来たな北極

対円でのカナダドルがあれよあれよと下がって100円を切るか否かの攻防になっているようだが、今日は気温も下がった。きっとこのせいなんじゃないの(笑)。


トロントの日中の気温がマイナス10度とかいう、ああ、来たな北極(来ないが)という感じの日だった。夜間気温でも今みたらマイナス11度。昼も夜もない。で、こういう日はこの気温だけ見ていると大間違いを起こすわけで、この場合は、feels like...の後の、つまり体感を確認しないとならない。体感今はマイナス15度と表示されているが昼間はマイナス19度とかなんとかそんな温度を聞いた気がする。

私の体験からは冬装備はおおよそ4ぐらいに分けておくと便利かと思う(便利って・・・)


0前後止まり                東京標準装備
マイナス5(体感10レンジ)             ロンドン標準装備
マイナス10〜15(体感レンジマイナス20を中心に)  モスクワ標準装備
それ以上                     装備よりまずはビバーク


だいたい日本で売ってるコート類はロンドン対応仕様までではないかと思う。すてき、と思って昔買った、東京でどうするんだそんなのとさんざんけなされたコート類を、さあここならいいわと思って持ち出したが、真冬には結局駄目だったという体験もある。さらに、モスクワ生まれの人のご主人がイギリス人で、モスクワに連れてきたら寒くて何もできないと言うのよね、でもね、プロパーな衣類を調達してからは大丈夫になりましたと言っていたという話も私の分類を強化する。というか自分でもクリスマスのワルシャワに、ロンドン装備で行って凍死するんじゃないのかと真面目に不安になったことがあった。


ともかく、冬至まであと2週間もあるのにもうこんなのかと少し驚いたのだが、来週はマイナス2、3度のこの季節の標準に戻るそうだ。しかしそれもつかの間1月になったら今日の気温のようなのが日常になる。今日は、さあみなさん、本格的に準備はいいかね、という天の声だったのに違いない。天の声にお応えして私は、部屋の隅々の目張りに余念がなかった。


各部屋の条件にも個人の衣類にもよるのだろうが、私の感触ではマイナスも5度以下になってくると、普段思ってもみなかったようなところから隙間風が吹く。見た目上ではまったく問題がないのに、あれ、こんなところにギャップがあったのかぁと驚く。そしてそういう風は本当に冷たい。


で、毎年恒例でこの時期思い出すのは、昔北海道に移民していった旧藩士たちの話で読んだ寒い話。旧藩士の人たちは自分がいたところの仕様を持っていって、その通りに暮らそうとする。で、最初の冬に、親切なアイヌの人たちが、そんな家建てたらだめだ、死んじゃうぞと言っているのに、なにをそんな馬鹿なとありがたい忠告を無視して、本土式の家、つまり、床を上げた、床下ってもののある、床下ってものに風の通る家を建てたのだそう。予想通り、冬になってこれはもう大変な失敗だったことがあきらかとなり、しかし時すでに遅く最初の年には結構な数の人が亡くなったのだそうだった。

正解は、地べたにわら、みたいな体裁がいいらしかったが、やっぱりこう、そんなことできるかぁと思ったのだろうなぁというのも想像できるので、本土の人を忠告を聞かないばか者だと責めることもできない。

このディープなマイナス気温帯は大半の本土人にとっては、あんびりーばぼーつか、想像したこともなかったのだろうと思う。家は夏を旨とせよ、として建築してきてそれで悪いことなんかなかったんだから仕方がない。


が、しかし、ちょっと不思議に思うのは本州だって、仙台から北ぐらいになると相当寒いと思うのだが、それでもいわゆる本土式が流通していたのだろうと思う。武家屋敷の北バージョンとか、南バージョンとかないし。ということは、どれほど不都合でも、支配的なカルチャー、様式の方が勝って取り入れられるということなんだろうか? しかし、限度はあるんだろう。が、幸か不幸か本州エリアの大半の地域はクリティカルな様式変更を誘うまでの環境要因は存在しなかった、ということなのか。


冬になると毎度考えるがその後忘れるのでこれ以上はわからない。なんにせよ、来たな北極(来ないって)、もはや元気でいるしかない!という気候に突入したカナダです。