論よりインタゲ


ふと思うに、インフレターゲットがどうしたこうしたを論じていると、インフレという語によって、インフレ暴騰の方にだけ関心が行ってしまうのかも。そして、インフレをコントロールしながら経済は進んでいるわけですよ、という観点が社会の中から失われてしまう。

カナダ中央銀行のトップページのように(インタゲ採用しているところはどこもそうだが)、今私らこのへんよ、というのを日銀も示してしまえばいいのではなかろうか。

これがトップページ。右上の一番目立つようなところに、
Inflation-control-targetってのがかわいくある。

http://www.bankofcanada.ca/en/index.html


今の数値は2008年1月のもので今はだいたいターゲットレンジ内にありますね、ってのが一目でわかる。で人々はもうすっかりこのレンジに慣れているので、1から2ちょっとぐらいだったら心配ないというのを経験値で知ってる。今少し怖いかも、ではあるけど。

過去のインフレ動向はこれ。
http://www.bankofcanada.ca/en/cpi.html


でもって、そのすぐ下にはオーバーナイト金利が出てて、これがいわゆる公定のもので、あんまり景気が過熱するとこれを上げて、物価もだいたいそれにつられて、みたいな動向が人々に共有されていくことになってる。つか、経験値でそうなってる。


ついでにそのすぐ下には、米ドル、カナダドルの本日の交換レート代表値が出ている。
このレートは税金の確定申告等々で収入を確定する場合でも、これを使えと指導されるから結構人々が使うように向けられているし、実際使いやすくできてる。私も毎度お世話になってる。


つまり、カナダ中央銀行はかなりのところ、皆様と共に中央銀行やってますという態度が明確だといって良いかと思う。こうすることによって、金利政策は象牙の塔の偉い人がやってるのじゃなくて、みんなで納得してやってるものですからねという態度が表明されているとも言えるだろう。


対して日銀。
http://www.boj.or.jp/index.html

主要指標が下にある。自分の仕事分担を目立つところに置いてどうするんだ、というのはまぁ日本の役所の特徴でもあるので仕方がないような気もするが、やっぱり関係者にしか関係ないところだと自分でも思ってる態度がありありと言っていいかと思う。


で、ここに、インフレのターゲットと書いてしまうと問題が出るのなら、現在のインフレ率とかをずっと表示してみたらどうだろう。(要するに同じだし)
そうすことによって、インフレとは断固コントロールするものだとい姿勢を人々と共有できるようになるのではないのか。


そこからなら、それを少しinflateする、ということがどういうことなのかがわかるのじゃないのか。同時に、例えば金利動向とかから今はまずい、と判断し得る人々の数も増える。勿論、何にせよ異論はあるにせよ、論、言葉だけではトリッキーになる可能性が多いのではなかろうかと思う。


[捕捉]
先進国でインフレ目標の下限がゼロ%の国ない=伊藤日銀副総裁候補
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-30759320080311

伊藤副総裁候補は、日銀のあるべき姿と果たすべき役割について「金融政策の最大の責務は物価安定との認識が各国研究者や当局の間で共有されている」とし、「この場合の物価安定はインフレ率は低いがマイナスではない、一定の範囲内に収まっているという意味だ」と定義した。

まさにそういう中で生活している私としては、だからこそ、物価が高い、インフレ率が上がってるわ、と文句が言える。ターゲットがなかったらどうしろと?

あと、インフレ目標、じゃなくて、「インフレ管理目標」と言い換えた方がいいのでは?
inflation-control targetがバンクオブカナダの正式名称なのは、そのへんの意味をはっきりさせているからじゃないかと思う。実際英語的には、inflation targetと言われたら、インフレをわざわざ起こすのか、と思うのがむしろ自然かもしれない(日本では技術用語にしてしまっているから専門家たちがなんとも思っていないのかも)。


[捕捉2]

 その上で、武藤氏を不同意とする理由に関して「財務省そのものの人物であり、日銀の独立性が担保できない」とし、11日の衆参両院での所信聴取・質疑を受けても「ますます不同意の思いを強めた」と指摘。

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities/idJPnTK010157020080311

どうしても省庁の益のために働く奴だ、という証拠ってあるの?
というか、具体的にどんなことができるんだろう?


ちなみにカナダの中央銀行総裁マーク・カーニーは、若い人なんだが、振り出しはゴールドマンサックス、次が短期間財務省の上級職員で今年から総裁。

その前のドッジさんというおじいさんは元々は学者さんで、その後財務省のやっぱり上級職員になって、次が総裁で今年めでたく退任。


こう並べてみると、むしろ金融行政を知った人であるために財務省管轄に一回入れてから総裁へ、がカナダの志向している道なんじゃないのかしら。カーニーの就任にあたっても、若いですけど民間でも財務省でも経験がありますからね、とめでたがっていた。

暇があったら各国中央銀行総裁の経歴を探してみよう。