グレート・ウォー観戦雑記?

[↑。グレート・ウォーじゃ大戦じゃんw。グレート・ウォー→グレート・ゲームです。間違えました。お詫びして、しかし時間が経っているのでタイトルこのままにします。恥ずかしー。]


ロシア・グルジア紛争のニュースの配信量の多さというのは、すごいもんだな、と改めて思う今日この頃。ロシアに対するアメリカの反応は、と一応期待されてている節もあるけど、基本的にこれはやっぱり、グレートゲーム観戦と思ってみているといいんだろうなぁなど思う。道徳的に退廃してるよな、とは一応思うものの。

wiki Great Game

ロシアとアメリカと考えると、冷戦再び?とかになって国連でのつばぜり合いがハイライトされ、ここまでのアメリカ軍のグルジアへの肩入れ等々が取りざたされる。しかしこれって徹底的に、なんか実利が見えない。


一方、イギリス系の新聞は、ロシアの侵攻とBP(英国石油とはもう呼ばないの?)のパイプラインの動向を普通に一緒に重ね合わせて報道している。パイプライン狙ってるな、と。


とはいえ、アゼルバイジャンからトルコに抜ける問題となっているパイプラインは、ロシアは攻撃してると言っているらしいんだが、BP側は破損を確認していない、ロシアは脅かしてるだけだ、と言っている模様。現在このパイプラインが使用できていないのはロシアの動きの直前に起こった「事故」から復旧していないから。この事故はクルド系の動きの結果だという説もあるらしいが、確定情報はよくわからない。*1)


笑いことじゃないけど、でも、面白く見れば、少なからぬイギリス人にとって敵がロシアというのは心底楽しいんじゃないかと思う。どっちも、自分の利益のために軍事力行使というオプションを、どこかで、かなり本気に、当然じゃん?と思ってるから(笑)。ただ、やり方が違っていて、そうなるには国際的な合意あってのことです、という建前を守る(時ばかりなのかどうかはわからんが)イギリスに対して、剥き出しの熊、ロシアがいる。
(と一般に思われているが、でも今回に限らず結構ロシアって戦争がらみの官僚は優秀ではなかろうか? いちいち反論できるようにロジックを揃えてきてはいるように見えるわけだが)


一方で、それはそうとして、その熊との位置があまりにも近いドイツとかになるとそういう行動原理はないか、あるいは取れないのでもっちゃりしちゃう。


一般にそうなる理由は、欧州のエネルギーの25%がロシア依存だからロシアを刺激したくない、というのが熊を恐れる最大の理由とされているけど、この度合いは各国のエネルギー事情によっても違うだろうし、産業構造によっても違うだろう。


例えば、今年2008年前半のドイツの輸出の50%以上がロシア向けだそうで、こうなると、仮にエネルギー問題がなくてもその市場を失いたくはないし、その市場にあんまり大きな混乱が起こってもやだし、デフォルトなんかされてももっと困る(まぁ今はないだろうが)。


さっき読んだBusinessWeekの記事によれば、
Europe Grapples with Russia-Georgia Woes


ドイツは液化天然ガスを入れるための港がないのだそうで、今のパイプライン頼みでのエネルギー供給が駄目ならそれも考えに入れてくるんじゃないのか、などと書いているが、ドイツの国際安全保障関係団体の偉い人は、

"Russia is an immediate neighbor. You can't wish it doesn't exist,"

ロシアはすぐそこにる隣人で、いなくなれと希望してもできなんだよ、と言っているそうだ。


さらにこの人は、
「ヨーロッパ人たちがこの国(ロシア)と関係しなくてすむようにしたいと言い出すとは思わないけど、ロシアが西欧の国のようになっていくと信頼しすぎていたと考え出すとは思う」とも言っている。


このどっちつかずの感じが、地続き(物理的)で歴史続き(頭の中)だという意味なんだろうなと思うし、製造業種を持っている国だからこそ、近くて発展性のある市場を手放せるか、という意味でもあるんだろうと思う。
(そして、グレートゲームに入れないし、入ったら怒るくせに、もうその手には乗らないよ、入りたくもないからさ、俺、というポジションでもあるんだと思う。)


比較して、イギリスの場合、殆どの場合、売りにいくのはモノじゃなくて金融、BPのようなメジャーはロシアは敢然たる敵だ、という点で、いかようにも熊を熊扱いしてOKとなる、というところか。(気分的にグレートゲーム進行中というフレームで見られる)


そういえば、天然ガスといえば、カナダは天然ガス持ちなんだけど、将来的にこれを北極海経由で欧州に出す、とかないのかな、など夢想する。具体的な話は見たことないんだけど、ひょっとして北極回りが開拓できたら、できない話ではないんだよな、とは思う。大英帝国関係諸国(今日的にはコモンウェルスだが)は資源持ちが多いので、短期的にどうあれ、基本的に強気になれるというのはあるんでしょう。カナダだけじゃなくて、オーストラリアの鉱山関係の独占モードは凄すぎる。


