている。たとえば、容疑不肖でも3日間まで拘束できる、とか情報の非公開とか。


反テロ法の構造と問題点みたいな記事があったので参考までに。

Q&A with law professor David Paciocco, on the Anti-terrorism Act
http://www.macleans.ca/topstories/canada/article.jsp?content=20060607_133143_5344



読んでみると、仮想的には確かにcivil libertyという観点からは問題の多い法というべきなんだろうとは思う。しかしながら、今回のテロリストのケース以前にこれが適用されたのは1件だけで、今回は2件目。で、なんとなく、これってどういう問題点があるんだろうか、へんない言い方だし、被疑者の人がもし容疑にあたっていない場合はまったく気の毒な話なのだが、どうなるのか総ざらいを見てます、という感じもどこかにあるのかな、など思ってみたりもする。



法とは関係なしにこの事件に対してのトロント住民の反応について一言メモしておくと、あんまり怖がってる人がいたとはいえないように思う。一応、これは私たちへのウェイクアップコールなんだわ、と言っている人をテレビなどで見るし、まわりでも、ないとはいえないんだからね・・・という反応は聞いた。が、どこまで本気なのかはよくわからない。


で、もっとも面白かった意見は、(あまりマジに取らないように)、テロリストがトロントを狙うって、それはないんじゃないの、だってベース叩いてどうすんのよ、わはは、というもの。


私も、総論として別に間違いではないだろうなとは思う。というのは、こんなに、異文化風ママ、そのまんまの風情でいて怪しまれず、さらに(傍から見てるとなんだかよくわからないこともある)権利の主張をして怪しまれずというところはそうはないだろう。どういう理由であれ、あらゆる異文化風活動にこんなに便利なところを叩いてどうするよ、というのはとてもよくわかる。



じゃあ何のためにこんなことが持ち上がってるんだ、といえばやっぱりウェイクアップコールのための若干のショーアップなのか、それとも、マジでコアにこれはまずすぎるというグループが特定されつつあるのか・・・そのへんは結局のところよくわからない。


ただ、トロントおよびカナダの人は、テロリストの存在をありえないとは思ってない。それがアルカイダかどうかは別として、過激に暴力的な人々というのが世の中に存在するんだという点については、たとえば日本の中の無防備都市推奨運動みたいな、ああいう夢のようなことを言う人というのは、私が知る限りではあるにせ、ほぼ見あたらないように思う。



どうしてかといえば、なんつっても、いろんな意味で結構にヤバイことになっていた国から来る人たちが社会の中に一定数を超えて存在しているわけで、そういう人々は暴力に訴える系の人がいるんだという点を、カナダとか日本とかの都市居住暦=全人生、の人よりもその怖さをよく知ってるものだ。間違っても、平和を唱えると平和になるとは思ってない。平和的状態を構築するにも武器は要る、当然だろうが、はい、どうも、という感じ。


もうひとつは、カナダって、何があっても平和そうに見えるのかもしれないが、別にテロと無縁ではないから。1985年のインド航空事件の話は今も解決しているのかいないのかよくわかったようなわからないような話で終わってる(終わってないんだろうが)。この事件は911までの、航空機使用のテロ事件で最大のものというランキング?らしい。


上のように反テロ法を使った、よくわからない、cvil liberty的にいいとはいえないよなぁというものであっても、その点だけで、このようなものを実施してはならない、という騒ぎないしはムーブメントが構成されているようには見えない、普通に目につかないのは、根本的にはそこらへんのコンセンサスに原因があるのだろうと思う。備えは要るに決まってると。


(そう書く私は、無防備都市推進派を嫌うものの、どこか、そんな風に容疑をつかっちゃって、オーソリティーにお任せの態度って、いいの?と、多分、もしこの件に関するカナダ標準偏差があるのなら、かなりリベラル、とかいうところに位置しちゃいそうな心情だろうかな、と思う。)



ちなみに、この法のあらましでよくまとまっているように思えた記事を参考までに。Juristのオンライン版。
http://jurist.law.pitt.edu/forumy/2006/06/canadian-anti-terror-law-on-trial.php

