支持固めと必敗パターン

まったく本質的に重要なイベントとも思わないし、今回に関してそうなるようにも思えなかったが、米国大統領選挙の副大統領候補のディベートを見てしまった。

カナダ人の中には、ディベートと呼べるものが見られるのかどうかがまず問題のディベートというイベントでしょうが、とか言う人もいて、まぁ私もそんな具合に思っていた。期待値が低いのはもちろんペイリン氏のせいよ。


で、見終わって、結構楽しんだ後にネットの中を見たら、

CNNテレビの調査では、バイデン氏に軍配を上げたのは51%、ペイリン氏が勝ったと答えたのは36%だった。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081003-00000068-jij-int


まぁそんな感じかな、で、

おお、なんか、え、えええ?みたいに思った日本の記事。難関乗り切ったというんだろうか、あれを・・・。


米副大統領候補が討論会、ペイリン氏は果敢な攻撃
10月3日11時29分配信 読売新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081003-00000016-yom-int


まぁ読売だからなの?とか思っていたら時事も同じ。


ペイリン氏、終始攻勢で難関乗り切る=首長経験強調、バイデン氏挑発も−大統領選(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081003-00000065-jij-int

ペイリン氏は、最近のテレビインタビューで的を射た回答ができず、資質を疑問視する声も出ていたが、金融危機への対応や外交・安全保障をめぐる1時間半の討論では、用意した資料を見ながらも大統領候補のマケイン上院議員の見解に沿って慎重に発言し、大きなミスもなかった。


で、思うに、これを「大きなミスがなかった」と言い切ってしまえるところから、こうした評になったのかなど私は思ったりする。


日本にはディベートの習慣がないから、発言の一つ一つにミスがないならミスがない、と言い切れてしまうということなのかしらね、と。


ペイリン氏はミスというより、ディベートとしてはほとんど失格だったと捉えるのが米人、カナダ人、イギリス人他ではなかろうか・・・。


なんでかっていうと、質問に答えてなかったから。
こんな「エライ人」のディベートじゃなかったら、司会者から、「質問に答えてください」とかの注意を一切ならず受けてた仕儀だった。

だらった聞いていた、ネイティブじゃない私でも、多分半分ぐらいは質問と答えがあってなくて、2回ぐらいは、パスしちゃったも同然だったし、意図的に、答えずに、自分でテーマを変えてしまったこともあった。えええ???? とテレビの前でひっくり返った人も多いと思う。私も声をあげたっす。

従って、ディベートという観点で見たら、ペイリン大負けといっていいと思う。なんか、この人、学校教育が不完全なんじゃないのかとさえ思ったぞ、私は。でもって、基本的にディベートの国で育ってない私がそう思うんだから、今日のアメ人家庭内の採点はもっと厳しかったと思う。質問に対して、自分が不利だとしても答えないとならない、ではどうやって、それでも事実に立脚してどうやったらフェアに、いやむしろフェアに見えるように答えられるかを競いつつ実力をつけるというのを基本的に立派な行動とみなしているこの国で、いきなり答えないで自分の発言にいっちゃうって、何よぉおおお、だったと思う。


あと、なれなれしいんだか、それとも地方語ではそれが普通なのかわからない、公式の場としては???な言葉使い、トーンみたいなのも人によってはマイナスと捉えている人もいるそうな。


なんかこう、ブッシュ政権が立派に見え、ヒラリーなんか神様のようだと思う今日この頃。


バイデンは、期待以上に詳しいんだな、このおじさん、さすが長いこと議員やってるわけだし、ってのが評になるだろうし、その他に、今日は笑顔やら感傷やらまで売っていた。

基本的に余裕でべらべら演説しちゃうトーンになりなちなところで(だって相手が討論してないから、演説の試合になってしまう)、それを予想してか家族とか自分のホームベースの町の話で多少お涙系の要素も加えて、多彩な老練政治家だわな、を再確認させたような感じか。


