米紙NYタイムズ報道に外務省「抗議」


昨日久しぶりにニューヨークタイムスの紙版を読んで、かっちょいい新聞なんだよなぁと思っていたところではあったのだが、やっぱりこう、日本ネタに関する著しい劣化というのは、どう紙面の他の部分が良かろうとも、どうしようもない。(ちなみにトロントでも紙版買えます。)


自民党「支配」中朝と同一視 米紙NYタイムズ報道 外務省、不公正と“抗議”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050923-00000004-san-pol

まず「七日の記事は自民党の統治の役割を不公正にも中国や北朝鮮の一党支配にたとえている」と述べている。
 同記事は日本国民が今回の選挙でも自民党を選ぼうとするのは民主主義の基盤が弱いからだという趣旨で、自民党の長期政権保持を中国や北朝鮮共産主義政権の支配にたとえ、韓国や台湾の方が市民社会や自由なマスコミが健在で民主主義がより進んでいる、と述べている。


ついに、外務省が抗議していたのだそうだ。私が2週間ぐらい前に指摘したあの記事。
http://d.hatena.ne.jp/Soreda/20050911


いくらなんでも、選挙に関してチャイナとか北朝鮮とかと一緒にされる覚えはないわけで、この行動は正統だと思う。どれだけ言っても、自由に選挙運動してガバナンスを決する仕組みがあるのとないのをごっちゃにしたことは彼らの(特定東京特派員の、というべきだろうが)誤りだろう。

どう考えてもそりゃそうだろうと思う。
そういえば、外務省、地味ながらも、この夏には、例の日本海問題をきれいにまじめに調べてアップしていたけど、やるべきことの総体の基礎工事みたいなのをやらせたらこんなにしっかりした団体はないなど思う。日本のエリートさんってこういう感じで私は基本的には好感を持つ部分もある。


ただ、NYTに出ようがでまいがあまり心配していないのは、結局のところ、そんなこと、この対比が無理ありすぎなことはは普通のアメリカ人の、決して少なくない人には知れれているから。いくらなんでも。殊に、第一選挙が注目されていたんだから(笑)。で、流れ的には、もしこういう特定特派員のような動向による無理が広まると(いくらなんでもないと思うが)、ま、NYTはコミュニストにフレンドリーだからさ、ぐらいの嘲笑で終わってしまいそれが持続的に広がるというだけだろうと思う。


それよりも、外務省が抗議をして、それが記事になるということの本当の狙いは日本の新聞およびある種のマスコミなのじゃないのか。いままでの、出来レースというのか、外国ではこう報じられていいます→これじゃ駄目だ、こっちにしろ、という、権威に訴える系のアピール(falseなわけだが)のサイクルを切るという意味。

★参考資料

Nationalism and democracy(北野公使の論文)
http://www.washingtontimes.com/op-ed/20050922-094104-6430r.htm

*デモクラシーがナショナリズムをマネージしていくんだというのはデモクラシー擁護諸国では誰も反論できない。だから、エッセイというより、一般的で、つまり、誰にも反論できないという意味で論文のバックグラウンドみたいな文だった。


これはつまり関連事項として(?)、なのだろう。
自民党「支配」中朝と同一視 米紙NYタイムズ報道 外務省、不公正と“抗議”
http://news.goo.ne.jp/news/sankei/seiji/20050923/m20050923004.html


多分この動きも関係ありか。
中国の対日歴史観に違和感 米国務副長官が見解
http://www.sankei.co.jp/news/050923/kok034.htm

 ヴォネガットがいるアメリカ


カート・ヴォネガットの最新エッセイ集が米国で発売
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2005/09/post_e21f.html


ヴォネガットのエッセイが出るということをきっかけに、氏がこの間Daily Showに出ていた。あまりにも面白くて書こうと思っていたのだが時期を逸してしまった。これがこの、暗いニュースリンクさんとかが訴えたいトーンとは全然違っているもので、どう書いたらいいんだろうかなと思案していて忘れたというのもある。

ひとことで言って、氏は無論ブッシュ政権を非難している側ではあるのだが、それはそうとして、リベラルもいい加減にしろよ、というものだった。Liebaral Crap(リベラル「くそ」とでもいうのか。あるいはリベラル、意味ねーぜ、おい、とか)というリベラルに捧げる詩まで作ってきた。


いやしかし思い出しても、なんといっていいかわからないヴォネガットだった。いや、ものすごくいい、むしろほのぼのと、いやあははと笑う瞬間だったと私は思うのだが、文字面を追う人であれば、あるいは、語られた事の意味をもしとても狭く取るのなら、いや、どう広くとってもかもしれない、とにかく、普通に考えて、いや取りようによって、ええ、なんでもいいやとにかく不穏当な発言もした。


この番組のホストは、ジョン・スチュワート。とてもリベラルな白人。ハンサム。この組み合わせでそのうえとても良い人、心が優しいわというケースもあるのだが、とんがってるという組み合わせもある。後者の場合いやになるほどリベラルというそれになる。スチュワートもその系統ではある。でも、憎いキャラとは一般的には言われていない(と思う)のは、誠実は誠実だからではなかろうかとは私の観察。

