国内産内外格差


本日の朝日英語版。19日

Abe demands an apology
http://www.asahi.com/english/nation/TKY200501190137.html

Shinzo Abe, acting secretary-general of the Liberal Democratic Party, has demanded an apology from The Asahi Shimbun over a report that said he had pressed Japan Broadcasting Corp. (NHK) to revise a documentary about a mock war crimes trial.

現役の自民党の幹事長である安倍晋三氏が、戦争犯罪模擬裁判に関するドキュメンタリーを見直すようNHKに圧力をかけたと報じた朝日新聞に対して謝罪を求めている。


NHK lodges new protest
http://www.asahi.com/english/nation/TKY200501190134.html
NHK新たな抗議

NHKが報じられた内容は一方的で誤りもあるとして抗議している。


Asahi special page defends NHK story
http://www.asahi.com/english/nation/TKY200501190131.html


こっちは12日の記事について1ページに渡って自らの主張を擁護するために特別ページを設けた。
日本語版でいうこれ。
NHK番組改変問題、本社の取材・報道の詳細
http://www.asahi.com/national/update/0118/004.html


そういうわけで、1日遅れで日本語版と同じところまでは「誠実にも」到達した、と。ということは、紙面からはどちらかがウソを付いているということになっている。


しかし、国内的にはウソでもない展開だとは言える(元ネタがウソだったとしても、展開自体は、という意味だが)。


が、この問題は、政治家が圧力をかけたか否かの問題「だけ」なのか(繰り返すが元ネタがウソでも)。
日本国内を見回せば、そうでもあり、そうでもないから人びとが騒いでいる。誰でも知っている通り、問題になっているのは安倍といえば北朝鮮の政治家だからだ。そして、本人の申し開きとしては、テレビで何度も北朝鮮について言及している。これが妥当か否かも問題だが、ともあれ本人はパブリックに大音量でそう言っている。だから日本の中の人びとは騒ぐのだ。


ところが、外から見た時にはそうは見えない。保守系の政治家が圧力をかけたという話が走り、その件で日本にはこの政治家を庇う人がいる、という話に落ちる可能性もある。


JAPAN: Abe won't testify on NHK censorship
http://www.asiamedia.ucla.edu/article.asp?parentid=19642


17日のJapan Timesの記事だが、これなどは、テレ朝に安倍が出たことまで書いてあるのに北朝鮮についての言及がない。あの番組のハイライトは北朝鮮への言及であったと言うことも可能だっただろうに。で、国内的にはあまり問題になっていない話、国会で証言するか否かに焦点が置かれている。日本にいて書いてるんでしょ、これ??

Abe made the comment on a TV Asahi program, saying that a report by the Asahi Shimbun was a "completely malicious invention" for claiming that NHK caved into political pressure from Abe to alter the content of the 2001 TV program.


そういうわけで、なんだかなぁ。内外の視点の違いがどうしたこうしたと長年言い続ける人は多いわけだが、その外の視点ってのも存外に国産かもしれない可能性は少なくともないとは言えない。


左派のものだってのは割り引いても興味深い記事の乗るイリギスのガーディアンなんか、なんだかなぁ、だ。Friday January 14, 2005の記事。続報はない。


Getting a bad reception
http://www.guardian.co.uk/japan/story/0,7369,1390744,00.html

After almost 60 years in the business, Japan's public broadcaster, NHK, must have become accustomed to mixed reviews.


およそ60年続いている日本の公共放送NHKは、異なった視点からの評価に慣れなければならない、とそれはもっともなことで、まったくおっしゃる通りなのだが、こう書く時この著者が持ってるのは、NHKがestablishmentの視点だけを反映している、という前提なのだ。だからこそ、天皇ヒロヒトが有罪になった部分を落とし、性的奴隷の部分を削ったことを書いて、女性の権利団体のNishinoなる人の「NHKはジャーナリズムの魂を売った」なる発言がこの記事の中で生きるわけだ。


ところが実際には、確かに主催者にとって「大事な部分」が落ちたとはいえ、異なる視点から作ったプログラムを出したことから起こったわけで、さらにいえば問題になったプログラムに限らず、ETVは左っぽいというのはむしろ定説でもあったのじゃなかろうか(噂によれば左遷されたプロデューサーの吹きだまりになったから、という話もあるが)。


どちらかと言うなら、ないのは右だ。極端な右翼をまとめたものの方だろう。こっちも同等に出せ。もちろん、どれだけでも極端なものを表示することの結果が、多くの人はそのどちらにもいかないという結果になるのか、とてつもない変動が起こるのか、それはわからない。(私は当然前者を希望し、かつ信じているものだ) しかし、隠しておくことで、どちらかが不必要に大きく見えたり、神秘的(笑うが)なまでに大きく見えたりするよりはいい結果を生むし、人びとは自分の判断に責任を持たざるを得なくなるという意味でもいいと私は考える。


ま、テクニカルには、その時、公共放送が右翼の主張を流したとかいう英文の記事が出て、ガーディアンが軽卒なまでの早さで、軍国日本の見出しを踊らせないことと、それに即答する日本人の自称リベラル、私の個人的な判断ではただの「走りネズミ左翼」が、国際的に大変なことになっていると騒ぎ出すというクローズドなサーキットへの参加者が可能な限り少ないことを願うばかりだが。