女衒の話


従軍慰安婦問題:
上海・慰安所売春、勧誘手口全容を初公表−−戸塚悦朗龍谷大教授

中国・上海の旧日本海軍向け「慰安所」に、日本人女性を「仕事は女中」などと偽って送り込んだ業者らを有罪とした1936年2月の長崎地裁判決の全文を、戸塚悦朗龍谷大教授(国際人権法)が近く出版される学術誌「龍谷法学」で公表する。


で、その中身が、

地裁判決によると、30年から上海で海軍軍人を客に売春業を営んだ業者らは、32年1月の上海事変で駐屯軍人が増加したのに目を付け「海軍指定慰安所」を計画。長崎市などに在住の女性や娘を持つ親に「兵隊相手の食堂」「仕出屋の女中奉公」などと勧誘し、同年3〜5月、女性15人を長崎港から上海行き船に乗せ慰安所で売春をさせた。昭和恐慌下で女性らは「百五十円位(現在の約30万円)を前借するも、二、三カ月にて完済し得て尚毎月五十円位親許(もと)に送金し得る(原文は旧仮名遣い)」などと言われ、集められた。

とまぁ、善悪抜きに、だいたいそういうものだったんでしょうね、と思われるような話ではある。
ということは、なんか毎日新聞の見出しはちょっとへん。というより、これって今現在新聞記事になる話なのか?という気もしないでもない。そしてこれは巷間言われる「従軍慰安婦問題」というのとも違う。なぜなら、日本人の女性を日本のおやっさんだかにいさんだかが騙して連れてって売春させた、という話だからだ。ということは、当然朝鮮語環境でも同じように騙しがあったんだろうなぁと思わされるものはある。というか、前からそうだろうと言われていた通りだと言ってもいい。


そして、民間のおやっさんが騙したことを長崎地裁は駄目っすよと判断したというんだから、国家の側はちゃんと機能していたなと言える話じゃないのかと私は思う。が、

◇吉見義明・中央大教授(日本近現代史)の話

 慰安所には、特に朝鮮、台湾から仕事内容を隠し、貧しい女性を送った例が多い。今回の判決文は、慰安所制度が当初から違法行為を前提に成り立っていたことを示しており、法的責任を認めない日本政府の姿勢に一石を投じるだろう。


このコメントって何か聞き落としとかがあるんだろうか? とちょっと考えた。理解できなかったから。


で考えた。
この例題から、「慰安所制度が当初から違法行為を前提に成り立っていたことを示しており、法的責任を認めない日本政府の姿勢に一石を投じるだろう。」と帰結できるためには、隠された前提を探さないと読めない。


1) 「慰安所制度」は日本国家の方針として存在した。
2) 裁判で騙して慰安所に連れていくのは駄目だと判決されている…。
3) だから、慰安所制度は最初から違法性を前提としている。従って日本政府には責任がある、


ということなのか。


しかし、1)は証明されていると言えるのか? そしてどのように存在したのか。よしんば、管理を目的としてなにがしかの制度的なものが存在したとしたとしよう。その場合、それは「民間人」だけで無法になるより軍という国家組織が関与した方がいいという話からではないかという話も聞く。そうなら私はそれは相当程度に理由のあることだと思う。もしそうは思わないといのなら、その人は無法地帯の売春宿全盛が好ましいと語っていることになる。国家が関与して売春婦のエイズの心配をするなどという話はもってのほかだな、きっと。いやそれは戦争中であるがゆえに、なんていうのなら、戦争、内戦中である限りエイズの心配をしてやることは売春を奨励することになるからそんなことはするなということになるのだな。そういうのを人道というのならそれでもよい。私は別の道を行く。


もちろんその前に、なんにせよ慰安所などというのもを作らなければいいという理屈も考えられる。が、2)があることで伺えるように、世の中に売春という職業は存在したし今も存在する。不況になればさらにある。そして就業機会が減れば参加者が増えるようになるのは、上の記事内の日本の状況でもそうだし、昨日のドイツの失業者に風俗産業をすすめる話でもみたとおりだし、東欧、ロシアが開いた時からこっちの女性たちの話も同じだろう。やまのように世間知らずといえば世間知らずの、新世界に行ったらいいことがあるに違いないと思いなした女性たちが売られてきたというか騙されてきたというか、ちょうどその長崎地裁の判決が当然でるような話が、治安を維持する単位がぶち壊れた拍子に出てきた。そうしてそれは今でもそうだ。多文化都市トロントには世界中の売春婦がいるといわれているが、それは別にトロント生まれの希望者ばかりではないだろう。半分騙され、半分納得づくでやってきた人が多いだろうと考えて悪い理屈もなさそうだ。ロシア人の「女衒」のおじさんなんか、やってみろと言うならやってやるぜ、半日よこせば女の1ダースぐらいわけないさ、と平気で言っていたぞ(新聞の記事で読んだのだが)。


日本国内の心配もそうだが、かまびすしく慰安婦問題を語ることで知られる朝鮮半島に一言言及するのなら、彼の地では、あのように慰安婦問題といえば日本が悪いと言い続けて久しいのだから、女衒などという商売はきっと絶えて存在したことがないということなのだろう。そうであるのなら今現在風俗産業で働くために日本に来ている朝鮮半島の女性は全員自己の決定によって選択してやってきていると当然みなされなければならない。


話を戻して、しかしながら、1)+2)で3)を引き个垢里覆2)の意味は限定されなければならない。売春という行為に違法性があるということだ。しかしこの判決はそういうことなのだろうか? 毎日のこの記事からは何でチャージされたのかがよくわからいのだが、「騙し」が焦点なのではなかろうか? 甘言を弄して拉致をしたのは間違いだ、と。そもそも赤線合法時代長いんだし。ということは、3)を引き出すには無理がある。



とかとかいろいろ言っているけど、これは毎日のバランス記事だと思うな、私。慰安婦問題とか南京問題といえば必ずこの人というぐらいのこの教授、Yoshimiなる人からコメントを取っているというのは、本筋ではこれまでの「従軍慰安婦問題」のストーリーが壊れてしまうから、それでは具合が悪いだろうから(付き合いもあったことだし、とかそういうノリか?)、ここはこの教授に一応言わせてみたほうがいいんじゃないの、という感じ。


自爆してるやつらにつきあえない、って意味なのか朝日の暴発「朝日ベニヤ板のお城宣言」以降この2週間の毎日新聞は興味深い。綱渡りみたいなバランス取りをしている。