騎馬警察隊という名のカナダ国家警察

余談だが何がしか本質的に重要かもしれないと思ったのでさらにお借りします<finalventさん。


というわけで、定訳語も「カナダ連邦警察(RCMP)」と変えたほうがいいぞ、共同とか。


finalventさんがページ内でおっしゃっていたが、私もそう思う。共同をはじめとした日本の新聞各紙が、カナダのテロ捜査に当たっていた組織であるところの、「カナダ騎馬警察隊(RCMP)」と書いていたが、それはせめて連邦警察と書いたほうがいいでしょう、というお話。


というか現地から何かレポートなりを訳す場合は普通そうなってると言っていいかと思う。


カナダの警察機構は、他のもろもろと同じで、連邦、州、地元市警など、とそれぞれ管轄が違う。RCMPはその意味で連邦の警察だし、読者が知りたいのはそこであって、別に衣装、来歴のことではないと思うから(したがって、観光用パンフレットでは騎馬警察と書く意味もあるだろう)、連邦警察と書くのがいいのではないのか、と思う。



すべてが「警察」である日本人からすると面倒なんだが、RCMP、OPP(オンタリオ州の警察)、そしてトロントのポリス、と言い分けるのが普通。おまわりさんへの悪態語という意味での、コップ、は、ここならトロントのおまわりさんのこと。
RCMPをコップと考える人はいないと思う。


というか、この組織は、外国人の私の鼻が嗅いだところによれば(したがってエビデンスはない)、軍隊並かそれ以上に経緯を払っておかないとならない組織、のような感じが相当にする。息子さんがRCMPに出てらっしゃる、それはそれは名誉なことですね、といわねばならない(または、言いたくなる)組織。そして、普通の生活にはまったく関係がない。


finalventさんがカナダ大使館の説明をクリップされていたが、この後半がカナダ的に正しいRCMP像の説明だろうと思う。

しかしRCMPは、単なる神話的存在ではなく、その活動も騎馬ショーに限らない。RCMPはカナダの国家警察であり、世界的にも優れた治安維持機関として高い評価を得ている。


ということは、RCMPは、カナダ国家警察であり、ほぼ治安維持の専任機関で、その国家警察が反テロ法関連の捜査にあたってる、というのが今般の反テロ法に関連した出来事の表現で、カナダ人はそう言っている。


で、なんでここに騎馬ショーの一文がくっついているかと言えば、観光的に有名になっているから、在外公館的にはこう書いている、ということなんだろうかなと思う。カナダ国内のRCMP関連の話で、ショーだの何を着てるのかなんて話が付いてくることは(当たり前だが)ない。つか、RCMPの人が年中ああいう格好をしているわけじゃない。


が、これを日本語で騎馬警察隊が、とか書くとかなり印象が異なってしまような気がする。どこか間が抜けてるみたいな。
そういうわけで、この表現は誤ったイメージを伝える元になりかねないので訳語としては捨てるべきだろうと思う。

その他 memo


カナダ:過去の中国系移民受け入れ、首相が公式に謝罪
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/america/news/20060624k0000m030037000c.html



麻薬組織逮捕

US, Canada crack brazen drug-smuggling network
Thu Jun 29, 2006 4:10 PM EDT

http://ca.today.reuters.com/news/newsArticle.aspx?type=topNews&storyID=2006-06-29T201032Z_01_N29255032_RTRIDST_0_NEWS-CRIME-USA-CANADA-COL.XML

純ちゃん@カナダ


明日はこの旅のメインデッシュたる(違うって)エルビスの邸宅トリップでご機嫌の純ちゃんは、その旅のはじまりのほとんどそれはアンカレッジの給油か?(古い)というスピードでオタワにいたらしい。知りませんでした。すんません。いや、ハーパーと会うとは知ってたけどいつか知らんかった。


Harper dismisses Kyoto concern during visit with Japanese PM
http://www.canada.com/topics/news/politics/story.html?id=733240aa-b8ff-49a1-bc72-414364c34b36&k=95001



PM and Koizumi skirt Kyoto issue
http://www.thestar.com/NASApp/cs/ContentServer?pagename=thestar/Layout/Article_Type1&c=Article&cid=1151531412581&call_pageid=968332188774&col=968350116467



とりあえずとても重要な会談だったという感じは、まぁないでしょうし実際なかった様子。キョウトプロトコロルが話題になったらしいが、日本も達成できていないが、カナダはそれ以上に、(あれだけ騒いで、世界一真剣だと言い張っていながら)、まったく達成してません。つか、日本以上にできそうな気がしてない私。


