二重の災害
アメリカ南部を襲ったハリケーンの後は思っていたより、ものすごい様子。
1日たってもまだ広範囲の水が引かず、排水は数ヶ月かかるし、町の復旧はさらにその先、全体的に復興するとなったら何年もかかるだろうとのこと。
水が引かないと書いたけど、そもそも水が引くような構造なのか、これは?というところもある模様。つまり、高いところから低いところに水が落ちていく構造になっていれば、1日たてば3日たてば自然に低い方に、つまりあらゆる溝を通して河川に落ちていって海なり湖なりに吸収されるというシステムがあるわけだが、ここってそうなの?なのがニュー・オリンズらしい。
私の理解が足らないというのもあるけど、全体的にアメリカの報道を見ていると、年中洪水のリスクにあってる日本で育っている私からすると、水が引く仕組みへの理解がないのじゃないのかこの人たち、という人がニュースを書いてるような気もした。これを理解したうえじゃなかたったら今現在どうなのかを考えられないじゃないかと思ってあちこち見たんだが、個別の人たちの被害の話に終始していて(もちろん大事だが)、なにがなんだかよくわからん。
そういうわけで、とりあえずBBCの地図の方がまだしも見やすかったのでこれ。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/americas/4201334.stm
ニューオリンズは海抜より低いところにあると私は今回はじめて知ったのだが、そういう町というのは北米ではここしかないという話も聞いた。もしそうなら、そうか根本的に、残りの多くの人々は水との戦い、治水灌漑知らずなのか、など思ったりもした。ま、地震も知らない人たちだが。
で、そのニューオリンズは、
海抜ゼロメートル以下の低地が多い同市には、定期的に排水ポンプで街路の水を除去するシステムがあるが、救助関係者によれば、高さ1メートル以上の洪水が堤防を越えて押し寄せ、排水施設4カ所が機能しなくなった。沿岸の高波は、最高9メートルを記録した。
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1368597/detail
こういうところだった模様で、テレビでも堤防が決壊した模様を伝えていた。
でまぁそのニューオリンズに限らずその地域一帯なのだが、水の下に亡くなった人たちがいるだろうと考えられていて、死者は数百人は確実で、もしかしたら千人の単位もあるんじゃないかとと伝えられている。水が引くまでわからない、その上その水を引かせるシステムが自然に引く、という機能に依存しているのではなく人工的に街路から水を出していたというのだから、その機能を回復させない限り排水できない(そもそも0メートルだってことはそこは水があってしかるべき、の位置なんだから)、ってことか。ものすごく大変だ。
これだけでも、なんかあんぐりだったのだが、その上、救援の遅さはなんでしょうと私は思ったりする。州兵を3万ほど入れたたそうだが(今日の昼間は2万ぐらいだったと記憶)、その数で足りるんだろうかと、映像からはそう見える。
さらには、避難した人たちがたくさんいるので、その後から、火事場泥棒よろしく略奪に精を出していた人がいたという、心から憎むべき行為があって、知事は全員に退去を勧告したそうだ。これでは助け合って復興とかもできない。
今いっても仕方がないが、放火と火事場泥棒だけは厳罰にするべきだし、それこそ倫理的であろうとする意思だ。
なにか、ものすごく、災害の大きさだけでない、脆さに基づく被害の大きさが立ち上っている。
カナダ政府、オンタリオ政府も何かする、助けると言っていたが、お金じゃなくて、兵隊とか警官とかリーダーになって働けるシステム、治安維持にも役に立つシステムを人込みで貸してやるのが一番じゃないかと思う。
そういうことはカナダ人はうまいんだし、その上今は、被災地域では、そういう警官とか地域のリーダーみたいな人たちがそもそも被災していて動けないことから、オペレーションが展開できない模様なんだから。
ものすごく弱いアメリカを見てる気がする。
話はとっちらかっているのだが、何百年も同じところを知ってる人たちは、ここにはこういうことがある、ってのを語りの中にもっているわけでそれを元に地面の上で暮らすわけだが、アメリカってそういうことがないところではあるんだよなとかも思う。
ない、というより、そういうことなのだ、と気づいている人が少ないという意味では二重にないかもしれない。
銃の大放出
The Wal-Mart store in the Lower Garden District in New Orleans was missing its entire stock of guns, according to the local Times-Picayune newspaper, which also said looting for guns and other goods was prevalent in other stores.
