左系統機能不全

おとといぐらいからどのニュースサイト(英語)を見てもSouth Koreaの話題。いうまでもなく肝細胞とWTO。前者は確かに南朝鮮の話題なわけだが、後者は南朝鮮だけの話ではないのだが、なんせ目立った「デモ隊」がそこからの人々であったそうで、映像も写真もナレーションも、サウスコリアンが、が繰り返されていた。一般的にはWTOとくれば反グローバリズムのアクティビストがという組み合わせとなって、それはそれで見なれた映像になるはずだったわけだが、今回は、あれ、なんか、これって、なんか別の件だっけかと私など一瞬考えたぐらいだったし、あまりニュースの事情を知らない人は、なんだか知らないけどサウスコリアンが暴れていた話として記憶しているのではないかと想像。


WTO会議に抗議、中心部騒然=韓国農民が機動隊と衝突−香港
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051218-00000004-jij-int


WTO香港会議にデモ隊 警察と衝突、50人以上けが
http://www.asahi.com/international/update/1217/013.html


いやしかし、あれは「デモ」というのかと考えて気がつくが、こういう場合の「デモ隊」という語は日本語なのだな。デモントレーターじゃなくて、限りなく暴動に近いが規模として小規模であり、かつ武器を携帯していないものはデモという語に含まれ、それを遂行するものはデモ隊と呼ばれる、と。

なんにせよ、映像で見る限り、ふさわしい言葉は、衝突、暴動、暴徒という感じ。警官隊が並んでいる、ようするに戦線の正面ということなんだろうが、そこに向かっておにいちゃんがかけのぼっていった様は、なんというか、私がこれまでの人生で見たことのあるいわゆる「デモ」ではなかった。でもって、この丈夫さ、この身体の効く感じは、さすがに徴兵制を持った国だからなのか、つまるところ、戦争が近い人々なんだなぁみたいな感想も持った。


日本でも30年前までにはこういう人々もいたのだろうが、彼ら自身は戦後の生まれなんだろうけど、でも社会としてはまだ戦争期が近かったわけだから、身体を使って体当たりをするという発想が今よりも身近だったのじゃまいか。フランスの68年もそう。


その後人々は、よしんばその場で、たとえばその警官隊の一列をぶっ倒したところで、自分たちが要求している項目が通る保障はどこにもないのだと気がついた、と。


つまり、要求していることがあることを表す、つまり、デモンストレートする、ために、人が集まることが一義なのだとたどり着いた、と。


別の見方をすれば、全面抗争、つまり革命は起こりえないのだと気がついたからこそ、一点が暴力的に暴発することが、社会内での単なる暴力にしかならないのだという点に気付いたとも言えるだろう。全面抗争、革命が可能である状態ならばその一点の暴力は突破口ともなり得るわけだが、呼び水のつもりが孤立にしかならないと。


考えてみれば、いや考えるまでもなく当然だと思うわけだが(私は)、なぜだかこの期に及んで体当たりの手法が生きているという点が、このなんというか、なんでなんだろう?


いろんな理由があると思うが(陰謀論も含めて)、ひとつの理由は、こういうのを指導している人たちが、この変化に気付いていないか、気付きたくないか、だからなのじゃまいか。


ここから考えた時、いわゆるピースウォークの類いは、これがわかった人々がやっているわけで、その人々と彼らは異なっていると押さえておくべきなんだろうな。主張が似ていたとしても。でもって、私は前者にはだいたい肯定的。何か特定の問題、イッシューがあって、それに対しての反対がうまく現れていないことを当局に、あるいはその他の国民に知らせるという機能を持っていると思うから。ロンドンで50万人の人が出てきた、というのは、暴動肯定派は、甘い甘い、みたいなことを言うんじゃまいかと想像するが、それはまったくトンチンカンなわけで、長い目で見れば、対抗意見、異論が存在していたことのサウンドな証明となる。


つか、日本とかカナダでこんなことを今さら言う必要はないんだと思うんだが、WTOとなると暴力が付いてくるというのを私たちはもう何度も見ていているわけで、で、思うのは、これってこう、なんというか、単なる息抜きにさせられている、という話で、それでもってそれは多分組織的なんだろうなぁということ。そして、多分参加している人はそれに気付いていないんだろうなぁなど思う。


でので、いささか話は飛ぶが、世界中の「反グローバリスト群」が空中分解しちゃうのかななど思ってみたりもする。ってか、単純に欧州勢が東アジアは見なかったことにする、となるだけのような気もするが。

Security forces spent much of the afternoon fighting street battles with the protesters, who included South Korean farmers as well as activists from Europe and America.

