終わらないババ抜きのための合理性獲得期

滅びの道をまっしぐらといった観のある北朝鮮で、私たちにとってはそれはもうそうとしか読めない話ではあるわけだが、世界にはそうは見えない人々が結構な数存在する。


代表者としてはイランの大統領だろうか。アメリカが圧力をかけた結果として北朝鮮は核開発をしたんだ、俺たちもウラン濃縮を止めないぞと律儀に語っているそうだ。


Iran Blames U.S. for Alleged North Korean Nuke Test
Monday, October 09, 2006
http://www.foxnews.com/story/0,2933,218959,00.html


こういう見解は、世界中のいわゆる代表者の見解としては出てこないだろうが(わかんないけど)、英語メディアのニュース記事の下によくあるコメント欄なんかを見ればわかる通り、北朝鮮にも核開発の権利はあるに決まってる、認めないのは欧米の偽善だ、という声がずっとあり、今日にいたってもそれは変わることなく、このニュースに腹を立てるなら、世界中のすべての核兵器を無くすことを考えるべきだ、USこそ脅威だ等々、イランの大統領が聞いたら泣いて喜ぶようなことが語られている。核の問題というのはどこでもとりあわけコメント数が多いのを特徴としていると思う。核の問題は安全保障の問題なのだが、差別的な問題として捉えやすいからある意味誰でもなんか言えちゃうテーマだからなんだろうと思う。


これは日本でもそうだったし、それはそれで無意味というわけでもないが、現状こうした声は日本ではほぼ死滅した。なぜならそういう白昼夢はどうぞ実際の危機のないところでやってください、私たちは今可能性の高まった危機と向き合っているんですから、だからだ。なのでなかなか耳に入って来ないだろうが、アメリカもヨーロッパも現実にこれに向き合っていると言える。(ヨーロッパ人はしかし、自分たちも特権クラブなのに一緒に反米しちゃう)


(白昼夢というのは、こうしたアイデアは単なる象徴的意見以上ではないのにそれを本気で現実に適用しようとするからだ。例えば、すべての核兵器を同時に全部なくすためにも時間がかかり、その間にブリーチする人がいないとも限らず、さらには頭の中に製造情報がある限り全滅と言うことはあり得ないんだ、等々冷静に考えればそういうことだから。でもってこれらのことは90年代まで30年ぐらい続いた反核運動のある種の到達点だったんだろうなと思う。現実的にはそれは多分できないかもしれないのだ、しかし世界はそれでも回る、だったら問題はどうやって安全保障を構築するかなのだなという考えが推移した結果として、反核に真剣にかかわっていた人たちは、そうした団体から抜けて優秀な人などは安全保障関係のNGOみたいなところに移動してたりするのかなと思う。で、残ったのは、実は感情的で個人の倫理追求型の人々だった、みたいな。。。。。

あと、残っただけじゃなくて、化粧品の使い方なんて誰でももう知っているだろうにと年長者は思うが、毎年春になったら基礎説明が出てくるのは毎年新しい若い子が出て来るからだ、というのと同じように、昨日初めて核と不平等というテーマに接する人々は毎年新規参入する。)


だからというわけでもないだろうが、アメリカが直接に今般の件で、旗印になって動くということはないと思う(どうあれアメリカが動くとアメリカ主導と人々が言うというのは別として)。世界の警察か、ケッ、といったリアクションを引き起こしても遂行するだけの価値は、相手がソ連だったらともかく、北朝鮮にはない。弱いものいじめにしか見えない。


問題のサイトからアメリカは遠い。国連というのはお墨付き機関だが実行フォースがあるわけではない。そういうわけで、現実には、その地域のリーダーが弱いものを制御していくことには批判はないだろうという、結局のところバランス・オブ・パワーというデフォルトがただ顔を出す。
(結局のところ、どの国にも平等にうんうんと言っている人々というのは、どの国も平等に持つ権利があるなら、どの国も平等に安全保障に対して面倒でも責任を持つ、という後半の部分をあっさり忘れるから言えるんだろうとただそう思う。責任を持つ側は常に自分の得になるようになんかできるわけもない、というのは班長になってみなければその役割が分からない、ということかもしれない。)


さてそこでこの件に関して東アジアのリーダーは誰ですか。それはチャイナですと答えるべきだと私は思う。なぜなら、ここが拒否権付きで、事実上同語反復だが、核持ちだから。核持ちであるからにはここが代表して地域を治める義務がある。核持ちは地域内の弱いものをいじめる道具として核を持っているんじゃないんだよ。


それに対して日本は自衛権以上のものを保持しないと定めています。地域紛争のために、積極的に軍事力を展開することは、日本の現在はそうさせていただいてもいいのではないかという考えもありますが、世界的に認められては来ませんでした。それは欧米の皆様、およびとりわけチャイナ、コリアの一般民衆の方々よくご存知のことと思います。ええ、そうなんです。ですので、ここはチャイナさま頑張ってくださいアメリカともども側面から支援します、という形か。


日本にとって現在必要なことは、この件をはっきりさせておくことかなと思ってみたりもする。チャイナだからね、と。それは別に歴史的な事情からというのだけでもなく、広く世界中で言われているように北朝鮮とはお前の繰り人形だろうが、というのだけでもなく、世界的に認知された安全保障の枠組みとしてそうなのです、ということだ。
もちろんそれに対して一番懐疑的なのは日本だが(笑)、でも、建前はこれで行くべきだろう。先日の会談とはそういうことなんじゃないですかね。で、もちろんどっちがどれだけ云々の算盤問題があるんだから、話し合う必要は常にある。これからもっともっと密接にある。


