先週のサルコジ


15日の金融サミットでは、さすがにドル基軸通貨問題を持ち出すほどにはお調子ものではなかったサルちゃんでしたが(だから直前にいろいろ言ったんだよね、きっと)、ドルよりも、ミサイルについての発言がなんだかよくわからかった。


まずEUとロシアの関係復調の動きがあって、これはこれでNATOもそっちに動いていたから別に不思議はない。
EU露首脳会議:「新欧州安保」協議へ 関係修復を強調
http://mainichi.jp/select/world/news/20081115ddm007030139000c.html


でもって、グルジアウクライナの加盟問題も、将来は入ってもらおうと思ってるんだよ、でもね、今はその時期じゃないと思うの(メルケルサルコジより)というお便りがまた出てました、という基本的に今年の4月と変わらない状態のまま12月のNATO会議を迎えるであろう。結局8月のグルジア紛争があっても変化しなかった。


8月が顕著であったように、この問題は米+英+東欧とスウェーデン、というのが推進派で、独仏伊+ベネルクスのまったくの西欧グループが慎重派。で、この中で、当然に一方の組の盟主は米だが、米は今ここに大きくかかずらうことはできない。こういう場合の常として英が動く。

8月はThe Economistを含む、ガーディアンを除く英メディアが団結して、ほとんど知性をかなぐり捨ててロシア叩きを担っていた。米にしてみれば、グルジアというより米のユーラシア戦略まで話さないとならないかもしれないこのテーマは大統領選挙の中で咀嚼できないということだったのと思うんだが、とりあえずポーランドチェコへのインターセプター配置をドラマチックに決めてみたものの(実際にはチェコは事件に先行していたのだが)、FOXはロシアの恐怖を壮大に騒いではみたものの、なんか尻切れトンボにも見えた。


しかし夏以降は金融に忙しいからなのか、どこからも特に目立った動きは見えなかった。当事者のウクライナ金融危機が最も目立ったかもしれないが。


全体として、何もかもなんだかしぶしぶで結局8月前に戻っちゃったみたいな情勢の中で、

Sarkozy: US missile shield won't help security
http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5ipnEHNnhSVLPIewLKLQg4S7LskGgD94ESHGG0


サルコジ氏、米のミサイルシールドは、欧州の安全保障のためにならないからさ、と言い出した。


報道を時系列に見る限りでは、NATO関係者はこの2日前ぐらいに、以前からの「公式文言」、つまり、米のミサイルシールドは欧州の安全保障にとって大事です、このシールドはロシア向けではありませんイラン他のならず者から欧州を守るためです、というのを繰り返していた。

だから、サルコジ氏の発言に、ポーランドチェコNATOは、え?みたいで(そらそうだろう)、それぞれの立場は変わってないですとわざわざ声明を出す始末。


NATO says still backs plan for U.S. missile shield
http://www.reuters.com/article/vcCandidateFeed2/idUSLH643022



なんなんでしょう?
意図がわからない。ついでに、ブッシュをおちょくってもいたと思う。
フランス国内向けに強く見せておきたいとかいうふざけた動機なんだろうか?


でなければ、オバマというより民主党はそもそもMD懐疑派もいるので、このプランそのものをひっくり返す機運がどこかにあるとか? 


一方で、グルジアウクライナの加盟問題の方は、なんとなくイギリスが折れているんじゃないのかという気はする。そもそも関係修復の方向で決着してること自体、8月前から見れば折れてるといっていいだろうし・・・。
今週のThe Economistが、ウクライナ、軍事改革するお金もないしね、ごしょごしょと、現状でのNATO加盟問題は駄目だろうと示唆している。
http://www.economist.com/world/europe/displaystory.cfm?story_id=12609773


とはいえ、結びは、こういう事態というのはつまり、EUが自分でロシアから離れていようとしてないのに、なんでアメリカがそんなことしてやらないとなんないのよねってことだよね、など書く。一見ご無理ごもっともだが、従来、マケインまがいにこの2国を加盟させるべきと言っていた雑誌だったわけで、そこからすれば、このプランはダメポをあっさりお知らせしているということか。

なんつーか、英にとってのグルジアウクライナって、こんな感じ、軽いわなぁ、ですね。


もっと大きく考えれば、対ロシアはこのラウンドはもうお仕舞い。石油が20ドルになったら敵じゃねーぜ、ガハハ、ということかもしれないなんても思うが、そんな短期的な話のわけもないよね、やっぱり。


なんなんでしょう、この動き。
MDを欧州大陸に設置してしまうと、恒常的な対立軸を文字通り具体化してしまうので、実はやめたい西欧勢ということだろうか?なんても思う。しかしそうならそれは、米の対ロシア戦略を見直せよという意味にもなってくるんじゃまいか。どうなんでしょう。来年になればわかるんだろうけど、オバマ政権って、むしろ共和党よりも執念の対ロシア強硬派も背後にいるわけで、そうそう簡単にいくとは思えない。


しかしハイパーアクティブな男だ、サルコジ氏。