どこでもいいのだが、これは「インデペンデント」の記事にあった一説。コリアの農民と欧米のアクティビストがWTOに反対してプロテストした、と。


で、タイトルはその通り、あくまで反グローバリズムの話としている。
Anti-Globalisation protesters tear-gassed at Hong Kong trade talks
http://news.independent.co.uk/world/asia/article333848.ece


が、しかし一方でコリア、ならびにその向こうのチャイナは、本人たちの「つもり」はどうあれ反グローバリズムか? 
もちろん、だからこそその国の政策を反グロ−バリズムの方向に持って行くために活動する、つまりアクティビストが国内にいる、と考えることもできる。


さてそこでアクティビストとは何か。もちろん、activistは何に使ってもいいんだが、現在のこの語の使用環境は、先進国にいながら、あるいはそれを利用して世界中の貧しい人々、不利な状況に立つ人々の側にまわっている人、と定義することもできるだろうと思う。つまり、この人々は、自分の環境をどうにかしてくれと直接的になっていないからこそ、あるいは直接的な利害をユニバーサルな大義に変えることができるほどユニバーサリズムに対して思考的な疑いがないからこそ(私はこういいながらフランス人のことを考えている)、広い範囲の直接的な利害に関わる人々を包括することが、現実的というより、むしろロジカルにはそうなる。ある意味(好意的に言っているのだが)おせっかいな人々とも言える。


さてそこで、コリアの農民はこの場合どの位置に入るか。さらにチャイナはどうか。ざっくり言って、自分たちを、グローバリズムの被害者と位置づけているグローバリズムの成長株の人々、だ。で、その上でそれをユニバーサルな大義として捉えて行くことが可能だろうか? ナショナリズムが主要なテーマとなっているこれらの国々で・・・。


今にはじまったことではないのだが、しかしこのたびの騒動などはインパクトとしては小さくはないものがあるのではないのかなど思う。とはいえ、おそらく特徴的、象徴的なインシデントが発生することはないと思うから確証を得ることはできないと思うが、これも一つの「あの国の法則」かなど言ってみたい気はする。


あと、ぶっちゃけ、ある種の国際的なコンセンサスというのは、暴れていいのは、そうやって保護されるべき人々で、しかもそれらどうしようもなく貧しかったり独裁者がいて命からがらな生活をしている人が現地で暴れている、という場合だけなんだろうと思う。飛行機に乗って暴れに行くファーマーに対して暖かい目を向ける人々は、おそらく世界中にそう多いわけはない。


頭が大きすぎる大学生も、これこそユニバーサルに、そういう時期もあると認められているかもしれないけどこれは、ユーロパスとかYMCAの値段にスチューデントの値段があるのと同じじゃないのかと思う。若いうちにはいろいろやってみろ、と(笑)。


コリアって、つくづく巡り合わせが悪いというのか、空気嫁が無効化するというか、そういうところなんだなぁと眺めてしまう。



香港警察、反WTOデモ隊韓国農民900名を全員連行
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/12/18/20051218000011.html


どのぐらいの量刑となるのか、しかも香港<チャイナで、と思っていたが、上のインデペンデントの記事によれば、「連行」というのは、detainのことのようだ。つまり、まず拘束、と。でもって、その後arrest、逮捕にするかどうかはまだわからないということらしい。現時点では。

 カナダの選挙(3)