ちょうどいい数字があったので整理しておくと、1990年の水準に対して、2003年でカナダが26%上昇、日本は13%上昇、だそうだ。



で、それはそれとして、それ以外で、さりげなく書き込まれている(というより媒体によって違うというべきか)のは、日本との関係はこれまでうまくいってるとはいえないから、今後は少し注意を払っていく必要があるとハーパーが言ったらしい。


PM signals need to tend relations with Japan
http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/LAC.20060629.KOIZUMI29/TPStory/National

Prime Minister Stephen Harper signalled yesterday that Canada needs to pay more attention to its relationship with Japan after his Liberal predecessors focused their Asian efforts on China and India.

Harper calls for improved commerce with Canada's No. 2 trade partner

カナダの貿易相手はあっとーーー的にアメリカ相手で、他はすべてその他と言っても大して間違いではないぐらいなんだが、そのなかでは日本は頭ひとつずっと抜けていて第2位。が、しかし、上の記事が書いているように、なんといって過去13年間のリベラル政権は、チャイナとインドに熱心で、日本との関係はおざなりだった。(個人的にはこんなもんで、日本にとっては何の問題もない気もするけど)


というか、とりわけチャイナものに対して妙に熱心なグループというのがあって、そこは主にリベラルにくっついていたが、リベラルが負けたので、様子が変わってきているということかと思う。実際思い返せば、カナダ人たちがうちの政府はなんてpro-China なんだとあきれるぐらいのことも結構あった。実際前の前のクレチェンは熱心にチャイナを訪れ商談をまとめてきていたんだそうだ。州レベルでも同じことで、オンタリオの現政権(リベラル)も去年あたり上海で共同でなんだかかんだか(詳細忘れました)とおめでたい発表をしていた。それはそれで商売になっているからいい・・・・のだろうが、今般の動きから見ると、いつまでも乗ってられない・かも?なのだろうか。



で、上でクリップしたように、しかしながら今般、20世紀はじめのチャイニーズの移民に対してカナダ政府が人頭税を課して、その直接間接の結果として(この因果関係を私はよく知っていない)、チャイニーズの移民ができなくなったという件で、カナダ政府は謝罪して、なにがしかの補償金を出すらしい。これは、リベラル政権は拒否していたが、保守党がやった。



なぜか。巷間普通に言われていて誰も異論を挟んでいないのは、政治でしょ、おしまい、というところ。チャイニーズ、インドに限らず普通移民はリベラルの側に親近性がある、ってことになっていて、さらにハーパーの保守党(伝統的な保守党とは違う、新型つーか、ネオコン的だ、とみなされる新しい保守党)は、都市部郊外では強いが、大都市のコアでは弱い。で、頑丈なリベラル地盤の教員組合なんかいまさら説得してもはじまらないわけで、切り崩しは移民からってことだろう、しかもこれは浮動票取りではなくて、リベラル分を取っていくことになるんだから、ということらしい。


それなりに私にも説得的。しかしもっとさらに突っ込んで憶測してしまうのなら、これってある種の手切れ金か?なんて見てしまいたくもなる。アングロサクソンが金を払う時、それはもうこれ以上貸し借りはない、という意味じゃまいか、など憶測しちゃう。これ以上言わせるネタはないからな、みたいな。




まったくカナダとは関係ないが、うわぁ、朝鮮新報かと思ったらゲンダイだった。


小泉訪米 世界の有力メディアが大批判
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2144871/detail?rd



今日純ちゃん関連の記事を10個ぐらい流し読みしたが、どこにもそんなトーンは見当たらないんですけど・・・。
どっちかっつーと、とにかく強いところが2つ組む、この動きは見逃せないな、という意味と、やっぱりプレスリー好きの日本人というキャラの面白さで話題に華が添えられているという感じだろうかと思う。


なんで国内でここまでよじれたことが書けるのか不思議だ。精神的に問題があるのじゃないだろうか。だいたい、他者の権威で批判している気になってるというのがいかにも卑しい(しかも、中身読んでないだろう)。そもそもこういう新聞だったといえばそれまでだが、ここまでかぁと感慨深い。