消費税食品非課税の効用はそれ自体よりも大きいかも

クリスマス商戦は総敗退であろうとみんなが言うにせよ、とにかくクリスマスは来る。まぁなんつーか、清く正しく慎ましいクリスマスで良いではないかと思うが、しかし、みんながそうすると慎ましいですまない事態が発生するというのがこの世の中の難しいところだなぁとしみじみ思う。


一方で、日本の母は、このごろは、何でもかんでも値上がりしてるのよ、と買い物に行く先々でご飯を食べに行った先々でそう感じると言っていた。私も母もお出かけ大好き、お買い物大好きなので、こういうのは敏感かも。でも、おかーさん、いや、こっちはもうそれが日常化していて、今年は多分日本の比ではなかったわけですがと一応言うには言ったが、聞いてもらえてなかった気はする。


その腹いせじゃないけど、ふとそこで思うに、日本の場合ここしばらく物の値段が上がらない状態が続いていたので、上がるという事態に過剰に反応している人もいるんじゃないかと思ったりもした。

もちろんそれが悪いというのじゃない。

そして、もう一つ日本にとって特徴的な反応というのもあるような気がした(ま、母を見ながら一般化しているのでバイアスもあるだろうが)。

それは多分、日本の社会が高齢社会だという点。平均年齢みたいなのが非常に高いという事実問題を出される以前に、ざっくりとした感覚では、アメリカ35歳、日本55歳、カナダは40歳ぐらい、みたいな感じが確かにする(年齢に根拠なし)。


で、高齢になれば、一般的に将来の収入の増減の増への期待値が小さい。年金世帯になればなおさらだが、そこまでいかなくても年を取るごとに増加への期待値を高めることはできなくなる人が増える。それがまぁ高齢っつーことだが。

その上、まずいことに、日本の社会は、もう10年以上も利息がつかないに等しい事態を営々やっている。この富の移転によって私たちの社会は不良債権を片付けたわけですよ、とマクロでみればそうかもしれないが、そんなことは個々の人生にとっては関係ない。自己の生活防衛にとってはマイナスの事態がこんだけ続き、さらに続くと見込まれている。


こうした中にあっては、物の値段が上がることそのものに、それがどんだけ小額だろうが、拒否の姿勢が強まるのも無理はないと思う。で、これはかなりの資産がある人でも事情は同じだと思うの。人は不労所得が適度に入ってると思えば、多少の損(じゃないんだけど)も引き受けられる余裕が生まれるんだろうが、一方的に減っていくだけの資産はできれば減価させたくないとなるのが人情なんだろうなと思う。


要するに、物の値段が上がれば、自分の給料もあがる可能性がある、つまり全体としてインフレになるんだ、ってな話から外れる人の人数が多ければ多いだけ、全体としてはデフレ歓迎ムードになるんだろうな、など思った。


逆にいえば、人口の平均が若いところにあると、インフレ気味である時間の最初の何ヶ月か何年かが自分にとってマイナスであっても、いずれ調整可能であろうとと合理的に期待できる。ちょっと大変な時間が続くが、なんとか対応できるよ、と説得することが高齢社会との比較で楽になるんでしょう。


いや、歓迎したからといってインフレが来る、ってものでもないし、そうは問屋が卸さないものだとは思うが、全体としてのインフレ期待値をさらで醸成できない社会的要因というのはあるんじゃないのかなと思った。特に政治家はなかなか言えないでしょう。たとえ上限2%であっても。


でも、このままかかとがのめり込んだままの経済を持ったままでは、日本どうするよ、だ。


そこで、ふと、
Baatarismさんのところの、


2008-11-14 みんな大蔵省・財務省にすり込まれてしまったのかな。
http://d.hatena.ne.jp/Baatarism/20081114


を読んでいて、みなさんが消費税の食品非課税とかあっても良かったんじゃないのという話をしてらっしゃるのを見て、おお、と思った。そうだよ、それってグッドアイデアじゃないの?と。