お伝えしておりますようにクリスマスだよというのに、お正月だよというのに選挙戦に突っ込んだカナダですが、15、16日には党首討論会があった。15日はフランス語編、16日は英語編で、リベラル(与党)、コンサーバティブ(野党第1党;長いから保守と書く)、NDP、ブロックケベコワの4つの党の党首が、2時間に渡って国民から寄せられた質問に答えるという形で討論(というより、発表会のような形式ではあるんだが)を行った。


なんといっても北米でもっとも人々がお買い物をしたりそわそわしたりしているであろうというクリスマスのちょうど1週間前の金曜日に誰がテレビなんか見てんだよ、というタイミングなわけで、テレビが言っていたところでは討論の始まった8時についていたテレビが2百数十万だかで見ていたのは24万だったかそんな数字だったらしい。ひと家族に3人いるとしても百万以下の人しか見ていなかった、ということらしいのだが、そもそも人口が3200万ってことは家庭にして1000万以下であろうから、10軒に1軒としたら、まぁそんなものじゃないのかなどとも思う。わからんけど、とりあえず、感心が低調であるとは言われ続けているのもメモとして書いておく。


で、直後の結果(Global TVのニュース)は、
投票するのはリベ32、保守30、NDP17だったか、そんな数字だった。
どこかに新聞社のがあったら貼りたいのだが見つからないので後でやるかも。


争点は何か。まず、ゲイ結婚、リベラルの汚職、ヘルスケア、税金、ケベック独立、でもってアメリカとの関係。

で、主張はそれぞれ相変わらずで特に目新しいしものはない。ただ、ケベックのケベコワが、独立すると言い切っているのが、やっぱりそう来たか(とこれもある程度も見えていたが)だった。


これに対してマーチンが、自分がケベックに家がある人なので(ものすごい豪邸)、自分もケベック人だ、自分の国がどこかに行ってしまうようなことを言わないでくれ、第一カナダの憲法でも各種の合意でもケベックはカナダだということは明らかなんだからと気色ばんだ。


なるほどそう来たかと余裕をかまして見てしまう私がいる、というところで、しかしながら、このマーチン氏の発言はたいしてカナダ人には受けていないようでもあった。


なんといっても、ケベコワの党首は、最後に司会者が50年後のカナダはどうなってるか、手短かに、と言ったら、ケベックは独立していると党首が答えたぐらいなので問題にしないわけにはいかないのだろうが、今日のフォローアップ的なニュースの中では、こうやってすぐに独立をちらつかせるケベックにその他の人々が飽き飽きしているというのがありありだった。実際、政治的な駆け引きというのを超えている感じか。個人的に聞いた範囲では、ケベックの人でもいい加減そういうの止めてくれと言っている人も多いらしい。


で、他のことはともかく、と私が思った点はなんといってもアメリカ。前にも書いたように、過度に反米を使うであろうとは想像できた。討論の前にもすでに、マーチン氏が、アメリカに指示されるようなことはない、俺たちは俺たちの立場で行くんだ云々と強い口調で言ったところで駐カナダ大使が、アメリカはこの選挙には出てないからとまぜっかえす(?)一幕もあったぐらいだった。


このマーチン氏の反米というか、アメリカに抗する姿勢は、もちろん保守党には不評だが、NDPも「恥知らずのポーズだ」と酷評している。


これはBBCが上手にまとめたこの間の成り行き。このタイトルも、アメリカがカナダの選挙に入ってきた、というもの。
US card enters Canada's election
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/4533818.stm



この記事によれば、「マクリーン」というカナダの総合誌というか、まぁビジネスっぽい総合誌の著名なライターのPaul Wells氏は、マーチン氏を自分が知る限りで最も反米という感情に迎合していると評している模様。どうあれブッシュは2009年まで政権にいるんだし、カナダが向かい合う人たちはその人たちだ、それなのにそんなに批判してどうするよ、と、でもって、環境問題でアメリカはダメダメだというけど(これが反米を言う人のある種の根拠、手始めの1つになっている;soreda)、それはカナダの偽善だとも言っている。