これはフィナンシャルタイムスの記事だけど、マケイン・ペイリンが勝つにはゲームの流れが変わるような何かがないと無理っしょ、みたいなことを早速言っていた。

McCain-Palin ticket needs a game-changer
http://www.ft.com/cms/s/0/a81a27c2-9101-11dd-8abb-0000779fd18c.html



私もそう思うんだなぁ。特にペイリンさんは、なんというか、言葉が非常に妥当ではないのはよくわかっているが思いついてしまったので個人のメモがてらに書いておくと、なんかこう、

特殊な除草剤をまいたようなことになったらどうするの、マケイン陣営?という感じ。


つまり、それでもペイリンは勝っていた、として譲らない人はいるが、それは、
1)誰が出てきてもそう言う、絶対民主党に入れたくない共和党員か、
2)こういう人が好き、
という人ぐらいしかいないだろうという戦前から予想されていたその予想を、がっちり固めてしまって、それ以外の人が寄り付けない、1)&2)以外の人、すなわち無党派の人たちとか、共和党員の中でも、ちょっと系統が違う人には免疫がないので、寄り付けません、ノックアウトされました、枯れてしまいました、う〜ん、みたいな・・・。


ペイリン派には申し訳ないけど、彼女の宗教がらみの基本姿勢だけでもその可能性があったのに、一連の外交関連のインタビューの後にこのディベートが来たら、こうなるしかないのではないのか?


ただ、ひょっとしてそれこそがマケイン陣営の狙いだったとかいうのも、あるいはなくはないのかもしれない。すなわち、西海岸、東海岸と、多分五大湖周辺を捨てて、残りのところを固めるにはこれが一番、みたいな・・・・。苦しい言い訳のような気もするけど、可能性としてはあるのかも。


ただ、万一そうやって勝ったら、その後が苦しすぎるだろうが、というのが相当問題だと思うが。


いや、でも、このディベートの中で、ゲイの結婚問題についてペイリンは、バイデン/オバマと同じく、結婚の定義を変えることには反対だが、それ以外の法的な諸権利は認める、と言ってしまった。
これもかなり、へ? 今そう言ったよね、ええ、いいのぉ?だった。

Palin, Biden agree on gay rights at debate
http://www.reuters.com/article/politicsNews/idUSTRE49212F20081003


マケイン陣営の必勝戦略がわからない。


FTの上の記事が見過ごされがちだが多分重要なこと(と私が思うこと)を拾っていた。

First, both Mr McCain and now Ms Palin have great difficulty concealing underlying feelings of contempt towards Mr Obama. During the debate Ms Palin was polite towards Mr Biden. But she used derisory terms, such as “dangerous” and “reckless”, about Mr Obama in an often heavily sarcastic tone.

マケインとペイリンが、オバマに対する侮蔑感を隠せないでいる。ペイリンはバイデンには丁寧だったが、オバマに対しては、しばしばあてこすったような言い方で「危険」だとか「向こう見ず」といった形容詞をふりまいていた、と。

で、これはマケインを踏襲してるんだろうが、世論調査をか見てるとあんまりよくないみたいだよ、と指摘している。


これもまた、上の特殊除草剤説(私の思いつきだが)を強化しているよなぁではないのかしらね。

つまり、明らかに、リベラル嫌いの人には多分パーフェクトに受けるんだろうが、それ以外の人が見ていて気分のいいものではない=伸び代がなくなる。

どこかの書き込みで読んだが、マケインは自分がそこにいる権利と同じ権利をオバマが持っていることを認めるべきだ、と書いていた人がいたがそういう感じ。同じように国民の信任を受けている人を前に、侮蔑的態度はないだろう、と。

でも、それがマケインなら、それはそれなりに理由とか背景とか、人生観とかいろいろあって理解もされることがあるだろうが、ペイリンがオバマを馬鹿にする態度というのはほぼ誰にも受け入れられないだろう。

やっぱりどうやって勝とうとしているのかよくわからん。
もしこの特殊除草剤が意図的に取られていて、ターゲットの畑には実際有効で役に立ち、それが必勝パターンだというためには、その畑が勝ちに足るほどに大きい必要がある。現状では、冷静に見て、あまり大きいとは思えない。どうするマケイン陣営。