そもそもカナダはそうです。
売上税は、やっと下がってもまだ13%(州により異なるがだいたいこのへん)もあるという、やめろーーーと叫びたいぐらいの感情が年に3回ぐらいはあるという国だが、基本的な食材(スナック菓子などは課税対象)、家賃、医療・法律・教育、金融取引サービス等は非課税。


この効用は、誰でもわかるように所得の低い人にとっての負担を軽減しているということ。


それだけでなく、私が暮らしてみて思うのは、こうしておくと、税率に関する政策論議がぐんと楽なんじゃないかと思う。つまり、税制とか予算とかの話をする時にここの人たちは常に、真ん中の人たちがどうなるかを中心に考えてるように見えるんだが、真ん中の多数世帯が耐えられるか、納得できるか、で話をすると、所得の低い人たちが困るってところで腰倒れしないから。景況にあわせて税率を上げたり下げたりがやりやすいとも言うと思う。


そう書くと、低所得者の排除みたいに聞こえるけど、実際問題として、あちこち控除を設けて実効税率はかなり低いという構図になっているし、その上で基本的な物品の売上税もないんだから、とりあえず税制として現在低所得の人たちに対してできる配慮はしてます、といえる(欲を言えば切りはないにしても)。
大金持ちの方は、好きにしてください、というつもりなのか政治的論争ではあまり関心を呼ばない。


お話を日本に戻すと、
年金世帯と低所得者というのは同じではない。
お金持ちの年金世帯も多くあるし、低所得者が常に低所得者ではない。単純に今年は失業していただけかもしれないし、若ければ多くがそのカテゴリーに入るのが常。

でも、両方に共通して、今現在自分の購買力が小さくなることに対して非常な拒否感があるという点では一致している。


ここを緩和すると、景況感を維持するための政策が取りやすくなる、ということではないだろうか。
また、多分、社会生活上のバッファゾーンの一つとして精神的な安心感をもたらすものでもあると思うんですよ。生活してみた感想としては。

作文の良し悪しで上手く言え、というわけではないですが、この社会は、個人が弱い状況に置かれた際にそのまま見捨てたりする社会ではありません、という有形無形の安心感というのは意外と馬鹿にならないとも思う。特に不況に向かうような時には・・・。実効的にお金をばらまかれるよりも。

あと、多分、これってインタゲするなら当然付けておくべきオプションだったのかもしれない。だって、購買力の小さい人を無条件にさらに苦境に追い込む制度を社会が公然と取る、というのには、当然に抵抗感を持つ人がいても不思議はないでしょうと思うから(歴史的なインタゲ導入の際の政策論争の履歴とかを調べてみたらわかるでしょうが、残念がら今の私にはわかりません)。


聞くところによると、日本では将来は消費税を上げるがその際には食料は非課税にする、とか言われているらしいじゃないの。であれば、その食料等非課税部分は前倒ししてもいいんじゃないですかね。少なくとも、一時的なばら撒きより良くないですかね、など思う。税制を有効に機能させるための一つ手前の、金融政策を含む経済政策全般をより施行しやすくするために。

 先週のサルコジ


15日の金融サミットでは、さすがにドル基軸通貨問題を持ち出すほどにはお調子ものではなかったサルちゃんでしたが(だから直前にいろいろ言ったんだよね、きっと)、ドルよりも、ミサイルについての発言がなんだかよくわからかった。


まずEUとロシアの関係復調の動きがあって、これはこれでNATOもそっちに動いていたから別に不思議はない。
EU露首脳会議:「新欧州安保」協議へ 関係修復を強調
http://mainichi.jp/select/world/news/20081115ddm007030139000c.html


でもって、グルジアウクライナの加盟問題も、将来は入ってもらおうと思ってるんだよ、でもね、今はその時期じゃないと思うの(メルケルサルコジより)というお便りがまた出てました、という基本的に今年の4月と変わらない状態のまま12月のNATO会議を迎えるであろう。結局8月のグルジア紛争があっても変化しなかった。