(なんでかといえば、アメリカにしたって二酸化炭素排出に関して何にもやっていないわけではなくて、達成した数値としては確かにカナダの方がパーセントは高いのだが、アメリカの方が10倍も経済が大きいわけで、アメリカが減じた排出量というのは、それだけでイギリス一国分にあたるらしい。これは別のところで読んだ。ところが、カナダ人の非常に多くの人は、あまりこういうのを知らないらしく、京都(議定書)のことがあるもので、アメリカは何もしてない、と頭かっら思いなしている模様。
 また、連邦レベルではないが、オンタリオ州レベルでは、二酸化炭素排出の問題があるから火力発電は中止だ、となっているのだが、電力が足らない時には五大湖の向こうのアメリカから買うことになる、それは火力だ、ってのもある。さらには、オンタリオのゴミの中にはアメリカで処理してもらってるものもある。)

Nevertheless, Mr Wells says that the anti-American card is always popular with Canadian voters. He notes that tracking polls seem to suggest that Mr Martin's popularity has risen since the US ambassador made his comments.


それにもかかわらず、氏が言うには、反米カードは強いままだろう、なんでかっていえば実際それがカナダ人有権者に受けるからと語っていて、氏の観察では、駐米大使がコメントをして以来むしろマーチン氏の支持率は上昇しているのだそうだ。


どうするんだか。

 国境問題


911以来ずっとあるこの国境問題が再び持ち上がっているのも、反米に火を付けているともいえるし、逆にはだからこの問題が大きくなるんだ、とも言えるでしょう。

The amendment, sponsored by California Republican Duncan Hunter, also approved building security fences with lights and cameras along more than 1,000 kilometres of the U.S.-Mexico border in four states to keep out illegal aliens and drugs.

http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20051217.wfence1217/BNStory/Front/


手っとり早くいえば、メキシコ国境に作るフェンスをカナダ国境にも作る、作れ、作るべき?という見解がアメリカにあって、メキシコ国境については、カナダ的には頼みの民主党の中にも賛成議員はいるわけで、じゃあ両方に、となることだってないわけではないでしょう、という話。


部分的にはパスポートの管理が以前とは比べ物にならないぐらい厳しくなっているので、それだけでも苦情を言う、または困っている(と書くとおこられるかしら)カナダにとっては、問題。何が問題かといって、まず物流の行き来に困る。次がパスポートを持って行き来をしなければならないことに対しての苦情(日本人からすれば理解できないことだが)。その次が、特にオンタリオなどアメリカとの観光で収益をあげていた州。


で、この問題に関してカナダでしばしば聞かれるのは、アメリカがパラノイアだから、だったりする。(もちろん、これだけ悪口言ってこれはこれ、で終わるわけはないと現在のあり方に批判的な人もたくさんいるのだが)
私としては、それはそれでまったくそうではないとは言わない。
が、しかし、カナダ側にも懸念を引き起こす要素がまったくないとは言えないだろうとも見える。


たとえば、移民政策はともかく、難民政策を支持している以上、誰が入ってきたかよくわからない状態が作られるわけで、そこでフリーなボーダーをというのはいかがなものか、ではなかろうか。テロがらみのご時世としては問題ではあるだろう(明らかにリベラル寄りの論者が最近これを討論番組で指摘していたのはちょっと驚きだった)。
さらには、オンタリオ州は最近交通関係のデータ(運転免許証など)の紛失騒ぎがあった。この決着はどうなったのだ?


このへんを大きく無視して、国境といえばアメリカが悪いというのも、ちょっとなぁではある。


オンタリオ州州知事(リベラル)が、対岸のアメリカの州の州知事などにかけあっているようだが、あまり上手く言っているようには思えない。
http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20051214.wxmilwaukee14/BNStory/National/


州知事が動いているということは、逆にいえば、連邦レベルでの対話の窓口がないか上手く行っていないという意味なのかもしれない・・・・。そう考えれば、マーチン氏が熱をおびたように反米になっているのは、うまくいかないことを見越しているのか?など勘ぐりたくもなる。


なんにせよ、3週間前に懸念した通り、反米感情とどう折り合いをつけるかが焦点になってしまったようで、個人的にはとても残念。生産性がなさすぎ。