チャイナ、コリアの一般民衆の皆様が、世界中の掲示板で何事によらず日本がinvadeする、するするすると騒いで久しい(時制の区別なく書いてると言える。ま、妄想的なものとはそういうものだが)。確かに日本にとってはもうほとんど風評被害で訴えるぞ、という場面もしばしばなんだが現実には、極めて現実的な他の国々の人々はこれを殆ど聞いていない、信じていない、少なくともそれは過去の話だとみなしている。が、現実に、現実のチャイニーズその他がこのようにして日本の軍事介入を嫌悪しているのだ、という事実はある。広がっている。頼みもしないのに広報してくれてる。


この状況は、自らの広報部隊を使って、責任は俺にある、俺がやるしかないんだと言わせているような状況だ。もしこれがなければ、普通に考えれば、アメリカがそんなところまで出て行くことはない、危険なのは日本なんだし、そこは金持ちなんだし、自分でやらせればいいじゃんか、分担しろ、となる可能性は結構あるんじゃないかと思う。


こういうことを書くと、日本人の中には、そんなふがいない日本にしていいのか、日本の責任はどうなるのか、とか、チャイナにリーダーを取られるというのか、カチッと来る人もいるのかなとかも思うけど、白昼夢の中の覇権争いが目的なのではなく東アジアの安定を目標とするなら、それでいいんだろうと思うし、この問題に関していえば、うかつに日本が首をあげれば、それはそれで格好の非難の的になることは十分に考えられ、かえって日本にとって事態を悪化させる可能性だってなくはないんだから、現状を利用して対策を立てるのは結構なことだと思う。


悪化させる可能性とは、たとえば、日本が主体的に取り組んで朝鮮半島に動乱があれば、あんたも復興に義務がある、という論にすっぽり入ることになるというがまずあるだろう。私たちは国際社会の一員として懸念している、というスタンスを堅持することがまず大事。一義的と二義的を混ぜないこと。さらに相手が相手なので思う壷に入るのはなんとしても避けるべきだ。他とは事情が違う。しかも壷売りは思わぬところからもひょこひょこ訪問するから困る。


昨日あたり、CNNとかが日本の核武装についてどうのこうのと騒いでいたという話だったが、日本の当局者はその言につられていなかったようでとても安心した。

(手一杯のアメリカが日本にも応分の武装をしてほしがっている、というのは最もな理由がある。自分の近海で起こっていることにもっと責任をというのも本当だ。が、アメリカは二枚だという点はやっぱりネックだ。是々非々に小出しに実質的に同盟国を裏切らない、裏切らせない対策を採るのが現状でできうる最善じゃないかと思う。)


が、そうはいっても、実際には次にはそのチャイナそれ自身の問題があるんだから、仕方なしなし日本にとっての軍備の問題を明文化させる必要はあるし装備を考え直す必要もあるだろう。つか、いろんなシナリオを作っておく必要はとてもあるだろう。どういう理屈であれ、国際社会の一員として応分の責務を負うという枠内で自国の安全保障を考えるという大枠を外れないようにしていかなくちゃだ。国内外の意見が統一していないうちに、あるいは適度な枠組みができないうちに、突発的事象によって全体が引きづられることだけはなんとしても避ける。これこそ大日本帝国崩壊への道だったんだから。


いずれにしても、なんかこう、終わらないババ抜きみたいだ。

最も望ましいのはクーデター等による路線変更でしょうから、おそらくは反体制派への仕込みなども入念に行ってはいるのでしょうけれど、中国から仕掛けた場合には、失敗すればこれ以上なく北朝鮮を硬化させることは必定ですし、すべての仕込みも無に帰してしまいますから、なかなか踏み切れもしないでしょう。アメリカが黙認するとの恩を売るなら、反体制派に蜂起させた上で軍事介入、というオプションもあり得るのでしょうけれど、その蓋然性はいかばかりか・・・。

http://bewaad.com/20061010.html


と、Bewaadさんがお書きになっていらした。
タイミングの問題もあるでしょうし、なんつーかこの、これが南に理解できるのか、ってのがこのなんつーか、問題だと思うんですよね。


そのためにこそsoberなパンさんなんだろうけど、昨日のノ大統領を見ると「・・・」になっちゃう。
昨日から、結構多くの記事で、別に彼の言及を取り上げるわけでなくてもこの大統領の顔写真が出ていたような気がする。開けるたびいる。これは、南は困惑しています、かわいそうですね、という話じゃなくて、焦点はここだ、いいかお前だ、と周知徹底させるための国際的圧力なんじゃまいかとさえ思った。意外とそうかも。

 トラ放すぞ


日本人の私が考えた筋道とはまったく関係ないわけだが、Telegraphが思い切ったタイトルをつけていた。


China must rein in North Korea
http://www.telegraph.co.uk/opinion/main.jhtml?xml=
/opinion/2006/10/10/dl1001.xml&sSheet=/opinion/2006/10/10/ixopinion.html


中国は北朝鮮を抑制する必要がある


と書けばおとなしいが、rein って、手綱を握ってなんかする時に使う動詞だから、やっぱこう語感としては、お前が綱付けんでどーするよ、という感じか。


なにかこう、チャイナがからむと手荒な気分になるのかもしれない・・・なにせ、北朝鮮との国境付近にトラを620頭を放すことにしたという。日本人には絶対マネのできないことがいっぱい。いいわ、こーいうの。この味を今後も是非残してほしい。眠れないぐらいに笑った。

隊長ありがと。
http://column.chbox.jp/home/kiri/archives/blog/main/2006/10/10_175502.html