大げさなのはわかってる。でも潮目が変わった気がした

ウキウキしてしまった。
いやぁ、ほんとによかったよかった。イチロー、おめでとう、原さん、なんというかあなたったらやっぱり大物には違いない。作戦が駄目でも、起用が?でも、誠実さだけで勝てるか、とか言われようとも、でもなんだか、やっぱりこの人には何かあるんだなとか思った。


で、このWBCのニュースが日経に他の経済ニュースと一緒に出てるってのが興味深い。いや、いいですけど。

でもって、この勝利は私としては、やっぱり日本、長いこと野球やってるだけのことはあると思ったし、かつてに比べりゃ地位は劣ったとはいえ、国民的スポーツであるだけのことはあるとも思った。

なんでかっていうと、あのイチローの場面というのは、日本全国津々浦々の、全国5000万(当社データ^^;)高校野球ファンなら誰でも、ああ、こういう場面だ、オシ、と思ったでしょう。


今日の日経によれば、

指揮官の指示は「際どいコースのボールを投げて、うまくいかなければ歩かせる」。ベンチから捕手へ、捕手から投手へ、作戦はサインで伝達される。しかし、ベンチの意図は正確に伝わらなかった。

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090325STXKC081524032009.html


これぞまさしく、やってはいけないという典型的なパターンじゃないですかね、トーナメントとかの「ここ一番」で。


重大な場面を迎えた場合、例えばアナウンサーが、

川本さん、一塁が開いてますが・・・と振る。すると解説の川本さんが、


そうですね。ここはバッテリー、歩かせるのか勝負するのかしっかり確認する必要があります。迷っているようならベンチはタイムを求める必要がありますね。くさいところに投げて、良ければ三振を取る、駄目ならフォアボールというのは、こういう場面ではとても危険です。バッターは打ちに来てますからね、甘く入ったコースは全部打たれる危険性があります。ここはしっかり、バッテリー確認して欲しいですね。


(アナ)あ、監督が後ろを振り返って何か言っています・・・。ベンチから、誰か出ますね、あ、控えのキャプテンがマウンドに駆け寄るようです。


(川本さん)そうです、そうです。ここはしっかり意思を確認すべきです。


といった展開になる、と。


冷静に考えれば、こういう処置はまったく正しい。
なぜなら、
「際どいところに投げて」というのは、勝負を避けて歩かせるのもイヤ、でも、勝負する度胸または勝算もない、と言っているからだ。いかにも戦略的なことを言っているようで守ってる側は既に精神戦で負けてる。大げさにいうのなら守ってる側は戦略を捨てているといっていいかと思う。打者の凡ゴロかフライか三振を「願ってる」になっちゃう、と。


だからこそ、もう既に、かなり前から、こういう曖昧はいけません、こういう場合は戦略を確認する、ってのがほぼパターン化されてる。で、この戦略にあっては歩かせるというのはネガティブでも弱気でもなく、立派に、根性のある戦略(場合によっては塁を埋めた方がフォースアウトを狙えるとかもある)だ。そしてこの確認の内にチームのチームたる由縁みたいなものも出て幾多の名勝負を作ってきた。江川、お前の好きにしていいよ、みたいな。


にもかかわらず、ここでこういう場面を見るのかぁと感慨深かった。

でも、youtubeに上がっていたイチローの打席を見たけど、際どいところに投げて云々というより、ファールで粘られて、もう投げるところなくなっていたという感じもした。だから、さらに、もう戦略がない、ってな状態だったのじゃまいか、あのバッテリー。

7球目だったかのアウトコースを外したところで、表面的には「一息」と解釈されるだろうが、でも、これは弱気だななど私は思った。イチローはそれを見送って、うふふ、だっただろう。
で、問題の8球目。ここはもう、勝負を決意したのなら、胸元のボール気味の早い球で振らせる、とかいうのがベストショットだとは思うが(これなら打たれても仕方がない、攻めに行ったのだから、と理解される)、やっぱりその度胸はなかなかないんだろうなぁ、いわゆる腕が縮こまる、なんだろうなぁと、何かこう懐かしい気持ちになった。こういうのはやっぱり、高校時代の工藤とかでもなかったら、見たか、この野郎的に決まることはないんだろうな、みたいな。
一応インコース狙いだったんだと思うが、打ちごろの球になっちゃって、イチロー、きれーーーにセンター返し。


だけど、やっぱり、イチローを歩かせられない、勝負を避けたら国に帰れないから、歩かせるオプションがネガティブに拒否されている、しかし、真っ向勝負するんも腰が引けてる、になっちゃったんだろうなぁなども思う。

金寅植監督は「経験の少ない捕手で、作戦をきちんと理解できなかったのだろう。確かにベンチと捕手でサインの交換はしたのだが、混乱があった。はっきり敬遠を指示しなかったことが問題だった」と振り返ったが、そのツケは大きかった。

はっきり敬遠の指示をしなかったのが問題だった、とだけ言えばいいと思うんだが、まだバッテリーがどうしたとか言っているという点で、監督も、俺の一存でイチローを歩かせました、とは言えないのかな、とか思う。試合が終わっても、まだ、監督に覚悟がない、ってのがこの試合のすべてかもしれないなぁとか思う。


何事も、戦略と覚悟だと思う。
そして、日本は日本で、積み重ねて来たものってあるよなと思った。


あと、原監督という人は、16歳ぐらいから信じられないぐらいのプレッシャーの中でトーナメントをやってきた人なので、短期決戦で、それも派手な大会でチームを作って何かをする、ってな場合のコツ、ムードがわかってる人なのかもしれない。

少なくとも星野さんより1000倍ぐらい適任だったんじゃないかと思った。これって、本格的な、雑草主義の終焉だといいかなって思った。つまり、若い人を貶めたり、ネガティブな言葉で蹴散らして、そこから這い上がらせようとする手合いはもう効果的じゃないってことっす。若い人には若い人なりの根性のかけ方ってものがある。星野、ノムさんと同じでないからといって根性がないわけじゃない。さわやか根性主義の、マイルド松岡修三みたいな原さんの登場は、そういうことなんじゃまいか。潮目が変わったかも。


*お尋ねがあったので、川本さん。
川本幸生さんのつもり。現広島商業総監督でよく高校野球で解説をされていた。非常に明確で非常に正しいと敬愛の念を持って拝聴しておりました。川本氏らの師匠の迫田氏らが日本の「野球」のある種の形を整備された方たちのように思っている。まったく昭和くさい話だが。