距離はお金

まさに予想外。
カナダ中銀が金利を3.00%に予想外の据え置き、利下げ局面終了を示唆

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-32193420080610


昨日までの何日か何週間か、ほぼすべての人が0.25の引き下げ(つまり米国を追いかける形)だろうと予想していた。昨日時点のプライマリーディーラーの予想は100%そうなると読んでいたためなんだろうと思うが、このサプライズに対して、これは間違い、とか平気で言っちゃうアナリストもいるというのが半日経った現在のカナダ。

で、そうなった理由は一般にインフレ懸念のため。ただ、急激なインフレというモメントはなかったと思うし、基本的に対米ドルでカナダドル高のまま止まってる(去年に比べれば円高のままなのと同じ)ので、原油等の高騰を若干吸収しており、そんなに心配するほどなのか?と考えることもできた(と思うからこそ利下げをみんなが見込んでいた)。一方でそれよりカナダ経済が落ちてきてるか減速予感の方が怖いじゃないか、という懸念は(ずっとあるが)ある。その中で、マーク・カーニー中銀総裁はインフレ懸念側にたった、と。


ふと、冗談だけど、でも、これって、ジェフ・ルービンの呪いか?など思った。

 カナダはこれまでのところ世界的な食品価格高からの圧力をほとんど受けていないが、カーニー総裁は、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長やトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁同様、インフレ警戒姿勢を示した。

そう、カナダは、食品価格高騰に悩んでいるという状況ではない。
ではどこに懸念の糸口があるのか? 輸入してくるものすべて、じゃないのか、と。


つまり、原油価格高騰→ガソリン高いっす→輸送運賃高いです、の連鎖であっちもこっちも、去年まで(あるいは3年前とか5年前とか)、安いものをこっちに持ってこれる、という話が生きていたわけだが、その運賃が上がった以上、もう、それは限定的になるな・・・との懸念が現実にそうなる前に一通り行き渡っている感じがする。

で、2週間ぐらい前、ジェフ・ルービンという地場のCIBCという銀行のチーフエコノミスト(と、なんか銀行の偉い役職もあったと思う)が、

In a world of triple-digit oil prices, distance costs money.

原油価格が3桁の世界では、距離はお金がかかるんですよ、これからは、インフレです、と、なんとうか、殆どご宣託のように非常に強い印象を残していた。(確か、翌々日だったかに同趣旨でアメリカのビジネスウィークにも登場して、ガソリン7ドルを考えてみろ、みたいなことを言って、BWの司会者が青くなっていた。)


この話が、非常に強く印象が残ったのは、私の場合は一つ理由があって、個人的にその数日前に、最近の航空券の値上がりぶりってのを知って、ガソリンの値段が下がる時が来るとは思えない(そう簡単に)としたら、今後はもうこの金額を見越さないとならないんだなぁ、なんてことを考えていたから。

まさに、距離が遠いということは、その分ガソリンを食い、この距離の対価は昔は例えば航空会社の努力等で部分的に相殺できたこともあったが、もはやそんなまねはできそうにない(そんなレンジにない)。

(でも、誰でも最近考えているだろうから、私だけじゃなくて、遅かれ早かれ、みんな我が身で気がつく、となる話だ)


で、ルービンは、それで何を言おうとしているかといえば、チャイナ他の低賃金の優位性が壊れてくるぞ、ってな話だった。地球を半周してくるんですよ、と。それに比べればピッツバーグで鉄を買えばいいだろうし、実際そういう動きはある、ってな話だった。



中央銀行総裁の判断は、まぁこれとは独立としても、とりあえず、ジェフ・ルービンがテレビ(またはビデオクリップ)を通して言うと、少なくとも私のような一般大衆は、覚える気がなくても覚えてしまう、みたいなところはあるかも。悪役俳優みたいな顔して(きれいな中年後半男であることは間違いないが、非常にくどい顔なので好みが分かれる)、大衆が絶対わかる大胆な言い方をする。



どういう経路でも影響でもいいのだが、インフレはやっぱりほどほどでおしまいにして欲しい。いやしかし、パンの値段も問題だが、航空運賃はなぁ〜、もう、笑いが出るほど格安とかないっすね(だって高いのが燃料なんだもの)。


いやいや、個人の感想に流れて腰が折れたけど、要するに中銀がこう判断した、ということは、ルービンに代表される意見の方がより深刻な現実なんだ、懸念とか言ってる場合ではありません、という判断の判断の表明である、とも言えるわけか。やっぱりインフレか。