リベラルはどこに行くのだろう

昨日はみぞれ、今日は雨が降ったりやんだりで、しかしながらだんだんと気温レンジがプラスの一桁に慣れてきた感じがする。がんばれよー気温。北風に負けるな。現在だいたい3度。夜になってマイナスにならなくなってきたらしめたもの?

そういう不安定な時節なのだが、このネタも不安定じゃないのかぁと思ったのをひとつメモ。
カナダのリベラルが混迷中だと前にも書いているけど、今日もその話。


リベラルのリーダー、ディオン氏が、グリーンという環境問題専門の小さい小さい党の党首の人の選挙区に今回はリベラルの立候補を見送ると発表。その代わりにグリーンはリベラルに対抗するような候補者を立てない、という・・・。この、その代わりに、の部分はまだ確定とは言えないらしく、いわゆる、ソースは言っている、の段階なのだが、なんにせよ、これってディールになる??? 

Liberals won't run candidate against May
http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20070412.wgreendeal0412/BNStory/National/home


普通に考えれディール、取引になっているとはちょと言えない。誰がどう見てもリベラルの集票力とグリーンのそれは比較にならないから。もちろん、場合場合ではリベラルにとって援軍だ、ということもあるだろうが。

そういうわけでこの事態は、この党首、メイさんという女性なんだが、この人が当選するようにリベラルが押している、と言える。この人が出る予定の選挙区(ずっと出ていたとか地場にしてるというわけではない)は強い現閣僚の保守党候補がいるのでリベラルが押さなかったら多分勝てない。押してももちろん確証はない。そうまでしてこの人をリベラルが味方につけたいならそれでもいいだろう。


メイさんは環境についての活動家として知られているし、親ごさんもそうだそうで、これ系では非常に強力な人らしい。一回か二回か三回かそういえばテレビで見たことはある。はっきりした、感じのいい明るい人だったような気はする。でもって、カナダ人というよりなにか、著しくアメリカの民主党くさいとも思ったりした。

一般的にはどうか知らないが、私にはこの区分は結構明瞭。多分私が外人だから、目に、というか耳につくんだろうと思うが(一応私もアメリカ滞在暦がある)、アメリカがかぶってる人の話はカナダ人より(あくまで外人である私にとってだが)わかりやすい。いやしくも意見を発表する場にある人の話はだいたい明瞭と相場は決まってる。おそらく、カナダ人は日本人がそうであるように内国人的に話す人々なんだろうと思う。あんまり上手く言えないが、雑駁に言うと、カナダ人(または日本人も)はみんな知ってることをみんな知ってるからネグって話してしまう傾向があってそれに気づいていないが、アメリカ人はどうあれ未知の人に向かって組み立てて表明する、と。まぁあまりあてにならない区分だが、とりあえず私にとってのセンサーとして機能しているからまぁいいかのマーキング。


と思って、ひょっとしてマジでアメリカ人だったりしてと思ってあわててwikiしたら、あら、18歳までコネチカットで暮らしていたアメリカ人だったのね・・・。
http://en.wikipedia.org/wiki/Elizabeth_May

お母さんが有名な反核団体のオリジナル・ファウンダーの一人で、アメリカ時代は裕福な家庭環境でお嬢様の進学校というのか、そういうのに行っていたがカナダに移ってからは主にその活動のせいで経済的には大変だったのだそうだ。そしてビル・クリントンともお友達で、今もNGO活動に熱心だ、と。


と書いて、別に私はこの人に対して何がしかの反意を唱えたいとかいう意図は全然ない。こういう人はどこにでもいるし、こうしたバックグラウンドに対して私は私なりに好意的である場合もあるし、そうでない場合もある。


それはそれとして、問題は、リベラル・リーダーの選択としてはつまりその、リベラルは環境方面に突っ走る覚悟でも決めてるんでしょうか・・・という点・・・だけでもないと思うが・・・。

上で紹介した記事にもあるが、すでにリベラルの中で、リベラルは全国をカバーする党であるべきなのに、シングル・イシュー、ひとつの問題だけを取り上げる党になるつもりなのかとか、全国党だったらどの選挙区にも候補者を立てるべきだろうとかいろいろ批判が出ている模様。


いや、そんなことよりも、グローブ&メール紙はなんにつけてもあんまり厳しい突っ込みをしないでだいたい適当なところで話をやめる傾向が多分ちょうどいいという感じで生きているから(私の評)これでよしだろうが、各選挙区ではもっともめているだろう。


そもそも連邦レベルのカナダの政治事情は、雑駁にいって、たとえばこんな感じ。
http://www.politicalcompass.org/canada2005

有名なポリティカル・コンパスの中に出ていた例なのだが、ざっくり当たっていると思う。
上下の権威−自由軸で、ほんの少しだけ権威に寄って、コミュニズムネオリベラリズム(経済自由主義)軸では、より右に保守、より左にリベラル、しかし両方とも4つの枠の右上の枠に収まっている。今日の先進国の政党の最多地帯じゃないのかしら、というところで、イギリスの労働党など言うところの中道保守というやつがここだろう。

だから、カナダの保守とリベラルの差異は名前ほどにはない。保守の左とリベラルの右はくっついているようなものだし、コンサバ(保守)で当選していとも簡単にリベラルに移って物議を醸した人もそういえばいた。極端な例だが。


でもって、[グリーンはもとより]リベラル左派 も、あきらかにこの枠にはいない。
ということは、現在のリベラルの中にはグリーンとは合わない人もいっぱいいると思う。いてもいいのよ、とにかくアンチ・ステファン・ハーパー(現在の首相)ならなんだって、ということだろうか。そうであれば、勝っても負けても混迷路線に行ってしまうのではないかと私はリベラルのために危惧する。


ついでに言えば、ステファン・ハーパー率いるいわゆるネオコン組の保守が主流に立とうとした時、ものすごい勢いで、あいつらはアメリカのネオコンの手下だ、と騒いだ人々がリベラル内かリベラル支持者の中にいたわけだが(そういうCMまであった)、上の様子からすると、この女性もアメリカ仕込みである可能性がそこかしこに見えるのではないのか、という疑義はないんだろうか。ここが不問に付されるか否かというのは今後の興味の焦点かもしれない。リベラルなら、または環境問題に熱心ならアメリカもOK、保守ならダメとかになるのかな?どうだろう。


ふとこう、まるで日本の民主党のようになってきた、と言ったらやっぱりカナダのリベラルはまだ怒るだろうと思うし(去年の元旦にはまだ政権取ってたもんで)、まだそこまでは、とも思うんだが、予断は許されないんじゃまいか? 少なくとも、今のリベラルは、政権を取るほどにいたか、潜在的にはいるはずの数多くの支持者の大多数をがっちりつかんでいるとは言えないかもしれない方向に向かっている気配はある。


苦しくなるとより左に[向]くものだという法則でもあるんだろうかと、つい先週の都知事選を思い出す。これってなぜ?[それもまたある種決まった方向に。]


保守党も、実は前に大混迷時代を経ていて、穏健な伝統保守というべき保守と、ネオコン保守がここ数年で合体した。というより、有態に言えば、伝統保守ネオコン時流に飲まれて乗っ取られたといっても過言ではない。が、オンタリオなど州レベルでは今も伝統保守の保守党の流れは強く、現在の州レベルの保守党リーダーは全然ネオコンではないがそれで揉めているとも悪いとも別に思ってない模様。苦しくなってより右に行ったような感じだったんだが実際にはそうでもない。これはこれで興味深い。