あ、アメリカ。
話がばらばらだが、先月来、ドリル・ドリル・ドリル(掘れ、掘れ、掘れ)と自国領土内の沿岸部の石油採掘プランの凍結を解除すべきだの声が大きくなり、そうなりつつあるわけだけど、これってつまり、原油の価格が下がる→インフレ懸念交替後退→景気対策できるというルートだけじゃなくて、原油価格下がる→ロシア収益減、を支援する話でもあったわけね、など思った。ま、マーケット関係者は当然にそれを読んでたってことですかねぇ、と。

というか、そういえば、オフショアのドリルが急浮上した時にテレビに出ていた上院議員が、原油をできるだけ自前で供給するというのは、短期的にはインフレの問題もあるし、これはエネルギー安全保障の問題でもあります、私たちのフレンドでないところから供給を受けるというのは、不安定なんですからねとかなんとか言っていたことを思い出す。私はあっさりイランか、と思ったけど、焦眉の急はロシアだったのね(両方かもしれないが)。

で、このへんがシグナルとなって、原油価格が崩れていったのは、マーケット関係者にとって、この政策は硬い→原油売り、と安心して思えたとかなのかな。空売り規制で株式市場に安定感を持たせて、ってのとカップルで(12日まで)。


しかし、だとすれば、グルジアのあのちょっと軽いよぉの大統領がこう出てしまうことは、みんな知ってた、少なくともかなり感づかれていたってことで、それにもかかわらず、止まらんかった、と(交渉はしてた)。


ということは、グルジアを止める気は西欧さんチームにはありません、という意味か。

ということは、理由は知らないが、この大統領を切りたい(まさかグルジアを失いたい、ではないでしょう)というコンセンサスでこうなってる、みたいな感じでOK?
いや、知らないけどw


なんにせよサーカシビリ大統領の評判悪し、ってのは去年の選挙の頃からあったけど、それ以上に今回は、かな〜り馬鹿者扱いと読める。少なくとも軽挙妄動だったわな、と突き放されているコラムが散見できる(つか、家庭に帰ったらみんなそう思ってる?)。


昨日読んだので一番面白かったのはこれ。タイムスオンラインで、貴族院議員コラムニストのWilliam Rees-Moggが、待ってましたとばかりにといったらなんだけど、ストライクで薀蓄が生きる、みたいなコラムを書いていた。
Georgia: another Sarajevo moment avoided
http://www.timesonline.co.uk/tol/comment/columnists/william_rees_mogg/article4498781.ece


第一世界大戦は列強が同盟関係を結んでいたいたために、殆ど全員自動参戦状態になってしまう仕組みにいたため、ほんの小さな事件が立派な引き金になっていた。今回のだって、1914年のサラエボとなった可能性だってある話なんだよ、と。


大げさにも思えなくもないけど、でも、NATOに迂闊に、国家主体として相応に安定していない(判断力に問題のある)国を入れたら今だってそれはあり得るわけで、冗談ではないよとは思う。


4月にドイツが主体となって、グルジアNATO加盟問題を進めたがるブッシュ大統領を押しきって、一応チャラにしていたことが今となっては正しい判断だったと言っていいんでしょう。ありがとうドイツと言うんだよ、欧州民(実際には、ドイツ、フランス、イタリア、ハンガリーベネルクス3が反対したらしいのでドイツだけではない)。
参考:
NATO Allies Oppose Bush on Georgia and Ukraine
http://www.nytimes.com/2008/04/03/world/europe/03nato.html


*1)
パイプラインは爆撃を受けたと主張しているのはグルジア政府だけで、ロシア側もBP側もこれを否定しているらしい。ただしパイプラインは12日現在、BPが用心のために停止したと発表している。

参考
BP places Georgia operations on hold

観戦雑記サイドライン(2)

 グルジア政府は11日、ロシア軍は南オセチア州を制圧した後、停戦要求や米国の外交的警告を無視し、攻撃を強化していると発表した。これに関連し、クシュネル外相は前述のラジオ・インタビューで、仲介役としての欧州の役割が鍵となると述べ、ロシアとグルジアの狭間においての米国は「ある意味、衝突の一部だ」と語った。(c)AFP

http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2504801/3207655


EUが中心になって仲介していくのがベストだと私も思うなぁ。
アメリカが絡むとこれは危険度が高まる。あとは、ウクライナが火中の栗を拾いに行かないように注意か。多分、欧州勢に、殿中です、ここは自重をと袴の裾をひっぱられていると思う。挑発があるとしたら西隣か。西隣と同じスタンスでロシア非難に混ざらないことが、ここはドイツの線に従うのが吉と見る。セバストーポリに目を移したらプーチンの罠にぃ、ではあるまいか。