つまり、あくまで私の言い方だが、この人はリベラルであるよりありようがないリベラルなのだろうと思う。地球上のどこでもないアメリカ産リベラル。空気を吸うようにアメリカ産リベラルなわけだから別に厭味になりようもない、というわけで、わざとらしかったり、自分を守ろうとしてリベラルになっているとかとかそういうものでもないからこれでいいんだな、この人、なのだろうと思う。個人的にはストライクでかなり好きかも。いや、もちろん、何事によらず受け手の許容範囲という問題もあるわけで、私はこの人は全然OKなのだが、人によっては、好きになれない人もいる。なんだこの、みたいな感じで、つまり鼻につくといった感じで語る人もいる。


と、長々とくだんないことを書いているが、いやそうじゃなくて、ヴォネガット。記憶でだらだら書くが5分間ぐらいのざらざらっとした会話はこんな。


この日のテーマは進化論について(もちろんコメディ番組なので鋭いがおふざけ)だったので、ボネガットもそこからはじまる。何か聖なる力みたいなのが働いてコントロールしてるとしか思えないのよね云々と緩い出だし(しかし話はすでにはじまっていたのだが)。そこで、スチュワートが、あなたはいつも人間を讃え、でもがっかりもしてますね、とふる。すると、そうなんだよ、人間は酷い動物だよ、WWI、WWII、ホロコースト、長崎って、ろくなことしてない、地球の免疫系がはじき出してるんんだよ、そうすべきだし、と笑いになって、ハリケーンとブッシュにちょっと話が及んでさらに笑い、あれは酷いとブッシュに話が流れた。


ヴォネガットは語り出す。でもね、彼は私たちの政府の中で最もダメダメってわけじゃないんだよ、最もダメダメなのは国務長官(ここで弌法He is so dumbとまで言う。あはは。彼は2億7千万の国民とムスリム、それから石油を、20万の兵隊でなんとかできると考えた。兵隊たちはアラビア語で「こんにちは」ってなんていうのもわからず行ってる兵隊なんだよ。でもってそれで私らはデモクラシーをもたらしてることになってる(スチュワート、守ってるんですよ、と冗談をかます)で、そのデモクラシー、私は私たちが経験から学んだことをイラクの佑燭舛砲△欧燭い隼廚Α100年たったら奴隷もあきらめないとなんないし、150年たったら女性に選挙権もやらないとならなくて、デモクラシーの初期にはけっこうなジェノサイドやらエスニッククレンジングも全然OK(そういうこった、といった終わり方)。


スローテンポで、そして静かなのに圧倒的なものがある彼に、誰もとっさにどうしていいかわからない。

誰も、ってまず、テレビの前の私だが、疑いもなくスチュワートもそうなわけで、あの、ボネガットさん、申し上げてよろしければ私にとってはあなたが逝っちゃったみたいに見えるのがとても悲しいです、と言う。


ここからスチュワートはヴォネガットの本でヒューマニティをどうしたこうしたと言い出すのだが、ヴォネガットは聞いてない。要するに自分の方向性を持ってここに来ていた模様で、2、3語交わして、この番組時間がないでしょ、だから紙を持ってきたといって広げ出す。そもそも、冒頭で、この時を待ってました、といったのはこういうことだったのか。


書いてあったのは、

LIBERAL CRAP I NEVER WANT TO HEAR AGAIN

Give us this day our daily bread. Oh sure.
Forgive us our trespasses as we forgive those wh trespass against us.
Nobody better trespass against me. I'll tell you that.
Blessed are the meek.
Blessed are the merciful. You mean we can't use torture?
Blessed are the peacemakers. Jane Fonda?
Love your enemies - Arabs?
Ye cannot serve God and Mammon. The hell I can't! Look at the Reverand Pat Robertson. And He is as happy as a pig in s**t.

なんつうっていいのかわからんけど、リベラル「だめだめ」、りべらる「くそ」でしょうか。あるいは、リベラル役立たずとか、無意味とか、ばかたれ等など。で、俺がもう聞きたくないリベラル「くそ」、という詩(?)でしょうか。聖書をかましているから誰でもざっと聞いて構成が頭に浮かぶいう代物だったのも作戦か。


スチュワートは、その文章をこの番組のサイに貼ると約束したので貼ってあったのだが(先週みてコピーをしておいた、私)、今みたらもうないみたいだ。とりあえずサイトはここ。
http://www.comedycentral.com/shows/the_daily_show/index.jhtml



こういう特別な人、得難い人の発言を解説するぐらいダサイものはないのだが、人間ってほらダメダメだから(だから変化する)、みたいなことを、言いたいのではなくて示唆してくれたってことなのだろうなと思う。

リベラル、もういい加減にして、なんであんただけなんでも正しいのぉおおお、みたいな草の根的人々(右でも左でも真ん中でも)には好評であっただろうが、リベラルな人々はコメントしない、みたいな感じか(ネット上をざっと見る限り)。でもそれでも、ヴォネガット氏、エスニッククレンジング容認か、私は許せない、みたいに部分の言葉に発狂している人もいないようにみえるのは幸いかな、という感じか。


ヴォネガットのいるアメリカっていい。


ヴォネガットの公式サイト
http://www.vonnegut.com/news.asp


この方(誰だか知りませんが)がことの成り行きを書いているのでご参考までに。
http://rubyrocks.blogster.com/blogApp/?u=rubyrocks&


この方は、一部分ラフに英語を書き起こしている。14日付けのところ。
http://www.angryflower.com/


こっちの人は、Daily Showからのビデオをダウンロードして画質落としてアップしてる。これは便利。
http://www.crooksandliars.com/2005/09/14.html