http://www.forbes.com/home/markets/2005/08/31/wal-mart-stores-looting-0831markets17.html
ウォール・マートが襲撃の格好の対象となり、なんと、食べ物よりも衣類よりもなによりも、銃が狙われ、銃のラックはカラッポという店があるそうだ。
そもそもそんなところで銃を売るな、ってのは言うまでもないんだが、通常の銃砲店で仮にとても厳重でもそれは起こるんだろうなと思うと、どうしていいかわからん。
災害復旧援助隊
援助が遅いじゃないかと突き上げられているカナダの首相は今日ブッシュ氏とお電話でお話するそうだ。
PM says Canada ready to help
Martin will speak to Bush today B.C. team leaves
http://www.thestar.com/
(トロスタのURLは長すぎなのできりました。ご覧になる方はタイトルで引いてください)
遠いBC州(バンクーバーのあるところ)からは既にレスキュー隊が45名ほどルイジアナに向かったそうだが、大きな州であり、ついでにいえば東海岸なんだからハリケーンの道筋仲間ともいえるオンタリオ、ケベックの対応が遅い。トロントのあるオンタリオ州もつきあげられている模様。
で、州はともかく、連邦政府としては、災害援助対応チームとでもいうべき、Disaster Assistance Response Team(略称DART、へんだけど)が出ることになるかもしれないと上のトロントスターにはあった。
DARTの説明。
http://www.forces.gc.ca/site/Newsroom/view_news_e.asp?id=301
DARTは、以前にはカナダ軍がやっていた災害援助を独立させた部門。カナダ軍は私が記憶するだけでも、ハイチとかルワンダとか、戦火、暴動みたいなことが起こると結構マメに、熱意を持って出て行くし、こういう行動に対しての国民の支持は大きい。いいことだ、と。
が、おそらくこれが軍だ、という点で展開が遅れることが起こりえる。出すに出せない、と。で、実際遅れた経験がルワンダであって、それを機会に、なんであれ災害という時の迅速な対応が可能なチームを作った。
上の説明ページでもわざわざ背景説明をしているが、このことがすなわち、軍というわけではないのだを知らしめる必要性のあることを示しているといえるだろう。
とはいえそれでも軍は軍ともいえるわけで、どうなんでしょ、ブッシュ氏、カナダ、サンキューとなるのか否か。というか、そもそも、なんでアメリカで物が足らないなんてことを起こすのだ、ブッシュしっかりしろよとカナダ人たちはやきもきしている。
夕方のニュースのアナウンサーは、アメリカからは公式にカナダに助けを求める声はまだありません、しかし隣人はそんなものがなくても助けるものです、としめていた。
個人的には、隣人に限らずカナダ人って、おそらく自分たちは気がついていないだろうと思うのだが、災害となったら普通の人々のために何かしなければならないと思うその思い込み(悪い意味でいっているのではない)の強さについて、なにかあまり類例を見ない人々ではないのかとしばしば思う。イラクの戦争の時にも、戦争か否かなどという問題を超えて、イラクの人々はどうしているのか、水は食料はとまじめにそこにフォーカスをあてている人が大勢いた。全体戦争的な発想をしている人はそれどころではないのだと言うし、その線から語るのだが、そんなことは二の次三の次で、水と食料、寝る場所が先だと考える人が確かにいた。
恥ずかしい人々
私は自分がナイーブなことを言っているという自覚はとりあえずある。しかし、それでもこういうアプローチは、人々をしてヘルプしあうことの大切さや、感謝の気持ちをなえさせるという点で長期的には非常に非倫理的だろうと考える。もちろん必要な分析だ。しかし、必要な時と場合がある。他の場面ですればいいことだ。
と前置きしたが、これだ。
<ハリケーン>史上空前の救援活動 ブッシュ政権浮上狙うhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050901-00000033-mai-int
【ワシントン及川正也】米南部を襲った超大型ハリケーン「カトリーナ」被災地への対応で、ブッシュ米大統領が31日、史上空前の救援活動に乗り出した。イラク政策への不満などを背景に支持率が過去最低の40%に落ち込む中、01年同時多発テロで印象付けた「危機に強い大統領」のイメージを打ち出し、政権浮上への足がかりにする狙いがあるとみられる。
そう狙おうと狙うまいと、必要なものは必要なんですよ、毎日新聞。
印象づけられようとつけられまいと、救援は救援なんですよ、毎日新聞。
こうやって、自衛隊を出さないで助けられたものも助けられなかったことを覚えていないのか、毎日新聞。
それにしても、今考えてみるとものすごくばかげたことをしたものだ。なんであれ助けになるフォースがあるのにそれを使うことができなかったなんて。この件に関しては何百万回考えても、私たちは間違った判断をしたと私は考えている。
戦略備蓄放出
よりによってメキシコ湾岸なので、北米ニュースは、水没している家屋と家族を失った人々の悲しみに深い同情を寄せる一方で、ガソリンどうするんだ!と昨日から大騒ぎをしている。
NY原油(31日):反落、戦略石油備蓄の放出決定で売り−68.94ドル (ブルームバーグ)
http://money.www.infoseek.co.jp/MnJbn/jbntext.html?id=01bloomberg14aBj0AeO25faE