8月が顕著であったように、この問題は米+英+東欧とスウェーデン、というのが推進派で、独仏伊+ベネルクスのまったくの西欧グループが慎重派。で、この中で、当然に一方の組の盟主は米だが、米は今ここに大きくかかずらうことはできない。こういう場合の常として英が動く。

8月はThe Economistを含む、ガーディアンを除く英メディアが団結して、ほとんど知性をかなぐり捨ててロシア叩きを担っていた。米にしてみれば、グルジアというより米のユーラシア戦略まで話さないとならないかもしれないこのテーマは大統領選挙の中で咀嚼できないということだったのと思うんだが、とりあえずポーランドチェコへのインターセプター配置をドラマチックに決めてみたものの(実際にはチェコは事件に先行していたのだが)、FOXはロシアの恐怖を壮大に騒いではみたものの、なんか尻切れトンボにも見えた。


しかし夏以降は金融に忙しいからなのか、どこからも特に目立った動きは見えなかった。当事者のウクライナ金融危機が最も目立ったかもしれないが。


全体として、何もかもなんだかしぶしぶで結局8月前に戻っちゃったみたいな情勢の中で、

Sarkozy: US missile shield won't help security
http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5ipnEHNnhSVLPIewLKLQg4S7LskGgD94ESHGG0


サルコジ氏、米のミサイルシールドは、欧州の安全保障のためにならないからさ、と言い出した。


報道を時系列に見る限りでは、NATO関係者はこの2日前ぐらいに、以前からの「公式文言」、つまり、米のミサイルシールドは欧州の安全保障にとって大事です、このシールドはロシア向けではありませんイラン他のならず者から欧州を守るためです、というのを繰り返していた。

だから、サルコジ氏の発言に、ポーランドチェコNATOは、え?みたいで(そらそうだろう)、それぞれの立場は変わってないですとわざわざ声明を出す始末。


NATO says still backs plan for U.S. missile shield
http://www.reuters.com/article/vcCandidateFeed2/idUSLH643022



なんなんでしょう?
意図がわからない。ついでに、ブッシュをおちょくってもいたと思う。
フランス国内向けに強く見せておきたいとかいうふざけた動機なんだろうか?


でなければ、オバマというより民主党はそもそもMD懐疑派もいるので、このプランそのものをひっくり返す機運がどこかにあるとか? 


一方で、グルジアウクライナの加盟問題の方は、なんとなくイギリスが折れているんじゃないのかという気はする。そもそも関係修復の方向で決着してること自体、8月前から見れば折れてるといっていいだろうし・・・。
今週のThe Economistが、ウクライナ、軍事改革するお金もないしね、ごしょごしょと、現状でのNATO加盟問題は駄目だろうと示唆している。
http://www.economist.com/world/europe/displaystory.cfm?story_id=12609773


とはいえ、結びは、こういう事態というのはつまり、EUが自分でロシアから離れていようとしてないのに、なんでアメリカがそんなことしてやらないとなんないのよねってことだよね、など書く。一見ご無理ごもっともだが、従来、マケインまがいにこの2国を加盟させるべきと言っていた雑誌だったわけで、そこからすれば、このプランはダメポをあっさりお知らせしているということか。

なんつーか、英にとってのグルジアウクライナって、こんな感じ、軽いわなぁ、ですね。


もっと大きく考えれば、対ロシアはこのラウンドはもうお仕舞い。石油が20ドルになったら敵じゃねーぜ、ガハハ、ということかもしれないなんても思うが、そんな短期的な話のわけもないよね、やっぱり。


なんなんでしょう、この動き。
MDを欧州大陸に設置してしまうと、恒常的な対立軸を文字通り具体化してしまうので、実はやめたい西欧勢ということだろうか?なんても思う。しかしそうならそれは、米の対ロシア戦略を見直せよという意味にもなってくるんじゃまいか。どうなんでしょう。来年になればわかるんだろうけど、オバマ政権って、むしろ共和党よりも執念の対ロシア強硬派も背後にいるわけで、そうそう簡単にいくとは思えない。


しかしハイパーアクティブな男だ、サルコジ氏。